「デジタル教科書」はどうなる!? 次期指導要領に合わせて

各学校で学力向上対策に取り組むことに伴い、子どものかばんは、ますます重くなっています。
そんな状況を一気に解決してくれそうなのが、デジタル教科書・教材です。
文部科学省は、次期学習指導要領が全面実施となる2020(平成32)年度以降に合わせて、デジタル教科書を、紙と同じ正式な教科書として扱うことにしています。デジタル教科書は、どういうものになるのでしょうか。

基本は紙版と同じに

文部科学相の諮問機関、教科用図書検定調査審議会(教科書検定審)は先頃、「教科書の改善について」と題する報告書をまとめました。次期指導要領で各教科等にアクティブ・ラーニング(主体的・対話的で深い学び、AL)が導入されることなどに対応して、教科書の検定基準も変えようというものです。この中で、デジタル教科書についても考えを示しました。

デジタル教科書をめぐっては2016(平成28)年12月、有識者による検討会議が、(1)紙の教科書とデジタル教科書の学習内容(コンテンツ)は同一であることが必要(2)デジタル教科書については、改めて検定を経る必要はない……との考えを示しています。動画や音声など多様なコンテンツが使えるのがデジタル化の強みですが、それには検定作業が大変になるだけでなく、著作権処理などの課題も山積しているため、まずは紙の教科書をPDF化するに近いような形から始めることにしたのです。

それでも、個々の児童生徒に合わせて画面を拡大したり、文字や背景の色を変えたりすることによって、障害を抱える生徒も含めて、各段に使いやすくなることは確かです。また、電子黒板など教師用の設備と連動させることで、学習効率はぐんと上がることが期待されます。

リンク先は教科書会社の責任で

検定審の報告でも、こうした検討会議の方針を踏襲しました。デジタル教科書に盛り込まれるURLやQRコードなどは、必要かつ適切なものに限定すべきだとしたうえで、あくまで検定教科書の本文の扱いではなく、学習上の参考情報であるということを確認しています。

しかし、一般のウェブサイトにリンクを張ってしまっては、リンク切れでアクセスができなくなったり、内容が変わったりしてしまう可能性があります。そこで、リンク先を教科書発行者のサイトに限り、発行者の責任で有益なリンクを張ることを提案しました。

とりわけ英語では、すぐに音声が聞ければ便利ですし、学習上も有効であることは間違いありません。しかし、アメリカ英語かイギリス英語か、はたまたアジアなど非英語圏の人が使う英語かなど、音声を検定するのは実質的に困難です。そこで検定審は、URLやQRコードの積極的な記載を認める一方、あくまで教科書会社の責任で載せるものであり、検定ではおおむねのチェックをするにとどめることにしました。

デジタル教科書は、まだ発展途上です。授業でALを盛んにするためにも、デジタル機器の活用が有効であり、そのためにもデジタル教科書がもっと使いやすくなることが求められます。今回の提言にとどまらず、今後さらに検定制度の検討を継続することを期待したいものです。

※教科書検定審「教科書の改善について(報告)」
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/tosho/toushin/1386149.htm

※「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議 最終まとめ
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/110/houkoku/1380531.htm

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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