超高齢化・人工知能時代の子どもたちに必要な力は

新しい年を迎えました。今年は、中央教育審議会で先頃改訂が答申された次期学習指導要領等のうち幼稚園・小学校・中学校分が3月中に告示されるとともに、新年度初頭には「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の実施方針も策定されるという、日本の教育改革にとって画期的な年になります。なぜこのような改革が必要なのか、年の初めに考えてみましょう。

寿命100年、70歳を越えて働くため「学び直し」も

子どもたちが大人になるころには、どんな未来が待っているのでしょうか。これに関しては、昨年11月に行われた中教審の教育振興基本計画部会での、駒村康平・慶応義塾大学教授(経済政策、社会保障)の発表が参考になります。

厚生労働省によると、2015(平成27)年の平均寿命は男性80.79歳、女性87.05歳。しかし寿命は、どんどん伸びていく傾向にあります。2007(平成19)年に生まれた日本の子どもの半数は、107歳まで生きるという海外の予測もあるくらいです。今の子どもは「寿命100年の時代」を生きると言っても過言ではありません。

2015(平成27)年には、65歳以上の退職者世代を、2.26人の現役世代が支えています。それが30年後の2045(平成57)年には、退職年齢を72歳に引き上げても、1.39人で支えることになります。これからの子どもは、70歳以上まで働いたり、年齢にこだわらない働き方をしたりすることも必要になります。

そんな長い職業生活の中では、社会や経済の在り方にも大きな変化が訪れることでしょう。必要な知識やスキルも、当然変わってきます。まったく別の職種に転職することも、当たり前になります。そこでは、人生の途中で大学などに入り直す「学び直し」が不可欠になります。子ども時代の学校教育では、そんな生涯にわたって学び続ける基礎とともに、意欲や健康も培うことが求められます。

機械が「大人」になる前に

社会・経済の変化で代表的なものが、人工知能(AI)などの技術革新です。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によると、AIとその関連技術は、現在でもまだ「幼児」の段階で、2020~30(平成32~42)年でも仕事のサポートができる「小中学生」段階にとどまりますが、30(同42)年以降は社会問題まで取り扱うことのできる「大人」の段階に到達すると予測されています。2045(平成57)年には人間の知能を超える「シンギュラリティー」(技術的特異点)が到来するともいわれています。

日本では、労働人口の49%に当たる職業が、10~20年後にはAIやロボットなどの機械に代替されるという推計も出されています。それ以外の職業、あるいは今後新しく登場する職業への備えも必要です。東京大学合格を目指していたAI「東ロボくん」の母である新井紀子・国立情報学研究所(NII)教授は昨年6月の同部会で、AIには決してできない「意味の理解」や「一期一会の問題解決」を行うためにも、まずは教科書の文章をきちんと理解させることを提案していました。

次期指導要領では、(1)知識・技能(2)思考力・判断力・表現力等(3)学びに向かう力・人間性等——という、幅広い資質・能力を育てようとしています。幼稚園から大学に至るまでの教育改革の中で、そうした資質・能力をしっかりと身に付けることが、実は超高齢化・AI時代に生きるための近道なのかもしれません。

※駒村康平・慶大教授の中教審教育振興基本計画部会(11月16日)提出資料
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo14/kondankai/__icsFiles/afieldfile/2016/11/21/1379637_06.pdf

※新井紀子NII教授の同部会(6月30日)提出資料
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo14/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2016/07/04/1373986_3_1.pdf

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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