教科書も「アクティブ・ラーニング型」に

2020(平成32)年度の小学校から順次実施される次期学習指導要領では、全教科・領域等の授業で、アクティブ・ラーニング(主体的・対話的で深い学び、AL)を導入することが求められています。授業の中心となる教科書にも、それに対応して変わるよう、大きな期待が寄せられています。

全国一定の教育水準を保つために

次期指導要領では、「何を学ぶか」にとどまらず、資質・能力の三つの柱(<1>知識・技能<2>思考力・判断力・表現力等<3>学びに向かう力・人間性等)に基づき、「何ができるようになるか」を重視し、そのためにも「どのように学ぶか」を一体的に捉えることを求めています。そうした授業への転換を図るために求めているのが、「主体的・対話的で深い学び」の実現(「AL」の視点)による授業改善です。

授業を変えてもらうには、もちろん各学校の主導により、一人ひとりの先生に工夫してもらうことが基本です。しかし、ゼロから工夫しろというのも大変です。日本の教科書が、「主たる教材」として学校に使用義務が課せられているのも、全国どこでも一定水準の教育を受けられるようにするためです。

指導要領がAL型に変わる以上、教科書もAL型に転換してもらう必要があります。改訂を提言した昨年12月の中央教育審議会答申も、「教科書は、子供たちが『どのように学ぶか』に大きく影響するものであり、学習指導要領等が目指す理念を各学校において実践できるかは、教科書がどう改善されていくかにも懸かっている」としていました。

教科書「を」ではなく教科書「で」教え学ぶ

中教審答申を受けて、1月にまとめられた教科用図書検定調査審議会(教科書検定審、文部科学相の諮問機関)の論点整理では、改訂に伴って、「資質・能力の育成に向けた『主体的・対話的で深い学び』の視点に立った適切な配慮がなされることを求めることを検定基準上において規定することが適当」だとしています。

実は、教科書検定審の審議が始まったのは、中教審が答申に向けて昨年8月に「審議のまとめ」を公表した直後の9月でした。答申を待たなかったのは、それだけ今回の改訂に伴う教科書編集は大変だろうとの認識があるからです。実際、中教審にも教科書会社の編集部員などが通い詰めていましたし、当初は「ALに対応した教科書をどう編集すればよいかわからない」といった悩みも多くあったようです。

文科省が早くから教科書検定審を動かしたこともあり、多くの教科書会社は、指導要領の告示や、教科書編集上も大きな参考となる指導要領解説書の発行を待たずに、編集作業に取り掛かっています。

ただし、どのような工夫をするかは、編集者の腕の見せどころです。そもそもALは特定の型ではなく、教科書検定審の論点整理でも「型にはまった指導を誘導するようなものとならないよう留意することが重要」だとしているからです。

先生たちの世界では、昔から「教科書『を』教えるのではなく、教科書『で』教えよ」という格言があります。学ぶ側も、教科書を覚えるのではなく、教科書をきっかけに、幅広い学びへと踏み出していくことが求められるでしょう。

※教科書検定審「教科書の改善について(論点整理)」
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/tosho/toushin/__icsFiles/afieldfile/2017/02/10/1381783_001.pdf

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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