減る日本人の睡眠時間、子どもにも影響

厚生労働省の2015(平成27)年「国民健康・栄養調査」によると、20歳以上の日本人のうち睡眠時間が「6時間未満」の者の割合は調査開始以降、最多となりました。他の国際比較調査でも、日本は睡眠時間が最も短い国の一つといわれています。このような状況は、子どもたちにも大きな影響を及ぼしているようです。

6時間未満が過去最多に

20歳以上の日本人の1日の平均睡眠時間は、「6時間以上7時間未満」が34.1%で最も多くなっています。しかし、睡眠時間が「5時間未満」の者は8.4%、「5時間以上6時間未満」は31.1%で、合計すると39.5%となり、日本人の約4割は6時間未満しか睡眠をとっていないことになります。睡眠時間は、2008(平成20)年調査以降から年々減少しており、「6時間未満」の者の割合は、03(同15)年の調査開始以降で最多となりました。

睡眠時間が「6時間以上7時間未満」という者の割合は、2008(平成20)年でも35.8%あり、大きな変化は見られませんでした。それに対して、「7時間以上8時間未満」は2008(平成20)年の23.0%から2015(同27)年には18.5%に、「8時間以上9時間未満」も8.5%から5.9%に、それぞれ減少しています。つまり、「6時間以上7時間未満」の睡眠をとっている者の割合はあまり変化していない一方、7時間以上の睡眠をとる者の割合が減少し、代わりに睡眠時間が6時間未満の者が増えているということになります。

睡眠を妨げている理由を尋ねたところ、「特に困っていない」と「その他」を除くと、20〜50代男性は「仕事」、20代女性は「就寝前に携帯電話、メール、ゲームなどに熱中すること」、30代女性は「育児」、40代女性は「家事」がそれぞれトップとなっています。睡眠時間が6時間未満のうち「日中、眠気を感じた」という者は、男性で44.5%、女性で48.7%もいました。

日本人の睡眠時間の短さは、国際比較調査などでも明らかになっており、日本は世界でも有数の「眠らない国」となっているようです。

もう一度「睡眠」の役割を見直そう

問題は、このような大人の睡眠時間の短さが、子どもたちにも影響を及ぼしていることです。たとえば、深夜のコンビニに子ども連れの家族がいるのは、もう珍しい風景ではありません。また、文部科学省が2014(平成26)年に実施した調査によると、中学生の22.0%、高校生の47.0%が午前0時以降に就寝している他、中学生の24.8%、高校生の31.5%が「睡眠時間が十分ではない」と答えています。

睡眠は、眠っている間に分泌される成長ホルモンにより、疲労回復や、けがの治りを早くするなどの効果の他、学習した内容を脳の中で整理・定着させるなどの機能を果たしています。慢性的な睡眠不足は、情緒の不安定、判断力の低下などの他、うつ状態を招きやすくなるなど「こころの健康」にも悪影響を及ぼします。文科省は、睡眠を中心とした生活習慣改善のための啓発資料なども作成しています。

「眠らない国」となりつつある現在、子どもたちの心身の健康のために、大人たちも「睡眠」の重要性について、もう一度じっくり考えてみることが必要なのではないでしょうか。

※平成27年「国民健康・栄養調査」の結果
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000142359.html

※「早寝早起き朝ごはん」中高生等向け普及啓発資料及び指導者用資料
http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/katei/1359388.htm

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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