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遊覧船に乗って堀から眺める景色が秀逸。桜の名所でもある国宝・『松江城』の魅力とは

国宝・『松江城』とは? 遊覧船から城下町を眺めよう!

『松江城』は、出雲国、現在の島根県松江市殿町に存在し、松江藩の藩庁として機能した平山城です。天守閣正面の中央上に位置する「入母屋破風」(いりもやはふ)が特徴的で、桃山時代の建築様式を取り入れたこの三角屋根が、千鳥が羽を広げたような姿に見えることから、別名『千鳥城』とも呼ばれます。
『松江城』の天守は、現存12天守のひとつで国宝に指定されていますが、現存する天守の中で唯一『望楼(ぼうろう)式』と呼ばれる古くからの伝統的な構造をしています。

『松江城』の築城は、堀尾吉晴(ほりおよしはる)によるものです。堀尾吉晴は城普請(しろぶしん・城の土木工事)の名人として名高かった人物で、孫の堀尾忠晴(ほりおただはる)の後見人として、現在の松江市の礎となる、『松江城』とその城下町を築きました。城下の堀や町の構造は今でもほとんど変わることなく、当時の姿をそのままに残しています。城と堀が江戸時代のかたちのまま現存する城下町は全国でも珍しく、松江城周辺地区は「都市景観100選」にも選ばれています。

どこか懐かしく、見る人に癒しと安らぎを与える松江城下の風景は、堀川をめぐる遊覧船に乗って眺めることができます。ゆったりと揺られながら、四季折々の美しさを味わってみてください。

また、『松江城』は権威の象徴としての美しい城というよりも、戦を想定した実戦的な造りをしています。天守の地下には籠城用の物資を貯蔵するための倉庫が備えられ、なんと、飲み水を確保するための井戸まで完備していました。城内に井戸が存在するのも、現存天守では『松江城』のみです。さらには、外部の敵からは見つかりにくいよう工夫された石落としや、必要に応じて上げ下げ可能な、防火防腐のために桐でできた軽い階段なども備えられています。

織田信長(おだのぶなが)、豊臣秀吉(とよとみひでよし)、徳川家康(とくがわいえやす)のそれぞれに仕え、戦国の世を生き抜いてきた堀尾吉晴らしい城であり、堀尾吉晴の『松江城』に対する熱情がうかがえます。

『松江城』の人柱伝説から見る、『松江城』を現代に残した2人の城主

『松江城』にまつわる人柱の伝説をご存知でしょうか?
『松江城』築城の際、天守台の石垣が何度も崩れ落ち、完成を危ぶんだ城の人たちは、人柱を用意することを決意します。盆踊りを開催し、その中から最も美しく、最も踊りが上手であった娘が、人柱として選ばれました。この娘は踊りの途中でさらわれ、何の説明もなしに生き埋めにされたそうです。
石垣は積み上がり城も無事に完成しましたが、それ以降、天守ではすすり泣く声が聞こえるようになり、堀尾吉晴の急死は、娘のたたりではないかと恐れられたそうです。結果として堀尾氏は改易(かいえき・切腹より一段軽い刑罰で、武士の身分をはく奪し、領地や家屋を没収する刑)という運命をたどりましたが、人柱という苦肉の策は、なんとしてでも城を完成させたいという強い想いの表れだったのかもしれません。

この伝説に関連して、後に『松江城』の城主となる松平直政(まつだいらなおまさ)の、珍妙な逸話が残っています。松平直政が『松江城』に入城し、天守の最上階にある『天狗の間』に入ると、怪しい人影が現れます。人影は美しい女の姿をしていましたが、まるで鬼のような形相で松平直政を睨みつけると、「この城はわたしのものだ!」と言い放ちます。松平直政は即座に「では明日、“このしろ”をやろう」と返すと、三宝にのせたコノシロという食用の魚を『天狗の間』にそなえました。翌日、コノシロをのせた三宝は『天狗の間』のどこにもなく、後に三宝だけが祈祷櫓で見つかったそうです。これ以降、その人影が現れることは二度となかったと言います。

この逸話は、口が達者で機転がきく松平直政の人柄を表す物語として、語り継がれています。松平直政以降10代に渡って、堀尾吉晴が築いた『松江城』を守りました。この話から、どんな状況に直面しても頭を働かせてくぐり抜けられるような機転を利かせることの重要性を学ぶことができます。

ちなみに、逸話に登場する祈祷櫓の跡地は、『本丸内』に残っています。案内板が設置されていますので、ぜひ探してみてください。

桜の名所! 『松江城』へ行ってみましょう

『松江城』がある『松江城山公園』は、「日本さくら名所100選」に選ばれた、桜の名所でもあります。春には、ソメイヨシノやヤエザクラ、シダレザクラといったおよそ200本もの桜が咲き乱れ、『松江城』を淡い桜色に染め上げます。
また、天守閣の最上階にある望楼(遠くを見るための櫓)から眺める、宍道湖(しんじこ)をはじめとした松江の街並みも絶景です。ぜひ一度、訪れてみてはいかがでしょうか。

アクセスマップ

名 称:松江城(松江城山公園)
時 間:公園  入園自由
本丸  7時00分~19時30分(4月1日~9月30日)8時30分~17時00分(10月1日~3月31日)
天守閣 8時30分~18時30分(4月1日~9月30日、受付は18時00分まで)8時30分~17時00分 (10月1日~3月31日、受付は16時30分まで)

休 日:なし
料 金:入園無料。
登閣  大人560円、小・中学生280円
住 所:島根県松江市殿町1-5
電 話:0852-21-4030
※情報は変更されている場合があります。

監修者プロフィール
河合 敦(かわいあつし)
多摩大学客員教授。歴史研究家。1965年東京都生まれ。多数の歴史書を執筆するとともにテレビやラジオなどのメディア出演多数。
代表的な著書に『日本史は逆さから学べ!』(光文社知恵の森文庫)、『もうすぐ変わる日本史教科書』(KAWADA夢文庫)などがある。

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