小中学校で障害児の保護者付き添い、「合理的配慮」で論議も‐斎藤剛史‐

文部科学省の実態調査で、公立小中学校に在籍する障害のある子どもたちの保護者のうち、日常的に学校生活に付き添っている者が約1,900人いることが明らかになりました。といっても、これだけでは何のことかわからない読者のかたが多いと思います。実は、2016(平成28)年度から施行される障害者差別解消法の中で、一般の小中学校に通う障害児に対する保護者の付き添いが問題の一つとなりそうなのです。

現在、一般の学校に在籍する障害のある子どもが介護や支援などを必要とする場合、学校が保護者に付き添いを求めたり、付き添いを学校への受け入れの条件としたりするケースがあります。学校の人手が足りないため、肢体不自由児の排便などの介助、発達障害児の代筆など学習支援やパニック時の危険防止などを教員が行うと、その間、他の子どもたちが放置されることになり、正常な授業などができなくなるという理由です。一方、当コーナーでもお伝えしたように2016(平成28)年度から障害者差別解消法が施行され、公立学校には障害がある子どもたちへの「合理的配慮」の提供が義務付けられることになっています。そして、この「合理的配慮」の範囲が問題となってくるわけです。

保護者にとって、学校での日常的な付き添いは負担が重く、仕事に就くこともできないため、付き添いを必要としないように「合理的配慮」を求めます。逆に学校は、教員や特別支援員などの人員増は財政的に困難なため、「合理的配慮」の対象にはならないという考え方を取ることになります。文科省は、障害者差別解消法の施行に当たり、保護者に付き添いを求めることができるかどうかが、「(公立学校の)合理的配慮の提供において一つの論点となる」との認識を持っており、その対応を検討するため、まず付き添いの実態を把握しようというねらいで今回の調査を実施しました。
調査結果によると、公立小中学校において日常的に子どもの付き添いをしている保護者は全国で1,897人で、そのうちたんの吸引など医療的ケアを行っている保護者が20%、それ以外が80%でした。医療的ケア以外の付き添いの内容を見ると、食事や排泄(はいせつ)などの介助が34%、代筆など発達障害児の学習支援が22%、攻撃や自傷など危険行動に対する安全確保が20%、不安解消などその他が23%などとなっています。

小中学校の特別支援学級には現在、小学校で約12万9,000人、中学校で約5万8,000人の子どもたちが在籍しています。1,897人の保護者の付き添いは、数字的にはごく少数で大きな問題ではないように見えます。しかし、先に指摘したように障害者差別解消法の施行で、一般の小中学校に入学を希望する障害児は増えると予想されます。その際、学校は「合理的配慮」としてどこまで対応すべきなのかが、大きな課題になってくるのは確実でしょう。レアケースとも見える付き添い問題の背景には、小中学校は障害のある子どもたちにどこまで配慮すべきなのかという、意外に大きな問題があることを一般の保護者も知っておく必要があると思われます。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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