大学に「9月入学」が一部導入される見通しになりました。従来の4月入学を原則としながらも、文部科学省は今年度中に学校教育法施行規則を改正し、全部の国立大学に9月入学枠を設けることにしています。
また、私立大学にも補助金を増額するなどの誘導措置を取り、9月入学の実施を求めていくことになりました。
これは、政府の
教育再生会議第二次報告を受け、政府の政策や予算編成などの指針となる今年の
「骨太の方針」(経済財政改革の基本方針2007)に盛り込まれたものです。
世界的に見れば、欧米を中心に学校は9月入学が主流で、日本のような4月入学は少数派です。世界の流れに合わせて日本の学校も9月入学にすべきという意見は昔からあり、1984(昭和59)年に設置された首相直属の臨時教育審議会では本格的な9月入学への移行が検討されました。
しかし、当時の世論の大半は9月入学に反対を示し、大学の判断により年度途中でも学生を入学させることができるという制度の弾力化が図られただけで終わりました。
これに対して、教育再生会議が示した9月入学は、大学・大学院に限って導入し、高校以下は従来どおりとしたことがポイントです。
骨太の方針では、欧米と始業時期を同じにすれば海外からより優秀な留学生を集めやすくなり、日本の大学の国際競争力を高めることができるとしています。
ところで、教育再生会議が大学の9月入学を検討課題に取り上げたのは、規範意識や勤労意欲を若者にもたせるために「日本版ギャップイヤー」を導入したいと安倍晋三首相が要請したことが発端でした。
ギャップイヤーとは英国などで実施されている制度で、大学入学が決定したあと、高校を卒業してから1年間程度、社会的見聞を広めるため、職業体験・ボランティア活動・長期旅行など多様な体験を積むものです。
安倍首相らは当初、大学卒業者の間でもフリーターやニートなどが増加していることを受け、高校卒業から大学入学までの数カ月間にボランティア活動や奉仕体験などを義務付けることを構想していました。
しかし、すべての大学を9月入学にするのは問題も多いため、4月入学を原則としつつ、9月入学を拡大するという方針に落ち着きました。
このため、優秀な留学生を集めるという大学の国際化と、若者に規範意識などを身に付けさせる「日本版ギャップイヤー」構想の両方が、ほとんど整理されないまま教育再生会議で提案され、骨太の方針に盛り込まれたと言ってよいでしょう。
実際、すべての国立大学に9月入学枠が設けられれば、その分4月入学定員が減るわけですが、4月入学と9月入学の大学入試を分けるのか、高校卒業から大学入学までの期間の体験活動をだれがどうサポートするのか、9月入学者が大学を卒業したときに円滑に企業に就職できるのかなどの課題は、今のところ全く検討されていません。
2007(平成19)年度中に国立大学全部に9月入学枠を設けるよう制度改正することは政府の方針として決まりましたが、それが日本の高校生たちにどんな影響を及ぼすのかは、今後の文科省と各国立大学の検討次第というのが現状です。