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まるで竜宮城のような美しさ!? 潮の満ち引きによって姿を変える『嚴島神社』とは

『嚴島神社』ってどんなところ? 『高舞台』や『大鳥居』など見どころをご紹介

『嚴島神社』(いつくしまじんじゃ)は、広島県廿日市市(はつかいちし)宮島町にある神社で、全国に約500社あると言われる『嚴島神社』の総本社の位置付けです。満潮時、海に浮かんでいるように見える姿は日本三景のひとつに数えられており、1996年には世界文化遺産に登録されています。

創建は推古天皇(すいこてんのう)の治世であった593年で、佐伯鞍職(さえきくらもと)によるものと伝えられています。現在のような廻廊で結ばれた大規模な社殿は平清盛(たいらのきよもり)によるもので、平安貴族の屋敷の建築様式であった『寝殿造り』が取り入れられています。
『寝殿造り』とは、敷地の中心に寝殿(正殿)を配し、その東西に対屋、前面に舞や儀式などを行う庭、庭の先に池を設け、寝殿と対屋を廻廊で結んだ対称形が特徴的です。『嚴島神社』は瀬戸内海を池に見立て、神社建築の中に平安貴族の『みやび』を巧みに取り入れた、究極の日本建築だと言えます。

『嚴島神社』を訪れると、まず目に飛び込んでくるのが、『嚴島神社』の特徴とも言える朱色の廻廊です。幅約4メートル、長さ約275メートルにも及ぶ壮大な規模で、名社の威厳を感じさせます。床板には、板と板の間に目透しという隙間が作られており、潮が満ちてきた時の海水の圧力を弱める工夫がなされています。

湾の最も奥まった場所には、北西を正面として、『市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)・湍津姫命(たぎつひめのみこと)・田心姫命(たごりひめのみこと)』の三女神がまつられている本殿が建っています。
そして、本殿の前方には、『寝殿造り』の庭にあたる『平舞台』、その中央に舞楽の奉納などに使用された『高舞台』が配されています。社殿の他の部分は木造の柱に支えられていますが、『平舞台』の部分は、戦国時代に毛利元就(もうりもとなり)によって寄進されたといわれる、赤間石(あかまがいし)という石の柱によって支えられています。
また、『高舞台』は、1546年に棚守房顕(たなもりふさあき)によって造られたものが、江戸時代初期に現在のかたちになりました。『本殿、平舞台、高舞台』は、国宝に指定されています。

『平舞台』の先端、最も海側の桟橋上に細く突き出た部分を『火焼前』(ひたさき)と呼びますが、『火焼前』の延長線上に88間(約160メートル)の距離を置いて、海面にそびえ立つのが『大鳥居』です。高さは奈良の大仏とほぼ同じ約16メートル、支柱の周囲は約10メートル、重さは約60トンで、驚くことにこの『大鳥居』は、これだけの規模を誇りながら自重だけで建っているそうです。
その構造の工夫のひとつが、鳥居上部の『島木』という部分を箱型に造り、空間にこぶし大の石を重石として詰めるというものです。海底深くに埋められているわけでもないのに、地震や台風にも耐えてきた頑丈な造りからは、当時の人たちの知恵と、技術力の高さがうかがえます。

満潮時、社殿から眺める海に浮かぶ『大鳥居』の姿は絶景ですが、干潮時に『大鳥居』のそばまで歩いて行って、圧巻の規模を体感するのもおすすめです。

人と神々が共に生きる島『宮島』 『嚴島神社』と人々とのかかわりから学ぶこと

『嚴島神社』の社殿は、海域にせり出すようなかたちで建造されていますが、海を敷地にするという大胆な発想は、世界でも類を見ないそうです。このような発想が生まれた背景には、当時の人々の島への信仰心があります。

『嚴島神社』がある島は、『宮島』の名で知られていますが、古くは『伊都岐(いつき)島』と言います。その語源が「神をいつきたてまつる島」、「心身を清めて神に仕える島」であることから、当時の人々が島そのものを御神体として崇めていたことが分かります。神聖な場所に手をつけることを避けて、わざわざ浜に社殿を建てたのです。

平清盛や毛利元就、豊臣秀吉(とよとみひでよし)などの名だたる武将から崇敬され、繁栄を続けてきた『嚴島神社』ですが、その長い歴史の中では、幾度となく自然災害や火災に見舞われています。
しかしその度に、人々の篤い信仰心によって修理・再建が行われ、平安の麗しい姿を今日に残しています。そして現在でも、『嚴島神社』を守り後世に伝えるため、海水による腐食の点検・修復、藻の清掃作業や砂州の地ならしなど、日々細やかな手入れがなされています。

『嚴島神社』の『大鳥居』を見に行ってみましょう

自然そのものを神と崇めた日本古来の信仰のかたちをそのままに残し、自然美と人工美を見事に融合させた『嚴島神社』は、潮汐(ちょうせき)によってその姿を変えます。『嚴島神社』を訪れる際には一度、満潮時・干潮時の情報などを観光協会のサイトで確認してから行くとよいでしょう。
また、『嚴島神社』を訪れた際にはぜひ、『嚴島神社宝物館』にも足を運んでみてください。国宝「平家納経」をはじめとした貴重な美術工芸品は必見です。『嚴島神社』との共通割引券を購入しておくと大変お得です。

アクセスマップ

名 称:嚴島神社
時 間:1月1日は0時00分~18時30分、1月2日~1月3日は6時30分~18時30分、1月4日~2月末日・10月15日~11月30日は6時30分~17時30分、3月1日~10月14日は6時30分~18時00分、12月は全日6時30分~17時00分
宝物館は1年を通して8時00分~17時00分
休 日:なし
料 金:嚴島神社・宝物館ともに大人300円、高校生200円、小・中学生100円(共通割引あり)
住 所:広島県廿日市市宮島町1-1
電 話:0829-44-2020
※情報は変更されている場合があります。

監修者プロフィール
河合 敦(かわいあつし)
多摩大学客員教授。歴史研究家。1965年東京都生まれ。多数の歴史書を執筆するとともにテレビやラジオなどのメディア出演多数。
代表的な著書に『日本史は逆さから学べ!』(光文社知恵の森文庫)、『もうすぐ変わる日本史教科書』(KAWADA夢文庫)などがある。

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