小学校高学年の子どもとうまくつきあうために


親にとって、子どもとの距離のとり方が難しくなる小学校高学年の時期。この時期の子どもと、どのようにうまくつきあっていけばよいのでしょうか。

中1になる私の息子も、小学5年生頃から親の言うことに素直に「はい」とは言わず、「今○○しているからできない」とか「それはお父さんがしたほうがいい」などと言い訳をするようになりました。親としてはそうした言動にムッとしたり、憎たらしいと思うことも多くなる時期ですね。

なぜこうしたことが起こるのでしょうか? 身体的、精神的な発達過程などの現状を踏まえながら考えてみたいと思います。

今の小学校高学年は、かつての中学生と同じ
文部科学省の調査によると、中学生になると不登校の生徒数が一気に2倍以上になり、その数は中学1年生だけで2万人を超えています。クラスに1人、あるいは、2クラスに1人くらいの不登校の生徒がいる計算になります。最近では「中1ギャップ」などと言われていますが、子どもの心身の発達が以前と比較して早くなり、小学校6年間、中学校3年間という区切りと合わなくなってきていることが不登校の要因のひとつと考えられています。小学校段階ですでに思春期を迎え、自分に自信がもてなくなった子どもが中学校の学習環境や友達環境の大きな変化にとまどい、学校に適応できなくなってしまうようです。具体的なデータで見てみましょう。

【図1】子どもの身長の伸びの比較
図1 子どもの身長の伸びの比較
*呉市立五番町小学校ほか「平成17年度研究開発報告書」(2006年3月)を基に作成

図1によると、1950年当時、男子の身長が最も伸びるのは14~15歳にかけてでしたが、03年では12~13歳となり、ピーク時が早まっています。女子についても、かつては12~13歳だったピークが、今は10~11歳です。また、女子の平均既潮率は、1961年は中1で53.1%だったのに対し、1993年では既に小6の段階で50%に達しています。(出典:広島県呉市立五番町小学校他「平成17年度研究開発報告書」2006年3月)

こうした身体の変化に伴い、「こころ」の面も小学校高学年で変化します。例えば、東京都品川区の調査では、小5になったとたんに「自分が好き」「自分はまわりの人から認められていると思う」といった自分自身を肯定的にとらえる感情が急に低下することがわかっています。心身ともに、その成長時期が早まっていると言えます。

いいことをしたときはほめてほしい
一方でこんな調査結果があります。図2は、子どもに保護者との関係について聞いたものです。それによると、「何でもすぐに口出しをする」に「あてはまる」と回答する割合が小学5年生から6年生にかけて増えている半面、親が「いいことをしたときにほめてくれる」「悪いことをしたときにしかってくれる」「困ったときに相談にのってくれる」に「あてはまる」と回答している割合が小学5年生から6年生にかけて減少しています。このデータからだけでははっきりとしたことは言えませんが、ひょっとしたら、親は体の大きくなった子どもを大人扱いし、かつてのように純粋に子どもをほめたりしかったりしなくなっているかもしれませんが、実は子どもは、がんばったときにはほめてほしいし、悪いことをしたときは真剣にしかってほしいし、困っているときにはもっと親身に相談にのってほしいと思っているのではないでしょうか。

【図2】親との関係
図2 親との関係
(出典:Benesse教育研究開発センター『子ども生活実態調査報告書』2005年)

「理屈」ありの本気コミュニケーション
では具体的には、このような子どもとどのようにつきあっていけばよいのでしょうか?「小学5、6年生」といっても個人差があるので、子どもによってそれぞれ対応が異なりますが、先のデータでみてきたように、小学校高学年になったら、子どもは「思春期を迎えた」と考えて接したほうがいいかもしれません。

早稲田大学の安彦忠彦教授が次のようなことをおっしゃっていました。
「3歳から7歳にかけての子どもは、論理的な能力が発達していないため、子どもの疑問に大人が適当に答えたとしても案外あっさりと納得します。また、知識を吸収したいという意欲が高いため、学習場面でも、例えばドリル学習などの反復を苦にせず、リズムや音楽をつけるなどの工夫をすると、高い学習効果を上げることができます。しかし、9歳から11、12歳にかけては抽象的・論理的思考力が発達する時期で、理屈に合わない大人の指示に反発し、論理で言い負かすことにも喜びを感じるようになります。反復学習をいやがるため、子どもの抽象的・論理的思考に働きかける学習指導が必要なのです」(弊社情報誌「VIEW21」中学版2007年4月号 取材記事より)

確かにそのとおりだな、と自分の子どもを見ていて思います。親の言動に対して、子どもは子どもなりの「論理」で返してくるようになります。そうした場面でも、カッとならず、できるだけ冷静に子どもと向きあって、「論理」的に言葉を返していきたいものです。子どもの言動が屁理屈である場合も多いのですが、時間をかけて屁理屈につきあうことも大切かもしれません。

でもそれだけでは、なかなかうまくいかないのも事実。私の息子が5年生のときのことですが、友達からゲームソフトを借りたまま半年くらいがたち、たまたま大掃除をしていてそれを発見しました。息子は、友達は何も言ってこないから大丈夫と言いましたが、そのときは、かなりきつくしかりました。その後、息子と一緒に友達の家まで行き、ゲームソフトを返すとともに、一緒に謝りました。理屈でなぜ悪かったのかを説明することも大事ですが、本心から「いけない行為」であることを子どもに示すためには、親も本気だということを態度で示すべきときもあると思います。

ときには大人扱いすることが必要だったり、ときには子どもとして、ほめたり、しかったりすることが大事な小学校高学年の時期。「理屈」と「感情」と上手につきあいながらコミュニケーションできるといいですね。


プロフィール



「進研ゼミ小学講座」は1980年に開講して以来、「チャレンジ」の愛称とともに全国の小学生のやる気をひきだす自宅学習教材として親しまれてきました。現在、小学生の約5人にひとりが会員という、最も利用されている自宅学習教材です。

お子さまに関するお悩みを持つ
保護者のかたへ

  • がんばっているのに成績が伸びない
  • 反抗期の子どもの接し方に悩んでいる
  • 自発的に勉強をやってくれない

このようなお悩みを持つ保護者のかたは多いのではないでしょうか?

\そんな保護者のかたにおすすめなのが/
まなびの手帳ロゴ ベネッセ教育情報サイト公式アプリ 教育情報まなびの手帳

お子さまの年齢、地域、時期別に最適な教育情報を配信しています!

そのほかにも、学習タイプ診断や無料動画など、アプリ限定のサービスが満載です。

ぜひ一度チェックしてみてください。

子育て・教育Q&A