「土曜授業」、4月からどうなるの? ‐渡辺敦司‐

文部科学省が公立学校の土曜授業を自治体の判断で実施できることを明確にする方針を決めたことは既にお伝えしましたが、このほど正式に学校教育法施行規則(省令)(外部のPDFにリンク)を改正しました。ほとんどの学校では年間計画が決まっていますから、実際には新年度からの対応になるものと見られます。4月からの土曜日はどうなるのでしょうか。

公立学校で毎週土曜日を休みとする「学校週5日制」を導入した時、同規則の条文では公立学校の休業日として「日曜日」に「土曜日」を加えました。ただし現行でも「特別の必要がある場合は、この限りでない」とされており、新しい学習指導要領の基になった中央教育審議会の答申(外部のPDFにリンク)でも、地域と連携して総合的な学習の時間などを行う場合は土曜日を活用することが考えられるとしていました。今回、これを「教育委員会が必要と認める場合は、この限りでない」と改めました。同省ではこれにより、教委の判断で土曜授業を実施することができることが、より明確になったとしています。
しかし裏を返せば、教委が必要と判断しなければ実施しなくてもよいわけで、全国一律で学校週5日制に移行した時と比べて、自治体の判断に任せているのが特徴です。各学校が土曜日にも実施したいと考えた場合には、その学校の設置者である教委に相談して、認めてもらわなければなりません。

ところで、ここでいう休業日とは、正規の授業を行わない日ということです。文科省は学校の正規の授業を「土曜授業」、学校が主体となった教育課程(時間割)外の活動を「土曜の課外授業」、学校以外に教委やNPOなどが実施する学習を「土曜学習」と呼んで区別しています。下村博文文部科学相は「土曜日の教育活動が全国各地で活発に行われるよう、積極的に取り組んでまいりたい」(11月29日の記者会見)と述べていましたが、ここで言う土曜日の教育活動とは3種類のいずれかということで、必ずしも土曜授業ばかりとは限りません。もちろん3種類のどれかというだけでなく、正規の授業に企業人や保護者が加わったり、NPOなどの企画に休みの先生が加わったりするなど、さまざまなパターンが考えられます。文科省は2014(平成26)年度予算に「土曜日の教育活動推進プロジェクト」を盛り込み、全国にモデル地域を指定して土曜授業の効果的なカリキュラムを開発するとともに、ほかの地域にも広げたい考えです。

学校週5日制はもともと、学校・家庭・地域がそれぞれの役割分担を明確にする一方で、お互いが協力を深めることで、子どもの多様な体験活動を増やして、豊かな成長を促そうという趣旨で始まりました。しかし土曜日に子どもを単に家庭・地域に返すだけでは、子どもによって活動に差が出てしまったり、休みを有効に活用できない子どもが少なくなかったりしているのも事実です。これを機会に学校・家庭・地域の三者が連携をさらに強め、子どもたちに豊かな学習や体験の機会を提供することが期待されます。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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