「卑弥呼」の正答率は99%、福井県・徳島県の位置は39%――こんな調査結果が、新聞各紙で大きく取り上げられました。文部科学省のシンクタンク「国立教育政策研究所」が発表した、
小・中学生の社会科についての調査です。これを見て、「ああ、学力低下の話だね。国語や算数だけじゃなく、社会科でもそうなのか」と思ったかたもいらっしゃるかもしれません。しかし、そればかりではないのです。よくよく見てみると、これからの授業がどう変わっていくのかがわかる、そんな調査になっているのです。
まず、「
特定の課題に関する調査(社会)結果のポイント」をクリックしてみてください。最初に、「(1)社会科における基礎・基本となる知識・概念と(2)問題解決的な学習に焦点を当てた調査を実施」とあります。新聞などで大きく取り上げられた、歴史上の人物や、都道府県の位置を答えさせる問題は、(1)に当たります。それと並んで、(2)を出題するという2本立てとなっています。
もうおわかりだと思いますが、昨年から国語と算数・数学について実施されている
全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の「A問題」(知識)、「B問題」(活用)と、同じ構成です。つまり、基礎的な知識や概念を覚えることとともに、さまざまな資料から課題を取り出したり、自分の考えを示したりすることも、負けず劣らず重要視されているのです。
たとえば、こんな問題はどうでしょうか。あるクラスで、新交通システムについて調べ、身近な地域の問題を考えたという例を示しています。そこで、こう質問します――「あなたの住む市(区、町、村)にも、(略)同じように、政治の働きで解決しなければならない、問題はありませんか」。さらに、その解決策まで提案するよう求め、提案を納得してもらえるようなアピール文まで書かせる、といった念の入れようです。ここでもまたお気付きのかたも少なくないと思いますが、こうした問題は、代表的な国際学力調査である「
PISA」(経済協力開発機構=OECD=の「生徒の学習到達度調査」)を意識したものと言えます。
(1)の知識・概念の問題でも、ちょっと気にかかる結果が出ています。たとえば、「国民主権」については、中学3年生で通過率(正答率)は60%を超えました。しかし、いま話題となっている「社会保障制度」についての正答率は、説明から用語を答えさせる問題では30%ほど、概念から用語を答えさせる問題では20%ほどしかありません。「社会権」「公共の福祉」などと混同した誤答が少なくなかったといいます。調査したのは2007(平成19)年の1〜2月ですが、遠くない将来に有権者となるべき子どもたちが、自分たちの問題として降りかかってくる社会保障制度への理解が不十分であったのなら、どうなるでしょう。
人物名や県名などについても、同研究所では、年表を作らせたり、白地図上で作業をしたりしながら理解させることをすすめています。今でもそうなのですが、社会科は単なる暗記科目ではなく、子どもたちを民主的な国家・社会の一員にしていくための教科であり、そうした学習の実施が、
新しい学習指導要領の下でも具体的に求められることになるのです。