高校の英語、改善が急務 小学校からの積み重ねも重要

文部科学省の2016(平成28)年度「英語教育実施状況調査」の結果によると、高校生の英語力は、政府の掲げる目標を大幅に下回りました。高校の英語の授業は、原則として英語のみで行うことになっていますが、それを実施しているのも半分以下でした。
一方、2020(平成32)年度から導入される大学入試センター試験に替わる新テストでは、4技能の力を測定するために英語の試験として、GTECや英検など民間の資格・検定試験を活用することになっています。これにより、高校における英語の授業は、急速に変わっていくことになりそうです。

政府目標の実現は困難に

政府は、グローバル化に対応した人材育成のため、第2期教育振興基本計画の中で、英語力向上の目標として、高校卒業段階で「英検準2級程度以上」またはそれに相当する生徒、中3で「英検3級程度以上」またはそれに相当する生徒の割合を、いずれも2017(平成29)年度までに50%にする目標を掲げています。ところが、2016(平成28)年度の調査結果を見ると、高3で「英検準2級以上」は13.0%(前年度比1.5ポイント増)、それに相当する生徒は23.5%(同0.7ポイント増)で、合計しても36.4%(同2.1ポイント増)しかいませんでした。同様に、中3で「英検3級程度以上」またはそれに相当する者は、合計36.1%(同0.5ポイント減)でした。このままでは、政府の目標達成は困難と思われます。

高校の場合で見ると、目標の「英検準2級程度以上」をクリアした者の割合は、それに相当する者を加えて、2012(平成24)年度および13(同25)年度が31.0%、14(同26)年度が31.9%、15(同27)年度が34.3%、16(同28)年度が36.4%と推移しており、4年間で5.4ポイント上昇したにすぎません。グローバル化に対応するため英語によるコミュニケーション能力の育成が強調され、「話す・聞く・読む・書く」の4技能をバランスよく習得した「使える英語」が求められていますが、高校の英語教育はここ数年、ほとんど変わっていないと言ってもよさそうです。

試験・検定試験の活用で授業も変化へ

現行学習指導要領では、高校の英語の授業は原則として英語で行うことになっていますが、調査によると「英語による言語活動時間の割合」は、全体の「75%以上」が13.9%、「50~75%」が33.3%で、合計しても47.2%と、半分以下となっています。特に4技能のうち「話す」に大きな問題があることがうかがわれます。この背景には、大学入試の英語がいまだに「読む」「聞く」を中心としていることに原因があると見られています。

これに対して文科省は、2020(平成32)年度から導入される大学入試センター試験に替わる新テストの英語のテストで、4技能の力を判定するため民間の資格・検定試験を活用すると発表しました。新テストで資格・検定試験が活用されることにより、高校でも4技能の力をバランスよく生徒に付けさせることが必要となるため、大学入試が障害となっていた高校の英語の授業は、急速に変化していくことが予想されます。
次期学習指導要領では、小学校高学年で英語が教科化され、中学校の英語の授業も原則として英語のみで実施されることになっています。特に「話す」を中心に4技能の習得のため、小学校から高校までは発達段階に応じて英語力を積み上げていくような教育が必要になってくるでしょう。

※平成28年度「英語教育実施状況調査」の結果について
http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/gaikokugo/1384230.htm

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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