人工知能が人を追い越す時代、何を備える?

人工知能(AI)といっても、もはやSFの世界の話ではありません。
いま大きな書店に行くと、ビジネス書コーナーにはAI関連の本が山積みになっています。小学生が働き始めるころには今ある仕事の半分が入れ替わっているという予測が国内外で出されているばかりか、2045(平成57)年にはAIが人間の能力を追い越す「シンギュラリティー(技術的特異点)」が到来するとさえ言われています。
そんな時代に、子どもたちは何を備えればよいのでしょうか。

その時、今の子どもは働き盛り

2020(平成32)年に16歳となる人(現在の13歳=中学1年生)は、45(平成57)年には41歳になる。その間に、リニアモーターカーは完全自動運転になり(30<平成42>年ごろ)、火星への移住(40<平成52>年ごろ)も現実になっているかもしれない……。

ベネッセホールディングスとソフトバンクが共同で設立した学習支援クラウドサービスClassi(クラッシー)の加藤理啓(りけい)副社長は、11月に東京・霞が関で行われた一般社団法人デジタル教科書教材協議会(DiTT)のシンポジウムで、こう指摘しました。
41歳といえば、働き盛りです。今の子どもたちは、学校を卒業して、そんな時代の社会に出ていくことになるのです。しかも「100歳寿命時代」のなか、人生はその後も60年ほど続きます。人口減少社会にあっては、65歳を超えても働き続けることが当たり前になっていることでしょう。そんな「ポスト(次の)シンギュラリティー世代」にとって、今の大人の働き方は、必ずしも通用しません。

一方で、文部科学省「高大接続システム改革会議」の委員も務めた東北大学大学院の乾健太郎教授は、大学入学共通テストの記述式問題で、AIが自動添削・採点をすべて行うのは「無理だ」と断言しました。AIは、人間のように文章の意味を正確に理解したり、行間を読んだりすることができないからです。しかし、「補助」はできるといいます。
AI時代にも、人間にしかできない仕事は残ります。しかし、機械の手を借りればよい仕事は、どんどん省力化されることになるわけです。

新指導要領は「人間ならでは」の学びのため

ところで2020(平成32)年といえば、東京オリンピック・パラリンピックが開催される年ですが、4月には小学校の新学習指導要領が全面実施となりますし(中学校は21<平成33>年度から、高校は22<平成34>年度入学生から)、年度内の21(平成33)年1月には、大学入試センター試験に代わって共通テストが初めて実施されるという、教育界にとって画期的な年です。
既に告示された小・中学校の新指導要領でも、AIを意識した改訂が行われています。どの教科等でも三つの柱で資質・能力(<1>知識・技能<2>思考力・判断力・表現力等<3>学びに向かう力・人間性等)を育成しようとしているのも、授業にアクティブ・ラーニング(主体的・対話的で深い学び、AL)を導入しようとしているのも、すべてAIには決してまねのできない「人間ならでは」の学びのためです。さらに小学校でもプログラミング教育を必修化して、AIを使いこなせる人になれる基礎を養おうとしています。
センター試験を共通テストに代えたのも、思考力・判断力・表現力等を中心に評価するためです。知識を丸覚えして取れる点数だけなら、AIには勝てません。これからは勉強の姿勢も、大きく変える必要がありそうです。

(筆者:渡辺敦司)

※DiTTシンポジウム「AI時代の教育を考える」
http://ditt.jp/action/symposium.html

※学習指導要領改訂の中教審答申
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/__icsFiles/afieldfile/2017/01/10/1380902_0.pdf

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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