働くルールの教育、どの高校でも急務!

労働環境が悪化するなか、安倍内閣は「働き方改革」を掲げています。これから社会に出ていく子どもたちにとっては、労働に関する知識をもとに、今後の在り方生き方を考えて進路を選択することが不可欠なはずですが、これまでの学校教育では、正直に言ってその点が弱かったことも事実です。
大学に進学する場合でも、学業に支障をきたす「ブラックバイト」の問題が深刻化しています。今、どんな教育が求められるのでしょうか。

厚労省が冊子配布、進学校にも活用促す

厚生労働省はこのほど、労働法教育プログラム「『はたらく』へのトビラ~ワークルール 20のモデル授業案~」を作成し、全国の高校などに冊子を配布しました。同省のホームページからもダウンロードできるようにしています。

卒業後に就職する生徒が多い高校はもちろん、進学校まで、多様な学校での活用を想定して、1時間でできる20のモデル授業を提案しています。対象教科も、公民科だけでなく、地理歴史科、家庭科、総合的な学習の時間、特別活動など、さまざまな教科で活用できます。

たとえば、「ワタシがAさんを救う!」では、社会人1年目の一人暮らしで休日も働き、残業代が出ないという架空の事例をもとに、グループで話し合って、何が問題なのか、どんなルールが求められるのか、考えをまとめ、発表します。
こうして労働法制や、労働者の権利についての知識を受け身で学ぶだけでなく、法律を使って能動的・主体的に問題を解決しようとする力はもちろん、▽根拠を持って主張し他者を説得する力▽傾聴する力▽話し合い、考えを一つにまとめる力▽簡潔に他人に説明する力……といった、さまざまな学習や社会生活にも活用できる「汎用的能力」も身に付けさせることができるようにしています。

次期指導要領の課題にも

2016(平成28)年6月からの18歳選挙権施行に伴って、さまざまな契約ができる成人年齢を18歳に引き下げる民法改正も検討課題に上っています。そうでなくても高校卒業後2年すれば成人になるのですから、ほとんどの子どもが進学する高校で、主権者教育はもとより、ワークルールの教育が急務です。

2022(平成34)年度の高校入学生から全面実施される次期学習指導要領でも、公民科で現行の「現代社会」に代えて、全生徒が学ぶ共通必履修科目「公共」(2単位)が新設されることになっています。自立した主体(<1>政治的主体<2>経済的主体<3>法的主体<4>情報の発信・受信主体)となるために、話し合いなども行いながら考察を進める科目です。

社会の中で自立する力を身に付けることは、現行の指導要領の下でも必要な学習です。しかし、単に労働法制などを知識として覚えるだけでは、社会で活用できるようになるとは限りません。アクティブ・ラーニング(主体的・対話的で深い学び、AL)を通じて、知識と一緒に活用の力を高め、社会に出た時に、自分の身は自分で守れるように行動できるようにすることが、急務なのです。

そうした教育の重要性は、現に大変な思いをして働いている保護者の方々が日々実感していることではないでしょうか。高校時代に何を学んでおくべきか、改めて考えたい課題です。

※「『はたらく』へのトビラ~ワークルール 20のモデル授業案~」発表資料
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000163136.html

※「『はたらく』へのトビラ~ワークルール20のモデル授業案~」電子ファイル
http://www.check-roudou.mhlw.go.jp/tobira/index.html

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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