【体験談】「こだわりの強さ」とどう向き合う? 発達障害との関連やサポート方法を解説 【体験談】「こだわりの強さ」とどう向き合う? 発達障害との関連やサポート方法を解説

2023.11.8

【体験談】「こだわりの強さ」とどう向き合う? 発達障害との関連やサポート方法を解説

「勝ち負けにこだわるあまり、負けると大泣きする」
「同じ洋服ばかり着たがる」

発達障害のお子さまの中には、このような「こだわりが強い」特性があることも。

「こだわりの強さ」によって、人間関係などに影響があるとき、保護者のかたは心配に思うかもしれません。
しかし、一つのことをやり続ける高い集中力や、好きを極める力につながる長所とも言えます。
お子さまと保護者のかたが、「こだわりの強さ」と向き合う方法をご紹介します。

監修者

山﨑 衛

やまざきまもる


マインメンタルヘルス研究所(株式会社マイン)代表取締役社長。マインEラボ・スペース代表。公認心理師。臨床発達心理士。特別支援教育士。

こだわりの強さは不安の表れ -ASDの場合-

壁に「16時から宿題をやる」という張り紙をつけて勉強をする子ども

ASD(自閉症スペクトラム)のお子さまは、強いこだわりを持つことがあります。
これはASDの主な行動傾向の一つである、想像力がうまく働かないことが関係しています。

想像力は目に見えないものや知らないことについて、情報や経験を元に思い描くこと。

ASDのお子さまの場合、次に起こることや新しいことに対して、想像するのが苦手なため、同じことにこだわりを持ちやすい傾向があります。

強いこだわりは、不安の表れの一つ。
普段と違うことが起きると、状況をうまく理解できず、自分はどうしたらいいのかわからなって混乱したり、パニックを起こしたりしてしまうことも。

逆に、普段通りに過ごしていれば安心につながります。

同じことを長い時間やり続けられる高い集中力や、ちょっとした違いも気づける鋭い観察力は、長所になり得るとも言えるでしょう。

勝ちにこだわり、好きなものに没頭する -ADHDの場合-

学校で授業を受けながら熱心にノートをとる子ども

ADHDのお子さまには、「○○したい」衝動がうまくコントロールできずに、こだわりのような行動が目立ってしまう場合があります。

たとえば、勝ち負けにこだわり、一番にならないと気が済まなかったり、時間を忘れて好きな趣味に没頭したり。
お子さま自身には悪気がなくても、周りにうまく合わせられないため、適応がスムーズにいかなくなることがあります。

好きなものにのめり込める特性は、研究者や技術者など、専門的な知識が求められる職業や、経営者に向いている力ともいえます。

感覚過敏によるこだわりがある場合も

発達障害のお子さまの中には、感覚過敏を背景としたこだわり行動が出てしまうケースもあります。

触覚が過敏な場合、同じ服を着たがる、触り心地の好きなぬいぐるみを離さないなどの行動が見られます。

味覚が過敏な場合は、好き嫌いが激しい、同じものを食べたがるといった偏食として現れることがあります。
中には同じ食べ物なのに、メーカーが違うと食べられないケースも。

わがまま、こだわりが強いと感じるかもしれませんが、感覚の過敏さが影響している可能性があります。

【体験談】「見通しを立てる」「できるだけ尊重」がポイント こだわりとパニックへの対応策

親が今日の予定を紙にまとめ、指さし確認をする子ども

「こだわりの強さ」には、どのように対処していけばいいのでしょうか。

基本的には、こだわりはあまり無理にやめさせようのとはせず、できるかぎり尊重し、パニックにならないように事前に見通しを持たせることが大切です。
保護者のかたが今すぐ実践できる、関わり方をご紹介します。

変化を事前に伝える

紙に書いた内容を指さし確認しながら説明する親と、聞いている子ども

初めての場所に行くときや、初めてのことにチャレンジするときには、事前に何をするのかを伝えておきます。

「どうすればいいのか」を具体的に伝えたり、「いつ終わるのか」を伝えたりすることが安心感につながりますよ。

また、急な予定変更があった際は、できる限り今後の流れを説明すると、スムーズに。 例えば「ここで10分待っていよう」「一度家に戻るよ」など、具体的にどのような行動をとればいいのかを伝えてみてくださいね。

宮城県

中3保護者 あさひ

急な予定変更や段取りがうまくできないので、やることは早めに予告し、手順を見えるところに貼っています。
予定通りできたらごほうびをあげています。

千葉県

小4保護者 はな

変則的なイベントはできるだけ避け、ルーティンを作るようにしています。
そのため、アラームが鳴る腕時計をいつも身につけて、外でもいつ何をするのかはっきり意識させています。

写真やイラストを使って具体的にイメージする

事前に画像を検索して行く先のイメージを親子で共有

言葉で聞くよりも、見たほうが理解しやすい場合があります。

作業の手順などをイラストや写真、動画などを使って示してみましょう。
また、手順の中の「今するべきこと」にマグネットをつけるなどすると、やるべきことが明確にわかり、自分で作業が進められます。

滋賀県

中1保護者 みち

幼児の頃は毎朝、イラストや写真を使って、一日の流れを視覚的に伝えていました。
また、急に遊びをやめるのが難しいので、予定時間の3分前にタイマーを自分で押させて、音が鳴ったら片づけをする工夫もしていました。

同じものを複数用意する

同じ洋服を着たがる、お気に入りのぬいぐるみなどがある場合は、事前に複数用意し、順番に洗うなどして、常に代わりがある状態にしておきましょう。
洋服のタグがチクチクしていやがる場合は、カットしておくのも有効です。

場所を移動してクールダウン

子どもが外出先で癇癪を起こし、ひと気が無い場所で冷静に対応する親

パニックになったら、周りの刺激から遠ざけることが大切。
安心でできる場所に移動しましょう。騒がしかったり、人がたくさんいたりすると、クールダウンしにくいので、静かで落ち着いた場所に移動しましょう。

福島県

小2保護者 あじゃらん

パニックは減りましたが、そのときにクールダウンできるように、トランポリンやバランスボールをする場所を用意しています。

深呼吸をさせる

深呼吸は自律神経を整える効果があり、パニックを落ち着かせるために有効です。手をにぎる、数を数えるなどして、ゆっくり呼吸することを促してみましょう。

言葉やタッチで安心させる

「大丈夫だよ」「もう嫌なことはないよ」「そばにいるからね」などと、静かにゆっくりした口調で伝えましょう。
お子さまが触られても嫌でなければ、背中をさする、手を握るなどをしながら声をかけるのもオススメ。

こだわりを持ちつつも、人と上手に付き合う方法は?

手を取り合って一緒に学校に投稿する子供と手を振って見送る親

こだわりを持ちながらも上手に人と付き合うためにはどうしたら良いのでしょうか。

先ほどの対応方法に加えて、保護者のかたが実践できるかかわり方のコツをご案内します。

感情をラベル付けする

お子さまの人間関係を育んでいくうえで基本となるのが「感情をきちんと言葉にできること」

自分の気持ちを言葉にできることは、気持ちをコントロールする第一歩になります。

「つらい」「こわい」「心配」「くやしい」などの気持ちを、お子さまが感じているときに「つらかったね」「くやしかったね」などのように周囲が声かけしてみましょう。
自分の気持ちと言葉が結びつき、自分で表現できるようになっていきます。

特にこだわりの強いお子さまの場合、「やり方が変わって不安だ」など、自分の気持ちを伝えられるようになると、うまく気持ちをコントロールでき、突然のパニックが減ってくるでしょう。

香川県

小3保護者 はなび

ADHDの娘は相手の気持ちを察することが苦手なようです。 自分が正しくてお友達が間違っていると思うと、相手に強く注意してしまうことがありました。

強い言葉で注意したときと優しい言葉で注意したときに、相手がどんな気持ちになるかわかるように、少し大げさに言い方を変えて娘に再現してみせました。
注意された相手から見てどう感じるのか、想像がつきやすかったようで、「優しい言葉で注意してあげた方がいいね」と納得できたようでした。

代わりの案を提案する

1人で歯磨きを上手にできた子供と褒める親

 強いこだわりの中にも、柔軟性が持てるといいですよね。
「このおもちゃは使えないけど、これはどう?」などと、代わりに使えるものを提案してみましょう。

できたら「すごいね」「ありがとう」などとほめ、できたことを認めてあげてください。

見通しを具体的に伝える、自分で言えるようにする

タブレットで遊んでいた子供に「あと5分したら片付けてね」と声をかける親

「今は○○しないとダメでしょ」「いい加減にしなさい」などと、こだわりの強さを否定的な声かけでやめさせようとすると、うまくいかないことも。

「あと5分したら、○○をしてね」「あとどのくらいで終わりにできる?」など見通しを伝えたり、お子さまに確認したりしましょう。
また、お子さま自身が「あとこのくらいやれば大丈夫」などと、自分で言えるようになってきたら、行動をコントロールできるようになってきている証ですので、ほめてあげてくださいね。
どのような言動をすれば、コミュニケーションや社会生活がスムーズにできるのかを具体的に伝えていきましょう。

まとめ & 実践 TIPS

親子と友達と先生が中央に集まっている

「こだわりの強さ」は、お子さまが自身の不安を取り除くための心理、あるいは強い興味関心の現れです。

また、「こだわりの強さ」は、高い集中力や、小さなことにも気がつける観察眼、好きなことに没頭できるなどのプラスの面があります。

保護者のかたは、こだわりをうまく肯定しながら、お子さまをサポートするのがオススメです。

こだわりを大事にしながらも、上手に人と付き合えたり、やるべきことをやるべきときにできたりすれば、お子さまの大きな自信になっていきますよ。

監修者

山﨑 衛

やまざきまもる


マインメンタルヘルス研究所(株式会社マイン)代表取締役社長。マインEラボ・スペース代表。公認心理師。臨床発達心理士。特別支援教育士。

企業向けメンタルヘルスサポート事業と、子供向けの発達・学習支援事業を行う。教員への発達支援研修や現場の実践に基づいた学習教材の研究開発、出版を行っている。