法科大学院の修了者、司法試験合格者は5割に満たず

裁判官や弁護士などの法曹を養成する法科大学院が大きな転機を迎えつつあることは、これまでも紹介してきました。しかし、法科大学院の実態はなかなかわかりづらい部分があります。たとえば、法科大学院の修了者の進路です。修了者のうち一体どの程度が司法試験に合格して法曹になっているのでしょうか。

法曹改革の一環として2004(平成16)年度に法科大学院が創設され、司法試験は原則として法科大学院修了者しか受験できなくなりました。当初、政府は法科大学院修了者の7~8割は法曹になれるという目標を設定していたため、社会人をはじめとして大きな人気を集めました。ところが、政府が司法試験合格者数を増やせなかったこと、全国に法科大学院が乱立したことなどが原因で、司法試験合格率は低迷(2014<平成26>年度は22.6%)。法科大学院の人気も落ち、その多くが定員割れを起こしているのが現状です。このため文部科学省は、2015(平成27)年度から補助金の見直しなどで法科大学院の再編統合を図ることにしています。

では、現在の法科大学院修了者の実態はどうなっているのでしょうか。実は司法試験の合格率は、あくまでその年の試験状況を示したものにすぎず、法科大学院修了者はその後も司法試験を受け続けているのが実情です。さらに、法科大学院修了者は修了後5年間のうち3回しか司法試験を受けられず、大学院修了後5年が経過すると、司法試験の受験資格を失う仕組みになっています。このため、法科大学院修了者の正確な進路を把握するには、5年以上さかのぼって実態を見る必要があります。

文科省の実態調査(外部のPDFにリンク)(2014<平成26>年10月現在)によると、大学院修了後5年が経過している直近の年代である2009(平成21)年度修了者の進路は、「司法試験合格」が47.3%、「就職」が8.4%、「前職と同じ又は継続」が2.5%、「進学」が0.3%、「その他」が0.9%、「不明」が40.6%となっています。
また、その前の2008(平成20)年度修了者は、「司法試験合格」が47.3.%、「就職」が9.7%、「前職と同じ又は継続」が3.0%、「進学」が0.3%、「その他」が0.9%、「不明」が38.7%でした。ちなみに、最新の2013(平成25)年度修了者は、「司法試験合格」が29.6%、「就職」が2.0%、「前職と同じ又は継続」が1.6%、「進学」が0.1%、「司法試験受験勉強中」が42.4%、「その他」が0.6%、「不明」が23.6%という状況です。

全体的に見ると、大学院修了後1年目に司法試験に合格できるのは約3割、修了後満5年までに司法試験に合格できるのは修了者全体の5割に満たず、法科大学院修了者の半数以上は法曹になれないというのが偽らざる実情のようです。ただし、これはあくまで全体的に見た統計であり、内実は法科大学院ごとに大きく異なるのは言うまでもありません。

文科省は、法科大学院全体の定員を削減し、2018(平成30)年度ごろまでに司法試験合格率を7割程度に引き上げる目標を掲げています。どうやら法科大学院の再編は、今後も避けられないと言えそうです。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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