変わる大学図書館 4割が学生の主体的学習スペース設置

子どもたちが討論やグループ学習などを通じて能動的に学ぶ「アクティブ・ラーニング」(AL)の導入が次期学習指導要領の改訂の大きな柱の一つとなっていることは、以前に紹介しました。もともとALは大学教育における用語ですが、では大学はどうなっているのでしょうか。文部科学省の調査結果によると、大学の4割以上が大学図書館の中にALのためのスペースを設置していることがわかりました。

文科省が国公私立大学779校を対象に実施した、2014(平成26)年度「学術情報基盤実態調査」の結果によると、複数の学生が集まってパソコンなどを使いながら討論したり、グループで学習したりできる専門のスペースを図書館などの中に設置している大学は338校(国立65校、公立20校、私立253校)で、大学全体の43.4%に上っています。2009(平成21)年度にALのスペースを設けていた大学は89校(国立12校、公立3校、私立74校)で全体の11.7%でしたから、5年間でALのスペースを設けた大学は約4倍に増えた計算になります。また、ALの専用スペースを設けた大学の割合の推移を見ると、2009(平成21)年度11.7%、10(同22)年度14.4%、11(同23)年度17.8%、12(同24)年度23.3%、13(同25)年度31.5%、14(同26)年度43.4%となっており、この3年間くらいで急増したことがわかります。これは、中央教育審議会が2012(平成24)年の答申で大学教育の質点転換を提言し、大学生の学力向上などのためにALなどの導入を求めたことが理由と思われます。

さらに、大学のALへの取り組みを加速させているのが、グローバル人材の育成を求める経済界の強い要望や、政府の教育再生実行会議の提言などです。いつでもどこでもインターネットで必要な知識や情報が得られる時代になり、単に知識量が多いだけの人材はいらなくなりつつあります。逆に求められているのは、文化や歴史が異なる人々などと協働して問題を解決できるグローバル人材です。そのため従来のような知識伝達型の講義形式の授業に代わり、ALによる授業や学習が必要になっているのです。
図書館などに専用スペースを作り、授業以外の時間でもALに取り組めるよう施設整備に大学が乗り出した背景には、このような時代の要請があります。ALのスペース設置はこれからも増えることが予想されます。

このほか、インターネットなどを利用した遠隔授業は、大学全体の36.1%に当たる281大学(国立64校、公立30校、私立187校)で実施されています。また、講義などを録画して活用できるようにしたデジタルアーカイブ化は、大学全体の24.3%に当たる189大学(国立46校、公立10校、私立133校)が取り組んでおり、これらの拠点が図書館となっている大学もあります。
書棚にたくさんの本が並んでいるという大学図書館のイメージは、徐々に変わりつつあるようです。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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