出願直前! 子どもの「将来」を見据えた最終決定を(1)これからの世界で必要な力とは [高校受験合格応援コラム 第8回]

先月は、過去の入試問題(過去問)の取り組み方と、三者面談の受け方についてお話ししました。
今月は、出願直前のこの時期にあえて考えておきたい、「子どもの将来と進路選択」について取り上げます。



今こそあえて「遠く」を見て

11月末潤E12月は三者面談があり、受験校の最終決定を迫られる時期。ご本人も、保護者のかたも切羽詰った気持ちになるのは当然かと思います。
目の前の受験のことしか考えられなくなりがちなこの時期だからこそ、あえておすすめしたいのが「長いスパンでお子さんの進路を考える」ということです。

今の中学生は、21世紀の半ばに壮年期を、後半に老年期を迎えることになります。22世紀をその目で見る子も、中にはいるかもしれません。そのころ、世界はどのように変わっているでしょうか。

高校時代は、そのまだ見ぬ世界を生き抜くための基礎となる力をつける、大切な時期です。今、頭の片隅にでも「遠い未来」を置いて考えることで、おおらかな気持ちになり、また将来につながる進路選択ができるのではないでしょうか。



子どもたちの半数以上が、今は存在しない仕事に就く?

現在、世界ではグローバル化、IT化がこれまでにないスピードで進んでおり、これまでの経験では、先の予測がしにくい状況となっています。たとえば、人工知能の専門家であるオックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授の研究によれば「今後10潤E20年程度で、約77%の仕事が自動化される可能性が高い」といいます。また、ニューヨーク市立大学のキャシー・デビッドソン教授は「2011年に小学校に入学した子の約65%は、今は存在しない仕事に就くだろう」と語っています。「この仕事に就けば」「この企業に就職すれば」将来は安心、といったことが見えにくくなっているのです。



「海外で働くのが普通」の世界で必要なことは

世界の中の日本の地位も大きく変化しつつあります。日本のGDP(国内総生産)は、1990年ごろは全世界の20%近くを占めていましたが、OECD(経済協力開発機構)の以前の予測によれば、2014年には6.5%、今の中学生が社会の主力になる2030年には4%を割るといわれています。世界経済に占めるGDPの割合は、欧米も減少傾向にあり、急激に伸びているのは発展途上国です。日本国内では少子化・高齢化が進み、生産能力・消費能力が共に縮小傾向にあるため、多くの日本企業が国内より海外のビジネスに力点を移しつつあります。

このようなことから考えて、今の子どもたちは、望むと望まないとにかかわらず、海外、それも発展途上国で働く確率が非常に高いといえるでしょう。そうなると重要になってくるのが、単なる英語力にとどまらず、価値観や背景の異なる人とも意思を通じ合えるコミュニケーション力であり、どんな場所でも生きていけるタフさではないでしょうか。



企業任せ・大学任せにできない時代へ

日本では長らく終身雇用が一般的でしたが、生涯ひとつの企業で働き続ける人は減っています。また、現在、働く人の約40%が非正規雇用であり、その割合は今後さらに増えていくと見られます。一方、不況・グローバル化の影響を受けて、企業の人材育成費も減少傾向にあります。つまり、今の子どもたちが就職して、定年までその会社にいる可能性は極めて少ないうえ、企業任せにしていては、職業人としてのスキルが身に付きにくい環境になってきているのです。

この傾向は、大学や研究機関でも見られ、近年はじっくりと基礎研究を行うより、早く目に見える成果を出すことを求められがちです。企業や大学から、時間をかけて人を育てる余裕が失われてきているのではないでしょうか。少なくとも、「よい大学」「よい企業」を目指してがんばっていれば、その先に安定した生活の展望が開ける、という時代ではなくなっていることは確かです。



「数値」をいったん頭から外して最終決定を

現在、先の見えにくい「グローバル社会」を生き抜く力を付けるため、数多くの学校が模索を続けています。偏差値や大学進学率といった数値は、決して意味のないものではありませんが、それ以上に、そうした学校の教育姿勢に注目して、受験校の最終決定をしていただきたいと思います。そして、この機会にあえて我が子を客観的に眺め「どう育ってほしいか」「どう未来を生き抜いてほしいか」といった根本的なところを考えてみてください。そうすることがきっと、保護者のかたにとっても、ご本人にとっても、将来後悔しない選択につながると思います。

次回は、子どもの「将来」から考える受験校最終決定についてさらに詳しく述べます。


プロフィール


安田理

大手出版社で雑誌の編集長を務めた後、受験情報誌・教育書籍の企画・編集にあたる。教育情報プロジェクトを主宰、幅広く教育に関する調査・分析を行う。2002年、安田教育研究所を設立。講演・執筆・情報発信、セミナーの開催、コンサルティングなど幅広く活躍中。
安田教育研究所(http://www.yasudaken.com/)

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