デジタル時代に気を付けたい法律トラブル【著作権編】

近年、スマートフォン(以下スマホ)を通じてインターネットを日常的に利用するお子さまが増えていますが、知らず知らずのうちにお子さまが法律を犯しているケースがあるようです。そこで、今回は著作権法違反に関するトラブルについて、弁護士の福井健策先生にお話を伺いました。



デジタル時代に気を付けたい法律トラブル【著作権編】


どのような情報が著作権で守られているの?

著作権法とは、音楽や映像といった情報(著作物)を権利者に許可なく、第三者が無断で複製するなどして利用してはいけないとする権利です。この著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したもの」と定義されています。著作物を創作した時点で自動的に権利が発生し、以後、原則として著作者の死後50年まで保護されます(著作者が不明な場合や団体発行の作品は公表後50年まで、映画の場合は公表後70年まで)。
著作権は、文化の発展に寄与する役割を担う権利です。著作権がまったく存在しなければ、世の中には海賊版ばかりが広まってしまい、歌手や作家などのアーティストが収入を得るのは難しくなります。新しい文化の創造を守ろうとするのが本来の役割です。



お気に入りだからといって勝手にアップはNG

では、どのようなときに著作権法違反になるか、例を出してご説明しましょう。まず、典型的な著作権侵害として挙げられるのは、自分のものではない他者の作品をインターネット上に投稿してしまうことです。たとえば、人気漫画のキャラクターの著作権は、著作権者である作者や出版社などが持っています。そのため、自分の好きなキャラクターだからといって、勝手に自分のブログにアップロードすることはできません。

もう一つ、陥りがちなのが、ファイル共有ソフトを利用してしまうことで起きる著作権侵害です。ファイル共有ソフトとは、「ウィニー」等の、インターネットに接続された不特定多数の端末同士でファイルのやりとりをするためのソフトウエアです。人気ミュージシャンのCDをコピーした音楽ファイルや新作映画など、多くの人気作品が無料で手に入るといって、お子さまが甘い誘惑にひっかかってしまう可能性があります。

しかし、ファイル共有ソフトを利用して他者の音楽や映像等の著作物を共有すれば基本的に著作権侵害にあたります。また、ファイル共有ソフトの中にはコンピューターウイルスが仕掛けられている危険性があります。知らず知らずのうちにウイルス感染し、個人情報の流出につながるトラブルも発生しているのです。職務上の機密情報の流出が発覚し、重大な結果につながってしまったかたもいますので、十分に注意が必要です。



著作権を侵害すると

著作権を侵害してしまうと、10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金(またはその両方)が科されることになっています。実際に2010(平成22)年に、人気少年漫画を動画として撮影し、権利者に無断で動画投稿・共有サイトにアップロードしていた男子中学生が著作権法違反(公衆送信権侵害)の疑いで逮捕された事件がありました。
また、2012(平成24)年10月施行の改正著作権法により、私的な目的であっても、違法配信からの映像・音楽等のダウンロード行為に2年以下の懲役または200万円以下の罰金(またはその両方)が科されることになりました。お気に入りの動画だからといって、違法ファイルと知りながら自分のパソコンにダウンロードすることは、法律違反になります。



福井先生に聞いた著作権Q&A

Q.違法にアップされたと思われる動画を見ることも危険なのでしょうか?
A.お子さまが閲覧するのに、教育上問題だと感じる画像はあるかもしれませんが、通常見るだけでは法律的には問題はありません。それがたとえ、違法にアップロードされているものでも、法的に罪に問われることはありません。しかし、上記でも申し上げましたが、自分だけで見る目的だとしても海賊版の映像や音楽をダウンロードするのは違法ですので、注意すべきですね。

Q.お気に入りの本の画像をブログにアップするのは違法でしょうか?
A.本の表紙画像も著作物の一つです。一般に、おすすめ本として紹介されて気分を害する権利者は少ないため、著作権侵害だと訴えられることは少ないのでしょうが、注意はしたいですね。

次回は、肖像権に関するトラブルについて気を付けたいことを福井先生にお伺いします。


プロフィール


福井健策

弁護士/ニューヨーク州弁護士。骨董通り法律事務所 For the Arts 代表パートナー。日本大学芸術学部客員教授。著書に『著作権の世紀』(共に集英社新書)、『ビジネスパーソンのための契約の教科書』(文春新書)、『「ネットの自由」vs.著作権』(光文社新書)など。

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