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国宝犬山城とは?犬山城にかかわる4つの歴史の流れと特徴を解説

国宝犬山城とは?

犬山城は、愛知県犬山市にある平山城というタイプのお城です。現在も築城当時に近いとされる姿を残しており、天守閣は日本最古の様式。平山城とは、平地にある丘や小さな山に建築されたお城のことを指します。

犬山城は、望楼型三重4階地下2階という構造で、簡単にいうと地下2階と地上4階の合計6フロアの建物。4階は望楼といって、遠くを見渡せるようになっています。犬山城が位置しているのは木曽川の南岸、標高85メートルの崖の上。背後は断崖絶壁ですので、攻め入ることが難しい天然の要塞といえます。

犬山城のように、築城当時の天守を残しているお城は非常に貴重です。日本のお城のほとんどは、戦国の戦乱や明治期の廃城、その後の戦争等で失われています。

別名白帝城と呼ばれる理由

犬山城は別名「白帝城」(はくていじょう)と呼ばれています。白帝城と呼ばれるようになったのは江戸時代。荻生徂徠(おぎゅうそらい)という儒学者が、中国の詩人李白(りはく)の詩にちなんでネーミングしたといわれています。

なお犬山城以外のお城にも別名があります。

  • 国宝姫路城……白鷺城(しらさぎじょう)
  • 国宝彦根城……金亀城(こんきじょう)
  • 国宝松江城……千鳥城(ちどりじょう)

犬山城に関わる4つの歴史の流れ

築城主は織田信康

犬山城を築城したのは織田信長(おだのぶなが)の叔父織田信康(おだのぶやす)です。彼は元々暮らしていた「木之下城」を廃して、1537年に木之下城の城郭を現在の犬山城の場所に移築しました。現在残っている天守の2階部分までが織田信康の時代に建造されたものです。

犬山城は当時の交通の要衝である中山道と木曽街道、木曽川に通じる場所に建てられており、重要な拠点でした。

本能寺の変までの城主と歴史

【本能寺の変までの城主】

  • 織田信清
  • 池田恒興

1547年、織田信長の父織田信秀(おだのぶひで)による、美濃への出兵で城主織田信康は死亡。信康の子、織田信清(おだのぶきよ)が犬山城の城主になります。ところが織田信清と織田信長が対立し、織田信清は追放されました。そこで城主になったのが池田恒興(いけだつねおき)です。池田恒興は織田信長の乳母の子どもで、信長とは乳兄弟です。後に織田家4宿老と呼ばれる重臣になります。

関ヶ原の戦いまでの城主と歴史

【本能寺の変後から関ヶ原の戦いまでの城主】

  • 中川定成
  • 池田恒興・羽柴秀吉の入城
  • 土方雄良
  • 三好吉房
  • 小笠原吉次


1582年、本能寺の変により織田信長が死亡すると、犬山城の城主は織田信長の次男、織田信雄(おだのぶかつ)の配下中川定成(なかがわさだなり)が務めます。ところが織田信長亡き後の織田家は、後継者争いで揺れていました。

とうとう1584年には羽柴秀吉(はしばひでよし)と徳川家康(とくがわいえやす)・織田信雄が対立して「小牧・長久手の戦い」が勃発しました。犬山城は徳川家康・織田信雄側の拠点ということになります。

ところが、かつての城主であった池田恒興が織田方から羽柴方に寝返るのです。そして、城主中川定成の留守中に、木曽川から犬山城に侵入して城を奪いました。犬山城には羽柴秀吉が入城して、羽柴と徳川のにらみあいが継続します。最終的には和解が成立して、犬山城は織田信雄に返されました。城主は織田信雄の近臣土方雄良が任じられます。

その後、羽柴秀吉が天下を統一すると羽柴秀吉の姉の夫三好吉房が城主になりました。
そして天下分け目の関ヶ原の戦いで徳川側が勝利をおさめると、徳川家康の四男松平忠吉の筆頭家老小笠原吉次(おがさわらよしつぐ)が犬山城主になりました。

これ以降は徳川家の家臣が犬山城の城主を務めることになります。小笠原吉次の後には平岩親吉(ひらいわちかよし)が城主に任じられました。平岩親吉が死亡してからしばらくは城主が不在になります。

江戸時代から明治時代の城主と歴史

関ヶ原の戦い、大坂冬の陣・夏の陣を経て太平の世の中になった江戸時代、1617年に徳川家の重臣成瀬正成が犬山城を拝領します。以後明治維新まで成瀬家が代々犬山城の城主を務めました。成瀬正成は小牧・長久手の戦いで手柄を絶てた人物で、尾張(現在の愛知県)の政務を担当していました。

成瀬正成の入城により天守が改築されて今の姿になったと言われています。

明治維新後、廃藩置県が行われ藩主が住む城はすべて廃城とされました。犬山城も例外では鳴く、櫓や城門といった天守以外の重要な構造物が取り交わされ、犬山城は愛知県の所有になります。ところが1895年に濃尾地震(のうびじしん)が発生。天守が半壊してしまいました。

そこで修復することを条件に旧城主の成瀬家に犬山城が譲渡されました。地震の被害は、成瀬家と犬山町民が集めた義援金によって修復されています。

犬山城が国宝に指定されたのは昭和10年のこと。以後一度国宝から外されていますが昭和27年に再度国宝に指定されました。

そして2004年に公益財団法人犬山城白帝城文庫の所有になるまでは、成瀬家個人が所有していました。日本には犬山城以外の他に4つの国宝のお城がありますが、個人が所有していたのは犬山城のみです。

犬山城の特徴

犬山城は背後の断崖に守られている「後堅固の城」(うしろけんごのしろ)です。犬山城は、城郭だけでなく、城下町と一体になった「総構え」(そうがまえ)という構造で、外敵の侵入を容易に許しません。

1階部分と2階部分は築城当時の建造物が残っているとされており、およそ500年前の建築を間近で観覧できます。犬山城はその気品ある佇まいだけでなく、天守からの景色を楽しめるお城。かの織田信長も感動したと言われている365度の絶景は必見です。

また犬山城の1階には石落としと呼ばれる、石垣から飛び出している構造物があり、そこから石を落として石垣を登る敵を防いだといわれています。

城内には「大杉様」(おおすぎさま)と呼ばれる巨大な杉の木もあります。これは犬山城が築城された頃から生えている杉の木です。残念ながら1965年に伊勢湾台風の際の落雷により枯れてしまいましたが、杉の木が犬山城の身代わりになってくれたとして地元住民に祀られ、今も残っています。

犬山城の麓には三光稲荷神社(さんこういなりじんじゃ)と呼ばれる由緒ある神社で、ピンクのハート型の絵馬が観光客に人気を集めています。犬山城を見学する際に足を伸ばしてみるとよいでしょう。

犬山城周辺で歴史を学べるスポット

有楽苑

犬山城の近くの日本庭園「有楽苑」(うらくえん)には国宝の茶室「如庵」(じょあん)と重要文化財に指定されている「旧正伝院書院」などがあり趣深く見応えのあるスポットです。如庵は織田信長の実弟織田有楽斎(おだうらくさい)が建てた茶室を移築したもので、「国宝茶席3名席」に数えられています。

明治村

博物館明治村は、レトロな建物が目を引くテーマパークです。テーマパークながらも、多くの重要文化財がありますので、楽しく歴史を学べます。日本最古級の蒸気機関車の体験乗車やハイカラ衣装体験など、子どもも大人も楽しめる施設です。

犬山城から学べること

犬山城が教えてくれることは、歴史ある建造物が現代まで残されていることの尊さです。戦国期には多くの天守を持つ城が築造されましたが、江戸時代に制定された一国一城令により居城以外の全ての城を取り壊すことになったのです。

さらに明治期には廃藩置県による廃城、昭和に入ると第2次世界大戦による焼失などで、多くの天守が失われました。

犬山城もいくたびの困難を乗り越えて、今なお美しい姿を私たちに見せてくれています。戦国時代の戦乱期、地震や台風といった日本の自然災害を生き延び、江戸を経て戦争を乗り越えた城は日本全国で12城に過ぎません。

犬山城は、個人が所有していたことからその維持管理に非常に苦労したと言います。また相続のたびに多額の相続税を、牧瀬家個人が負担してきました。

このように、私たちがなにげなく目にする歴史的建造物の多くは、さまざまな困難を乗り越えて現代まで受け継がれました。歴史ある建物を見つけたときは、「どうやってこの時代まで残したのだろう」と考え、先人の苦労に思いをはせてみましょう。

犬山城観光後は「犬山城下町」の散策へ行ってみましょう

犬山城を見学したら、犬山城下町も散策してみましょう。犬山城下町は、外周を堀や土塁で取り囲まれた総構えの城郭を当時のままに残してある風情ある町並みです。

犬山城を見上げる木曽川では、木曽川鵜飼いが有名。ライトアップされた犬山城を背景に、夜の川でくりひろげられる鵜飼いは必見です。

桜の名所としても有名ですので、桜の季節は駐車場の確保が困難になると想定されますので、公共交通機関の利用をおすすめします。

アクセスマップ

名 称:国宝犬山城
時 間:9時00分~17時00分(最終入場:16時30分)
休 日:12月29日~31日
料 金:大人550円・小中学生110円
住 所:愛知県犬山市犬山北古券65-2
電 話:0568-61-1711
※情報は変更されている場合があります。

監修者プロフィール
門川 良平(かどかわ りょうへい)
教育コンテンツ開発者。教材編集者・小学校教員・学習事業のプロデューサーを経て、現在は、すなばコーポレーション株式会社代表としてゲーム型ワークショップや学習漫画、オンライン授業などの開発を行う。オリジナル開発したSDGs学習ゲームなどの教育コンテンツを軸に日本各地の自治体と連携を進めている。

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