21世紀に必要な能力、どうやって育てる? CRET研究成果報告会

21世紀に必要となる能力をどう育むか、学習指導要領を全面改訂する検討が国の中央教育審議会で始まっています。文部科学相の諮問には「アクティブ・ラーニング」(課題発見・解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習)などが盛り込まれているものの、まだ多くの人にとって具体的なイメージがわかないのも事実でしょう。このほど行われたNPO法人「教育テスト研究センター」(CRET、理事長=新井健一・ベネッセ教育総合研究所理事長)の2014(平成26)年度研究成果報告会から、一端をのぞいてみましょう。

「教育テスト」といってもCRETでは、PISA(経済協力開発機構<OECD>の「生徒の学習到達度調査」)で出題しているような「リテラシー」(活用能力)、「コンピテンシー」(資質・能力)といった、これからの社会に必要な能力の測定方法を研究・開発しています。

人に教えると、自分でもよくわかるようになったり、記憶が長く定着したりすることは経験上ありますが、日本文化に関するクイズ問題を解いてもらう実験では、難しい問題でも頭を使うと面白いので「解いてみたい」という気持ちがわき起こることが立証されました。しかも、もっと効果が高かったのは自分で問題を作った時だったといいます。クイズを「面白いテスト」だと考えれば、出題の工夫によって、未知の問題に取り組む前向きな態度を引き出すこともできそうです。

ゲームを通じて数学的思考力を養うものに「グローバルマス」(運営・ベネッセホールディングス)があります。世界中の人が、自分で作った数学ゲームを登録したり、自由に遊んだりすることを通じて、「問題発見 → 計画 → 実行 → 見直し」という一連の問題解決に必要となる「抽象化力」「戦略力」「振り返り力」といった、社会でも必要とされる能力を育成しようというものです。技術革新がどんどん進むと、これまで人がしてきた仕事もどんどんコンピューターに置き換わり、米国では小学生が大学を卒業するころには65%が現在は存在しない職業に就くだろうという研究もあるほどです。だからこそ将来を見越して、「人間しかできない仕事」に必要な能力を、今のうちから学校教育で育てなければならないのです。

報告会で講演した、世界的に有名なクリエーターでプロデューサーでもある水口哲也氏(慶応義塾大学大学院特任教授)は、人が「面白い」「楽しい」と思うのには理由があり、人が作ったものには必ず「誰かが誰かのためにどうしたい」という思い(wants=欲求・本能)が含まれていると指摘します。そのための能動性を引き出すことが、これからの時代には必要になります。その実例として水口氏は、著名人が出身小学校で授業をするNHKの番組「課外授業ようこそ先輩」に自身が出演した、2003(平成15)年10月の回を紹介しました。同じ夢を持つ子ども同士で話し合い、自分たちの欲求をもとにして未来を創造してみるという授業で、対談した新井理事長は「まさにアクティブ・ラーニングだ」と驚いていました。いま学校で行われている授業も、ちょっとした工夫で十分に未来型の授業へと転換できるのかもしれません。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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