「知識」だけではもったいない! 語彙力アップの秘訣は実際に「使う」こと
若者世代がよく使う「新語」や「略語」は、同世代同士のコミュニケーションには便利ですが、一歩社会に出れば、自分の考えを相手にわかりやすく伝えるためには異なる世代にも通用する「語彙」が必要になってきます。前回は、「語彙・読解力検定」を主催する(株)ベネッセコーポレーションが、高校生~社会人約3,000人を対象として行った「第1回 現代人の語彙に関する調査」をもとに、読書の量だけでなく、その内容や幅の広さが語彙力に影響するという「インプット」に関する内容をお伝えしました。今回は、引き続き同調査より、知識として蓄えた言葉を使う頻度や相手、つまり「アウトプット」の大切さについてまとめました。調査では、回答者が対象の言葉のうち「知っている」と答えた割合をその人の語彙力としています。
高校生と親世代で「知っている言葉」にギャップ
【表1】は、高校生とその親世代とで知っている割合に差があるトップ10の言葉です。たとえば、1位の「ディスる」は高校生の88.5%が知っているのに対し、親世代が知っている割合は44.3%に留まっています。
【表1】のように、高校生が「知っている」と答えた割合が高い言葉は、ほとんどがカタカナかひらがなで表される略語、いわゆる「新語」で、SNSなどでコミュニケーションが取りやすい短い言葉を積極的に取り入れているということが読み取れます。
一方、【表2】の親世代が知っていて高校生が知らない言葉は「阿漕(あこぎ)」や、「イデオロギー」「活路」「経団連」など、熟語や社会的な時事用語が多く挙げられました。
さらに、同じ意味の言葉であっても、【表2】高校生の1位の「ディスる」と【表1】親世代の8位の「こきおろす」のように、世代間で用いる語彙の違いが明らかになりました。
異なる世代の人と接すると語彙力はより向上する傾向が
次に、身近な人との会話の頻度と語彙力の関係を見たところ、会話の頻度や相手によって語彙力が異なる傾向にあることがわかりました。
〈図3:高校生・大学生の結果〉
※ 設問文:「身近な人と話をする機会が、どのくらいありますか。あてはまるものをそれぞれ選んでください。」 選択肢:よくある/ときどきある/あまりない/まったくない/いない(「よくある」「ときどきある」のみを抽出)。
具体的には、「友だち」と話をする機会が「よくある」人と「まったくない」人との語彙力の差は3.7ポイントでした。しかし、「親」とでは11.5ポイント、「祖父母や親戚」とでは10.7ポイントと、会話の頻度に加えて年齢差がある相手との会話の機会が多いほうが語彙力が高いという傾向が見えました(図3:高校生・大学生の結果)。
さらに、「ニュースについてどのくらい周りの人と話す機会があるか」という別の質問では「よく話をする」と答えた人の語彙力は75.0%、「ほとんど話をしない」と答えた人の語彙力は57.7%と、17.3ポイントもの開きがありました(社会人を含む回答者全体の結果)。
これらのことから、読書によるインプットに加えて、多様な年齢層とのコミュニケーションにより、自分が得た知識や考えを実際に言葉にしてアウトプットする機会が多いほうが語彙力が高まる傾向がある、ということが言えそうです。
夏休みは語彙力アップのチャンス! 世代を超えた対話の機会を
様々な世代の人とコミュニケーションを取ろうとする姿勢、経験は「どのような言葉を使えば相手に伝わるか」を考えることにつながり、結果的に言葉への意識を高め、語彙力となって身についていきます。ご家庭では、お子さまは自分がよく知っている新語を、保護者のかたは普段の会話ではあまり使わない漢熟語を教え合うのもいいでしょう。親子のコミュニケーションがより豊かで楽しいものになるはずです。
夏休みは、帰省や旅行などを通じて、様々な年代や異なった背景を持つ人々と接する機会を持ちやすい時期です。保護者のかたはお子さまが様々な人とコミュニケーションを取る機会が増えるよう、力を貸してあげられるといいですね。
※ 本稿の「語彙力」とは、「第1回 現代人の語彙に関する調査」で用いている、最近の「新語」を加えた辞書語彙と新聞語彙の合計540語について回答者が「知っている」と答えた語の割合に基づいています。
※ 「第1回 現代人の語彙に関する調査」は、高校1年から60代までの社会人の約3,000人を対象に、2016年7月に行われたインターネット調査です。
出典:第1回 現代人の語彙に関する調査
http://www.goi-dokkai.jp/research/index.html
関連リンク:語彙力が高い人の特徴は読書の幅広さ
http://benesse.jp/kyouiku/201708/20170802-2.html