大学入試、既に変わりつつある? 「高大接続」先取り

一発勝負・1点刻みの大学入試を抜本的に変えようという国の検討が、着々と進んでいます。劇的に変わるのは今の中学1年生からですが、その前にも個別大学の入試が変わる可能性が高いことは、これまでも指摘してきました。しかし実は、答申の提言を先取りしたような取り組みは既にあります。そんな一端が、高大接続改革の具体策を検討する文部科学省の有識者会議で浮き彫りになりました。

文部科学省の「高大接続システム改革会議」の第2回会合では、東北・九州・早稲田・追手門学院の国私立4大学の事例が発表されました。いずれも大学関係者などからは注目されていた取り組みですが、高校生などはこれらの大学を受験しようと考えない限り、あまり関心を向けなかったかもしれません。

東北大学は、九州大学や筑波大学とともに国立大学でいち早く2000(平成12)年度からAO入試を導入し、現在では入学定員の5人に1人近くにまでになっていますが、高校の成績や大学入試センター試験で、必要な学力をしっかり問うのが特徴です。同大を第1志望とする学生に受験機会を提供するというのが趣旨で、あくまで受験生には一般入試を最終目標に学力の修得を求め、特別な対策は不要だといいます。

九州大学はAO入試の入学生が7.6%にすぎませんが、その中でも特色があるのが1%分に当たる「21世紀プログラム」入学者です。入学後は学部・学科に関係なくオーダーメードのカリキュラムで広く学べるプログラムのため、それに見合った入学生を選抜しようと、大学が求める学生像に従って書類選考をくぐり抜けた受験生を対象に2日間にわたって行われる第2次選抜では、実際の講義を受けてからレポートをまとめさせたり、グループ討論・小論文・面接を課したりする丁寧な選抜で合格者が決まります。

早稲田大学では一般入試のほか自己推薦・AO・指定校推薦・センター利用など、さまざまな入試形態がありますが、これらは日本各地や世界からバランスよく多様な学生を入学させ、勉学に励む場にしようという意図があるといいます。13学部中6学部が実施しているAO入試の入学者は、入学後の成績も高いのだそうです。

このように3大学では、入学後の教育を想定しながら質の高い入学生を選ぼうとしていますが、今や高校生の2人に1人が大学に進学する時代であり、志望者全員が明確な進学動機や必要な学力を持っているとは限りません。だったら受験という機会を利用して意欲や学力を育てようというのが追手門学院大学の「アサーティブプログラム・アサーティブ入試」です。「プログラム」でガイダンスや個別面談を重ねながら大学で何を学びたいかに気付かせ、そのうえで同大を受験したいという人に「入試」を受けてもらうという「選抜型」入試から「育成型」入試への転換を図っているといいます。

このような取り組みが好事例としてほかの大学にも広がっていけば、大学入試の在り方も急速に変わっていくでしょう。それこそが、高校教育・大学教育・入学者選抜を一体で変える「高大接続改革」なのです。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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