次々と決定された子育て世帯向け政策、教育費の準備はどう備えるべきか
2017(平成29)年11月、2兆円を使った政策の骨格が発表され、8,000億円が幼稚園・保育所の無償化に充てられることになりました。子育て世帯にとってこれからどうなるのか気になるのは幼児教育無償化と高等教育無償化の詳細。
今回は、内閣官房人生100年時代構想推進室や文部科学省が公開している資料をご紹介しながら、子育て世帯がやるべき教育費の準備方法を考えてみましょう。
「子育てや教育費にかかる費用が少子化の要因の一つ」
資料の中に、予定している子どもの数が理想の数より少ない妻に、その理由を聞いたアンケートがあります。30歳未満では76.5%、30~34歳は81.1%が「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」という回答です。他の回答、たとえば、「家が狭いから」「自分の仕事に差し支えるから」など、他の選択肢を圧倒的に引き離しています。
さらに、「どのようなことがあれば、あなたは(もっと)子供が欲しいと思うと思いますか」とのアンケートでは、「将来の教育費に対する補助」が68.6%となっており、「幼稚園・保育所などの費用の補助」が59.4%となっています。決定された幼児教育無償化は、世帯の収入に制限なく補助の対象となるのは、少子化対策への一歩前進といえますが、注意点があります。それは、3歳から5歳が補助の対象であれば、一番保育料が高くなる0歳から2歳までは、これまでどおり自分で負担する必要があるということです。共働き世帯の負担がまったくなくなるわけではないのです。
0歳から2歳ころまでは、病気になったりけがをしたりで、早めのお迎えや欠席なども多くなる時期ですので、その間、シッターに頼んだり、病児保育などのオプションのサービスを利用したりするのも、もちろん料金は自分持ちになりますから、その間は働いてもなかなか貯蓄は難しくなることが予想されます。
「大学の負担軽減策には数々の問題が浮かんでくる」
日本は先進国でありながら、子どもの7人に1人が貧困であるというデータがあります。
せっかく学ぶ意欲があったとしても、公立の学校に通学して勉強しただけで、希望の大学まで進学できたというのは、まず聞きません。
つまり、学校以外の勉強方法にお金をかけないと、希望の学校にはほとんど進学できないという現状が見受けられます。ところが、検討されている大学生の負担軽減策にはさまざまな課題が考えられます。高等教育を住民税非課税世帯に限って無償化し、給付型奨学金の金額を引き上げて当該世帯の子どもに必要な生活費をすべて賄えるようにするそうですが、学生の遊興費まで生活費に含まれるのか、食事代や衣服代まですべて入るのか、学業で十分な成果を上げていない学生にまで、返還不要の奨学金を給付するのか、線引きがどこまでできるのかが疑問です。そもそも、希望の学校に入学するための教育費にまったく注目が集まっていないことは明白です。
「給付型奨学金と所得連動返還型奨学金、どちらが現実的なのか」
2017(平成29)年4月から、日本学生支援機構では、新しい所得連動返還型奨学金の制度が始まっています。これから、給付型奨学金ができるといっても、原則として給付型の奨学金が利用できるのは非課税の家庭に限ることを考えると、大学に進学する際、「足りなければ借りればよい」という安易な発想は危険です。
「借りる」ということには工夫と知恵が必要となりますので、所得連動返還型の奨学金についても知っておくことが現実的といえるでしょう。毎年申請する必要がありますが、最低返還月額を2,000円に抑えられるということで、返還金の負担を軽減しつつ、回収金を確保するという観点から創設された工夫がうかがえますが、もともと無利子である第一種奨学金を借りるには、学力などいくつかの条件があります。
奨学金を借りるということになれば、どの奨学金が借りられるのか、返還するときには、どんな返還プランにするのか、しっかりと子どもに「借りるには返す必要がある」ことを覚悟させるべきです。卒業後の生活は、働いて得た収入の中から、奨学金の返還だけをすればよいのではなく、さまざまな支出、たとえば健康保険や年金など公的保険等も納付する必要が出てきます。また、就職先を地方でもよいと考えた時には、労働人口を増やして定着させたい思惑のある地方自治体が募集している「返還支援制度」の利用も視野に入れてみましょう。2017(平成29)年11月の時点で、基金を設立して募集している県は20、市区町村は15あります。
人生100年時代を見据えた経済・社会システムを実現するための政策のグランドデザインに係る検討を行うため、「人生100年時代構想会議」が設置され、子ども向けの幼児教育無償化や高等教育無償化の方向が見えてきました。そこで、今後の教育費の準備方法としては、幼児教育が全額無償となる3歳から5歳の間には、できるだけ多くの教育費を貯蓄して、できればそのまま小学生くらいまではしっかりと貯蓄体質の家計にしておくこと、そして、大学進学前までの塾通いの費用と受験費用は入学後の費用と分別してしっかり確保しておくこと、この2点がより求められるといえるでしょう。
出典:
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/jinsei100nen/dai2/siryou.html