多様化する教員採用試験、今時の中身は…?
子どもを持つ保護者にとって、担任教員の指導力は大きな関心事の一つです。資質・能力の高い教員を確保するには採用試験が重要なカギとなりますが、公立学校教員の採用試験は現在、大きな課題を抱えているようです。
最も大きな問題の一つは、採用試験の競争倍率の低下です。競争倍率は高ければよいというものでもありませんが、優秀な人材を確保するには、やはり一定の競争倍率が必要です。ところが文部科学省の調査によると、2014(平成26)年度公立学校教員採用選考試験の競争倍率は小・中・高校など全体で5.7倍となり、1994(同6)年度以降で最低を記録しました。2000(平成12)年度の競争倍率は全体で13.3倍でしたから、15年前と比べて教員採用試験はずいぶん簡単になったことがうかがえます。
原因は、第2次ベビーブーム当時に大量採用された教員層が一斉退職時期を迎え、その穴埋めとして新規採用者数が増えていることです。採用者数が増えても、同時に採用試験受験者が増えれば問題はないのですが、最近の景気回復基調で民間企業に学生が流れるなどして、受験者が減少しています。このため、教員採用者数が増えるほど競争倍率が下がるという悪循環に陥りつつあります。こういったことが原因で、採用試験受験者が減少して教員の質の確保に支障が出るという、皮肉な結果になっているともいえそうです。
これに対して、都道府県教委なども手をこまねいているわけではありません。文科省が調べた2015(平成27)年度の公立学校教員採用選考試験の実施方法を見ると、都道府県・政令指定都市の68教委(大阪府から教員採用権を移譲された豊能地区を含む)のうち、民間企業経験者など「社会人」の特別選考枠を40教委が設けているなど、全体で63教委が何らかの特別選考を実施しています。この中では、英語教育の充実に対応して、一定レベル以上の英語能力試験資格保有者に対する特別選考を19教委が実施しており、年々増加していることが注目されます。
採用試験で「模擬授業」を実施しているのは54教委、生徒指導などの場面を想定した「場面指導」を実施しているのは40教委あります。また面接試験の試験官として、民間企業関係者を加えているのは49教委、臨床心理士などを加えているのは26教委などで、面接官への民間人登用は全体で62教委に上っています。
このほか、教員免許を持っていない者を対象にした選考枠を設け、採用者には特別免許状を授与して教壇に立てるようにするという特別免許活用選考の取り組みも34教委が実施。特別免許活用選考の対象を見ると、「社会人」が29教委、「スポーツ・芸術」が6教委、「英語の資格者」が4教委などとなっています。
各教委は、受験者減少に対して教員採用試験の方法を多様化し、より優れた人材を見つけようとしているようです。