保護者の「叱咤激励」空回り? 子どもの能力向上に関連見られず

子どものしつけはなるべく優しく……と思っていても、何度言ってもできない時や忙しい朝などは、ついつい叱ることも多くなります。叱るのも「もっとがんばれ」と励ますのも、子どものためを思えばこそ。ところが、そんな「叱咤(しった)激励」的な子育てでは、社会生活を送るために必要な力があまり身に付かないということが、独立行政法人国立青少年教育振興機構の調査結果でわかりました。

調査は2012(平成24)年9~10月、全国の公立の小学4~6年生、中学2年生、高校2年生の子どもと、小学4~6年生の保護者を対象に実施し、子ども役1万7,000人と保護者約7,800人から回答を得ました。調査では、社会生活のために必要な力を「コミュニケーションスキル」(初めて会った人に自分から話しかけるなど)、「礼儀・マナースキル」(ありがとう・ごめんなさいを言うなど)、「家事・暮らしスキル」(洗濯物をきれいにたたむなど)、「健康管理スキル」(夜更かしをしないなど)、「課題解決スキル」(目的達成に向けて努力するなど)の5分野に分けて、保護者の接し方と子どものスキル習得の関係を調べました。

まず、子どもにもっとがんばりなさい、しっかり勉強しなさいなどと言う「叱咤激励」的接し方をよくする家庭における「コミュニケーションスキル」が高い子どもの割合は30.2%、時々するという家庭は30.0%、あまりしないという家庭は30.2%で、ほとんど差が見られませんでした。「礼儀・マナースキル」の高い子どもの割合も、叱咤激励をよくする家庭は57.9%、時々する家庭は58.3%、あまりしない家庭は59.0%で、やはり差があまりありません。ほかの分野のスキルもほぼ同じです。つまり子どもを叱咤激励しても、生活スキルの習得にはほとんど結び付かないということになります。どうやら、子どもに対する叱咤激励は、保護者の空回りやひとり相撲に過ぎないようです。

一方、生活スキルの能力が高い子どもの割合に大きな違いが見られたのは、勉強以外の体験を積極的にさせたり、子どもをほめたり、自分の体験を話したりするなどの「体験支援」的接し方をしている家庭でした。たとえば、「礼儀・マナースキル」が高い子どもは、体験支援的接し方をよくしている家庭は63.8%、時々している家庭は59.0%、あまりしていない家庭は52.9%となっています。また「課題解決スキル」が高い子どもは、体験支援的接し方をよくしている家庭が52.7%、時々している家庭が49.2%、あまりしていない家庭は41.9%でした。このほか、きちんとあいさつさせる、早寝早起きさせるなど「生活指導」的な接し方では、「健康管理スキル」の高い子どもの割合は、よくしている家庭が34.8%、時々している家庭が25.4%、あまりしていない家庭が16.4%などとなっており、接し方の度合いにより一部の生活スキルで習得状況の違いが見られました。

社会生活を送るのに必要な力を子どもに身に付けさせるためには、小言を言いながら励ますよりも、保護者自身が手本を示したり、さまざまな体験を子どもにさせたり、きちんとした生活習慣を実行させたりすることのほうが、実はより効果的といえそうです。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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