【体験談・専門家】発達障害と診断されたら 小学校は「特別支援学級」と「通常学級」どちらへ進むべき? 【体験談・専門家】発達障害と診断されたら 小学校は「特別支援学級」と「通常学級」どちらへ進むべき?

2023.10.11

【体験談・専門家】発達障害と診断されたら 小学校は「特別支援学級」と「通常学級」どちらへ進むべき?

発達障害のお子さまの保護者のかたの中には、「特別支援学級を勧められた」「通常学級に進んでよいのか迷っている」と悩まれている方がいらっしゃると思います。

なかなか人には相談しづらく、おひとりで苦労されている保護者のかたも多いのではないでしょうか。

そこで、特別支援教育の第一人者である小池敏英先生 (尚絅学院大学特任教授)に、特別支援学級に進むべきかを迷われている方のためにお話を伺いました。

※本記事では、一般的な見解をご紹介しています。特別支援学級への進学は、お子さまの発達状況や学習レベル、地域や学校によって選択肢がさまざまですので、詳しくはお子さまの進学される学校にご確認ください。

監修者

小池 敏英

こいけとしひで


尚絅学院大学特任教授 東京学芸大学大学院 教育学研究科修士課程

—発達障害のお子さまが通う特別支援学級とはどのようなところでしょうか?

特別支援学級と通常学級について考える親

「特別支援学級」は、学習や生活に困難を抱えているお子さまのための学級ですが、『その子自身の「個」の力が発揮できる場所』を目指しています。

通常学級では一斉に授業が進んでいきますが、特別支援学級ではお子さま一人一人の状況や習熟度に合わせた計画を立てますので、その点が大きく違っています。

特にコミュニケーションが難しいお子さまや、要求をうまく伝えられないお子さまの場合は、先生が個別に向き合って対応してくれるので、過ごしやすい環境だと言えるでしょう。

—発達障害のお子さまが通常学級に進むと、どのようなことが考えられますか?

通常学級で授業を受ける子供

お子さまの発達状況やクラスの状況によってさまざまなケースが考えられますので、必ずしもお子さまが苦労するとは言い切れません。

通常学級でも、障害のあるお子さまの個々の状況に配慮しながら、通常の教育課程に基づく指導を行っているところもあります。

ただし通常学級では“平均的な6歳児”の発達に合わせた学習計画や教科書設計がなされているのが基本です。

そのため入学時点では、<耳で聞いた言葉を覚えることができる><言葉の1文字1文字を理解できる>ことを前提として、学習が進められます。(なおこの場合、読めるかどうかはさほど重要ではありません。)

それらが困難なお子さまの場合は、学習が進むにつれ、ついていくのが負担になってしまう可能性はあります。

—「特別支援学級に進学するイメージがわかない、迷っている」という保護者のかたもいらっしゃると思います。

特別支援学級に進学するイメージが湧かず選択を迷っている親

特別支援学級への進学に迷う場合は、「いつかは特別支援学級も…」と念頭に置きながら、まずは通常学級から始めてみてもよいのではないでしょうか。
低学年のうちは中学年以降よりは学習に差が出づらいので、まずはお子さまの様子を見て選択肢を変えていくのも手です。

これに関しては、地域や学校によって方針が異なりますので、お子さまの進学される学校に確認してみるとよいでしょう。

—特別支援学級に進むメリットはありますか?

数を正しく数えることができた子供と褒める先生

特別支援学級では、「失敗経験をなるべく減らし、成功体験を多く積ませる」という環境づくりをしています。ですので、日々の活動が自信につながっていくという良さがあります。

また、就学前に療育に通っていたお子さまの場合は、療育時代の情報を連携してもらえることもありますので、比較的スムーズに移行することができるでしょう。

そのほかにも、特別支援学級というひとつのコミュニティができますので、お子さまにとっては卒業後の仲間ができる、保護者のかたにとっては情報交換しやすいネットワークができるといったメリットがあります。
先の話になりますが、高等学校卒業後には就労支援を受けることもできます。

【体験談】学校では通常学級と特別支援学級、どちらに通っている?

特別支援学級と通常学級

ここからは、発達障害のお子さまをお持ちの保護者のかたから寄せられた、どの学級に通っているか、学校でどのように過ごしているか、などの体験談をご紹介していきます。
ぜひ、参考になさってください。

小1保護者 とんぺいちゃん

ADHDなのですが、人が大好きな息子なので友達をたくさん作らせてあげたい。という気持ちもあり、通常学級に在籍しています。 授業では集中が途切れてしまい、先生の手を借りることは多いですが、発想力が豊か、誰とでも隔たりなく接することができるので、人と人を繋げる役目をクラスでしているようで、先生からほめてもらっています。

愛知県

高1保護者 さよ

小学校1年生の終わりから6年生まで支援級に在籍しました。学習が苦手な本人に合わせて、支援級では宿題があまり出ませんでしたが、中学からは普通級に行き、本人が集中して宿題を終わらせるようになりました。

愛知県

小2保護者 ふみたん

少し他の子と違うかも?と思っていましたが、2歳半の時にプリスクールで指摘され、その後、発達検査をして療育に通いました。今は特別支援級に通いながら通常学級の同級生とも交流しています。

小1保護者 しかとも

園の先生から発達検査をすすめられ、自閉症のアスペルガーと診断されました。園では療育、小学校からは同じ場所の放課後デイサービスに通所して、SST(ソーシャルスキルトレーニング)や体幹を鍛えるトレーニングをしています。学校は特別支援学級です。

高1保護者 cafekko

幼稚園のときに、幼稚園と並行して療育に通いました。小学校入学時は特別支援学級在籍。その後、小3で通常学級へ。小5~中3まで通級指導教室へも通いました。
大人数の学校生活はストレスが大きいため、中学校は地域外の小さな学校に入学しました。この中学生活で大きく成長し、今は私立高校(普通科)に在籍しています。学校の先生がたには特性をご説明し、都度、対応していただいています。

岡山県

小5保護者 こ

今のところまだグレーで通常級に通っていますが、保育園の先生や小学校の先生にお話して、なるべく見守ってもらうようにしています。ただ、団体での行動はなかなか難しい状況です。

沖縄県

小5保護者 aqua

動くもの(エスカレーターなど)を延々と眺めたり、落ち着かなかったりするのですが、小学校は通常学級に通っています。担任の先生へ障害の説明をして、何かあれば声かけなどをしてもらいながら過ごしています。

群馬県

中1保護者 のり

知的障害ありの自閉症です。小学校から特別支援学校に通っています。
支援学校のお母さんは同じような悩みを抱えているので、話を聞いてもらっています。また、支援学校の先生や、放課後デイの支援員さん、相談員さんにもお話しすることが多いです。

※ここでご紹介した体験談は、投稿者さまの表現をそのまま使用している場合があります。

まとめ & 実践 TIPS

手を取り合って一緒に学校に投稿する子供と手を振って見送る親

お子さまの発達状況や保護者のかたの考えがありますので、必ずしも特別支援学級に進むべきということはありません。
ただし、通常学級ではお子さまが負担を感じる可能性もありますので、じっくり様子を見てあげる必要はあります。

また、もしお住まいの地域や学校に相談できる専門家がいる場合は、どのような選択肢があるのかアドバイスを受けてみるのもよいのではないでしょうか。
どの道を進んだとしても、お子さまと保護者のかたが一緒に「居心地よくいられる場所」を見つけられることを願っています。

監修者

小池 敏英

こいけとしひで


尚絅学院大学特任教授 東京学芸大学大学院 教育学研究科修士課程、東北大学教育学研究科博士課程修了。博士(教育学)。東京学芸大学教育学部 教授を経て2019年4月より現職。

研究課題は「学習障害児の認知評価と学習支援、発達障害児のコミュニケーション支援」著書に『LDの子の読み書き支援がわかる本』(2016)講談社、『読解力を育む発達支援教材』(2010)(監修 学研教育みらい)、『LD児のためのひらがな・漢字支援』(2003) (編 あいり出版)など。