【専門家・体験談】ADHD(注意欠如・多動症)とは? 保護者はどうサポートする? 【専門家・体験談】ADHD(注意欠如・多動症)とは? 保護者はどうサポートする?

2023.11.22

【専門家・体験談】ADHD(注意欠如・多動症)とは? 保護者はどうサポートする?

発達障害の一つにADHD(注意欠如・多動症)があります。
ADHDのお子さまには、例えば以下のような様子が見られます。
「周りより、じっとしているのがニガテそう」
「忘れ物が多くて、困っている…」

この記事では、ADHDの特徴や対応方法などを、ご紹介していきます。

また、日常生活の中でのサポート方法や向き合い方について、保護者の皆さんからの体験談もお伝えします。

監修者

榊原 洋一

さかきはら よういち


CRN所長/お茶の水女子大学名誉教授/ベネッセ教育総合研究所常任顧問

監修者

山﨑 衛

やまざきまもる


マインメンタルヘルス研究所(株式会社マイン)代表取締役社長。マインEラボ・スペース代表。公認心理師。臨床発達心理士。特別支援教育士。

ADHDとは? 多動性・衝動性・不注意にあらわれがち

ADHDの特徴「多動性」「衝動性」「不注意」

ADHD(Attention Deficit Hyperactivity Disorder)は発達障害の一つ。

小・中学生の3~7%が診断され、女の子と比べて男の子が約2倍多いといわれています。

ADHDには、不注意、多動性、衝動性の3つの特性があります。それぞれどのような特性なのか、見ていきましょう。

(1)多動性

・周りのお子さまがじっとしていられる場面で、座っていられず立ち歩く
・手足をそわそわ動かす
・日頃から落ち着きがなく、常に動いている

(2)衝動性

一方的に話す子供と、驚く子供

・興味があると思いつきですぐ行動に移してしまう
・順番が来るまで待つことが難しい
・質問の内容を最後まで聞かずに答える
・周りのお子さまの遊びや勉強をさえぎってしまう
・突然何かに駆り立てられるように活動し始める

(3)不注意・集中困難

漢字ノートを忘れてしまった事に気づく子ども。学校から保護者へのお知らせプリントを親に渡し忘れてうつむく子ども

・注意を持続できず、やるべきことを忘れる
・他の活動をしていても、別のものが気になるとそちらに行ってしまう
・うっかりミスが多い
・忘れ物が多い
・宿題などの締め切りを忘れてしまう
・集中して取り組む必要がある課題を避ける
・人に話しかけられても聞こえないことがある、聞いていないように見えることがある
・ものをなくしてしまう

また、多動性・衝動性が少なく、不注意が強く表れるタイプのADHDは、女子に多い傾向があります。

参考:【専門家】「気づけばぼーっとしてしまう」 不注意が気になるときの対処法

どんな人でも、多かれ少なかれ、多動性や衝動性、不注意はあるものです。

ただし、上記のような気になる行動特性がいくつかあり、日常生活や社会生活に支障が出ていて、学年が上がってもなかなか改善されない場合は、まずは学校の先生やスクールカウンセラーなどに相談し、必要があれば小児科医や児童精神科医を受診してみましょう。

ADHDの対応法は? まずは環境を整えることが大切

子どもに次やることを聞く親。筆記用具を机の引き出しの中に入れていたことを思い出した子ども

ADHDのお子さまの対応では、お子さまが過ごしやすい環境を調整したり、行動をサポートしたりするなど、行動面での支援が一般的です。

医療機関を受診すると、ADHDの症状にはお薬が処方されることもあり、お薬の助けを借りながら生活しているお子さまもいます。

環境を調整する

勉強をするときは、短く時間を区切って取り組むのがおすすめです。
また、引き出しの中身がすぐにわかるように、イラストや写真を貼るのも有効です。

行動の支援

国語の教科書を音読する子どもと褒める親

お子さまが長い時間座っていられたり、宿題に集中して取り組めたりしたときには、保護者のかたができる範囲でほめてあげてください。
その際、どうしてほめられているのかも一緒に伝えると、さらに効果的です。

また、「1回〇〇できたら1点」のように得点化をして、それを数えていくのもよいですね。

逆に、立ち歩いてしまった場合は、叱るのではなく、「座ってほしい」などの適切な行動を促す声かけをしましょう。

参考:【体験談】忘れ物はどう防ぐ? うっかりが多いお子さま向け対処法

参考:じっとしていられない、どう解消する? 発達障害との関係と対応法

薬物療法

ADHDの症状を緩和するため、医療機関からお薬が処方されることがあります。
種類によって効き方は異なり、また成長段階によって用量も変わります。

また副作用の出方もお子さまによってそれぞれですので、医師の指示・判断に従って服用することが大切です。

どう支える? ADHDの子どものサポート方法

親子と友達と先生が中央に集まっている

ADHDのお子さまに対する支援には、家族や周囲の理解とサポートが大切です。
お子さまの成長段階に応じて、適切なサポートと理解を深めることで、より良い日常生活を実現できるでしょう。

学校での過ごし方に困っているときは、担任の先生に相談してみましょう。
お子さまに合った配慮をしてもらえると、学校生活の困りが軽減されることがあります。

また、保護者のかたが子育てに悩みを抱えることも少なくありません。
そんなときは、保護者のかたが子どもへの効果的な接し方を学べる「ペアレント・トレーニング」も有効です。

ペアレント・トレーニングでは、ADHDやASDのお子さまへの接し方を、専門のトレーナーから講習を受けて学びます。

たとえば、

・お子さまをほめること
・お子さまのことをよく観察すること
・上手に指示を出すこと

などを、講習を通して習得していきます。

ペアレント・トレーニングの講習は、診断を受けた医療機関で受けることが可能な場合が多いですが、その数はあまり多くありません。

近隣の医療機関で講習を受けることが難しい場合は、ペアレント・トレーニングを解説している本などを参考にすると良いでしょう。

保護者と子供が甘いものを食べながら楽しそうに会話をする

そのほか、保護者の皆さんの体験談を参考にするのも1つの手です。
例えば同じ発達障害のお子さまをお持ちの保護者のかたに、アドバイスをもらうなどしてみましょう。

困りごとは違いますが、いろいろな体験談を知ることは、お子さまへの支援や保護者のかたの安心につながるでしょう。

いずれにしても、ADHDのお子さまの困りごとをできる限り減らして、その子らしいのびのびとした育ちができるよう支えていくことが大切です。

【体験談】みんなはどうしている? ADHDの子どものサポート

紙に書いた内容を指さし確認しながら読み上げる親と、聞いている子ども

ここでは、ADHDのお子さまを持つ保護者のかたから寄せられた、お子さまの様子やご家庭でのサポート方法をご紹介します。
ぜひ、参考にされてみてくださいね。

京都府

小2保護者 じゃむころ

うちの子は、集中できる時間が短め。やる事は短い時間で区切っています。

できたらついつい「もう1問やろうか?」と言いたくなりますが、時間を守るようにしています。

広島県

小5保護者 まま

家族全員の予定が書けるカレンダーを動線のど真ん中、子どもの目線の高さで設置しています。

「今日何があるの?」と、聞かれるたびに「カレンダーを見て」と言い続けると、自分で確認してくれるようになりました。

静岡県

小4保護者 ポコ

興味のある分野の集中力は凄まじいので、今はプログラミング教室に通わせています。

家でもパソコンを触り、プログラミングでゲームを作成するなどして、パソコンの知識は増えているようです。

広島県

小3保護者 ハム太郎

習い事について、やっておくと良い対策は、先生方にきちんと子どもの特性を伝えておくこと。

伝える前は怒られることが多くて、本人も辛い思いをしていましたが、私と先生が対応の仕方について話しておけば、うまくいくようになりました。

小1保護者 カタツムリ

遠足などで初めて見るものがあると、道路に飛び出すことがあるので、幼稚園の頃から保育所等訪問支援のサポートを受けています。

付き添いのスタッフが遠足についてきてくれるので、遠足に行けるようになり、本当に利用してよかったです。

まとめ & 実践 TIPS

粘土で動物をつくっている子どもと後ろから見守る親

ADHDは生まれつき脳の働きに特徴があることが原因であり、保護者のかたの育て方に問題があるわけではありません。

しかし、お子さまの忘れ物が多かったり、落ち着いて人の話を聞けなかったりする様子が見られると、「このままで大丈夫?」と、不安に感じることもあるでしょう。

また、お子さま自身も不安を感じています。「なぜやるべきことができないのだろう」と、自己肯定感が下がってしまうことも。

その一方で、ADHDのお子さまは、好奇心が旺盛などの特徴もあります。
ADHDの特性について理解し、できることを見つけて、一つひとつお子さまの自信につなげていくことが大事です。

特性を持ったお子さまが、自分らしい人生を生きるヒントになりましたら幸いです。

監修者

榊原 洋一

さかきはら よういち


CRN所長/お茶の水女子大学名誉教授/ベネッセ教育総合研究所常任顧問

著書:「オムツをしたサル」(講談社)、「集中できない子どもたち」(小学館)、「多動性障害児」(講談社+α新書)など。

医学博士。CRN所長。お茶の水女子大学名誉教授。ベネッセ教育総合研究所常任顧問。日本子ども学会理事長。専門は小児神経学、発達神経学特に注意欠陥多動性障害、アスペルガー症候群などの発達障害の臨床と脳科学。趣味は登山、音楽鑑賞、二男一女の父。

監修者

山﨑 衛

やまざきまもる


マインメンタルヘルス研究所(株式会社マイン)代表取締役社長。マインEラボ・スペース代表。公認心理師。臨床発達心理士。特別支援教育士。

企業向けメンタルヘルスサポート事業と、子供向けの発達・学習支援事業を行う。教員への発達支援研修や現場の実践に基づいた学習教材の研究開発、出版を行っている。