「がん教育」、全国展開へ 次期指導要領にも明記

がんは、一生のうちに日本人の2人に1人がかかり、死亡原因の第1位(約30%)を占める、身近な病気です。家族はもとより子ども自身が、がんに冒される可能性も少なくありません。
文部科学省は、新年度から「がん教育」の全国展開を目指しています。次期学習指導要領にも、がんを取り扱うことが明記されました。今、どのような教育が必要なのでしょうか。

モデル校では大きな効果

政府の「がん対策推進基本計画」(2012~16<平成24~28>年度の5年間)が策定されたことを受けて、文科省は14(同26)年度に「『がん教育』の在り方に関する検討会」を設けて、報告書をまとめるとともに、教材を開発したり、全国26地域の137校(2016<平成28>年度)でモデル事業を実施したりしてきました。

2015(平成27)年度の実施21地域86校でアンケートを行ったところ、「がんの学習は、健康な生活を送るために重要」かどうかとの質問に、「そう思う」(「どちらかといえば」を除く)との回答が、実施前の72.7%から88.2%に、「がん検診を受けられる年齢になったら、検診を受けようと思う」(同)も54.4%から71.7%に上昇するなど、効果は大きいようです。

ただ、忙しい学校現場では、十分ながん教育に取り組むことが難しいという声もあります。そこで文科省では現在、すぐに使えるプレゼンテーション教材を作成しており、授業で活用してもらいたい考えです。

一方、3月に告示された次期学習指導要領では、中学校の保健分野で、「がんについても取り扱うものとする」と明記されました。特定疾病について具体名が入ったのは、1998(平成10)年改訂時のエイズ以来で「非常に大きいことだ」(文科省健康教育・食育課)だといいます。来年3月に告示を予定する高校の次期指導要領にも、同様に明記される見通しです。

100歳を超えて生きる子に不可欠な学習

がん対策をめぐっては、2016(平成28)年12月に「がん対策基本法」が改正され、学校教育や社会教育で「がんに関する教育の推進のために必要な施策を講ずるものとする」(23条)とされました。次期がん対策基本計画(2017~22<平成29~34>年度の6年間)も、今夏をめどに策定される予定です。

そうした動きも受けて、文科省の2017(平成29)年度予算では、「がんの教育総合支援事業」として、がん教育の全国展開を目指します。とりわけモデル事業では、教員の正しい知識や理解が不足していることや、外部講師との連携に課題があることが指摘されたため、▽教員や外部講師の資質向上を目的とした研修会の実施▽地域や学校の実情を踏まえた指導の在り方・方法の充実(先進校の授業公開、地域の実情に応じた教材開発など)……を行うことにしています。

がんをめぐっては、生活習慣病というだけでなく、患者への接し方など、さまざまな教育課題が考えられます。文科省の検討会でも、100歳を超えて生きる可能性の高い今の子どもたちにとって、まさに次期指導要領が全教科等に導入を目指すアクティブ・ラーニング(主体的・対話的で深い学び、AL)のテーマになる……という指摘もありました。

がんは「誰でもなる可能性がある」(国立がん研究センター)病気です。タブー視することなく、正しい知識を学ぶことはもちろん、親子でも話し合う機会を設けたいものです。

※がん教育(文科省ホームページ)
http://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/hoken/1370005.htm

※2016年度「がん教育」の在り方に関する検討会
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/129/index.htm

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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