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参道の長い階段で有名! パワースポットとしても人気の『金刀比羅宮』とは

『金刀比羅宮』ってどんなところ?

『金刀比羅宮』(ことひらぐう)は、香川県にある象頭山(ぞうずさん・標高521メートル)の中腹に位置する神社で、『こんぴらさん』の名で親しまれています。御本宮には日本神話に出てくる『大物主神』(おおものぬしのかみ)と『崇徳天皇』(すとくてんのう)がまつられており、全国にある『金刀比羅神社』(『琴平神社』(ことひらじんじゃ)、『金比羅神社』(こんぴらじんじゃ))の総本宮でもあります。

『金刀比羅宮』と言えば、御本宮まで続く参道の長い階段が有名です。御本宮のさらに奥にある『厳魂神社』(いづたまじんじゃ・奥社)までは、なんと1,368段もの石段を上ります。毎年10月の例大祭の頃に、この石段をコースに取り入れた『こんぴら石段マラソン』が開催されます。
石段を一段一段上がり365段目になると、ようやく『金刀比羅宮』の総門である大門に到達します。大門は、水戸光圀(みとみつくに)の兄・松平頼重(まつだいらよりしげ)から寄進されたもので、階上に掲げられた「琴平山」の額は有栖川宮熾仁親王(ありすがわのみやたるひとしんのう)によって書かれたものです。このあたりで、すでにかなりの標高があり、振り返ると眼下に讃岐平野を見下ろすことができます。

大門をくぐると、すぐ目に入る『五人百姓』の白傘が印象的です。五人百姓とは、『金刀比羅宮』の名物・加美代飴(かみよあめ)を売る5つの商店のことです。本来、『金刀比羅宮境内』での商いは許されていませんでしたが、この5つの商店だけは、昔から神事に尽くしてきたことから、特別に許可を得て商いをしています。

ここから先はしばらくなだらかな階段が続き、大門からさらに400段余りの石段を上った785段目、ついに御本宮へ到着となります。彼方に瀬戸大橋や讃岐富士を望む展望台からの眺めは絶景です。

御本宮にまつられているのは大物主神で、『金刀比羅宮』では古来より海上交通の安全を守る神として、信仰の対象となってきました。ほかにも、「五穀豊穰、大漁祈願、商売繁盛」などさまざまなご利益があり、近頃はパワースポットとしても注目を集めています。また、御本宮の神札授与所でしか手に入らない『幸福の黄色いお守り』が大変人気です。鮮やかな黄色は、魔除けや災い除けとして昔から重用された染料の鬱金(うこん)によるもので、持つ人の健康や幸せを願う気持ちが込められています。

ところで、東京のオフィス街の中央にも、大物主神と崇徳天皇をまつる『金刀比羅宮』があります。東京都港区にある『虎ノ門金刀比羅宮』です。神社はビルの敷地内、社務所はタワービルの一部分というように、ビル群と神社が一体化している何とも不思議な場所です。毎年1月1日~10日まで限定の福銭開運のお守りや、オリジナルの御朱印帳が人気を集めている『虎ノ門金刀比羅宮』へ興味があるかたはぜひ訪れてみてください。

『こんぴら狗』の逸話に学ぶ、犬に託された人々の想い

365段目の大門から150メートルほど続く石畳の道を『桜馬場』(さくらのばば)と言います。『桜馬場』をしばらく進んで青銅の鳥居をくぐり、さらに石段を数十段上がると『桜馬場西詰銅鳥居』(さくらのばばにしづめどうとりい)という大きな鳥居が現れます。その横に、『こんぴら狗』の銅像があります。

江戸時代、民衆の娯楽は良しとされず庶民の旅行は禁止されていました。しかし、神仏への参拝のための旅は宗教行為であったため、その限りではなかったのです。そのため、当時、参詣を名目として観光の旅に出かけることが庶民の一大イベントでした。中でも『伊勢神宮』への参拝の旅(お伊勢参り)は別格で、これに並んで讃岐の『金刀比羅宮』や京都の寺社参拝も、特別なものと考えられていました。

しかし、電車も車もないこの時代、江戸を中心とした東日本の各地からこれらの社寺へ旅をすることは、簡単なことではありませんでした。そのため、当人の代理として旅慣れた人に参拝を頼むことがあり、これを『代参』(だいさん)と言いました。
『金刀比羅宮』への代参としては、清水次郎長(しみずのじろちょう・本名は山本長五郎(やまもとちょうごろう))の代わりとして参拝した『森の石松』(もりのいしまつ)が有名です。
この代参、実は人の代わりに犬が行うこともあったのです。『金刀比羅宮』への代参(こんぴら参り)を任された犬のことは、特に『こんぴら狗』と呼ばれ、親しまれました。『こんぴら狗』は、飼い主から『こんぴら参り』と書かれた袋を首に託されます。袋の中には、飼い主の名前を記した木札や初穂料、道中の食費などが入っており、道中の旅人や街道筋の人たちに世話をしてもらいながら、無事目的地にたどり着いたと言われています。

携帯やゲームなどなく、現代に比べて娯楽が少なかったこの時代に、庶民にとって旅の持つ意味がどれほど大きかったかは、想像に難くありません。また、長旅は非常にお金がかかるものでもあったため、『金刀比羅宮』ほど遠くの地まで旅ができた人は、ごく裕福な人や一家の長くらいのものでした。人生に一度あるかないかの長旅の機会はまさに、夢の一大イベントだったのでしょう。そして、叶うことのない夢を、せめて代わりにという想いで、犬に託したのかもしれません。

当時の人々のことを思うと、現代の私たちがいかに恵まれた環境にいるかということを、ひしひしと感じます。御本宮まで785段、奥社までになると1,368段というなかなか大変な道のりではありますが、ぜひ楽しみながら、そして、当時の人々にも思いを馳せながら、石段を上がってみてください。

自然も楽しめる『金刀比羅宮』へ行ってみましょう

『金刀比羅宮』の御本宮への道のりの途中には、ほかにも書院や旭社など、見どころがたくさんあります。また、『宝物館』などの文化施設も必見ですし、「人混みに疲れた…」というときには、裏参道に入って、自然を楽しむのもおすすめです。
地元の名物・さぬきうどんで元気をつけて、じっくりと散策を楽しんでください。動きやすい靴や服装で出かけていくことを忘れないようにしましょう。

アクセスマップ

名 称:金刀比羅宮
時 間:御本宮:6時00分~18時00分(4月~9月は18時00分まで、10月~3月は17時00分まで)
奥社:8時00分~17時00分
休 日:なし
料 金:参拝無料
住 所:香川県仲多度郡琴平町892-1
電 話:0877-75-2121
※情報は変更されている場合があります。

監修者プロフィール
河合 敦(かわいあつし)
多摩大学客員教授。歴史研究家。1965年東京都生まれ。多数の歴史書を執筆するとともにテレビやラジオなどのメディア出演多数。
代表的な著書に『日本史は逆さから学べ!』(光文社知恵の森文庫)、『もうすぐ変わる日本史教科書』(KAWADA夢文庫)などがある。

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