地方大学に新たな役割、「人口減少に歯止め」

政府は2014(平成26)年末に策定した「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の中に、地方創生の一環として「地方大学等の活性化」を盛り込みました。グローバルとローカルを併せ持った「グローカル」が地方の国立大学の柱となりつつあることは以前に紹介しましたが、国公私立を問わず地方大学に求められる役割は、これから大きく変わることになりそうです。

少子化による18歳人口の減少で、多くの大学は学生の確保に苦慮しています。特に地方にある私立大学では、経営が不安定なところも少なくありません。このため、都市部に下宿する経済的な余裕のない学生の教育機会の確保など、経済格差是正のために地方大学の重要性を指摘する声は以前からありました。
ところが、それとは別の視点から地方大学の活性化を求める意見が出てきました。背景にあるのは、少子化の進行がついに地方自治体の人口減少となって現れ始めたことです。地方から都市部への人口流出には、大学進学時と卒業後の就職時の2つのピークがあります。つまり地方の大学や専門学校への進学者を増やして、地元への就職を促せば、人口減少の防止と地方創生につながるというわけです。
これを受けて政府は「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の中に、2020(平成32)年までに自県大学進学者の割合を平均36%(現行32.9%)、新規学卒者の県内就職の割合を平均80%(同71.9%)、大学と地元企業・官公庁との連携プログラムの実施率を50%(同39.6%)に、それぞれ引き上げるという数値目標を定めました。目標達成には、教育予算を所管する文部科学省と地方交付税を管轄する総務省が共同して当たることになっています。

具体的には、地域発展に貢献するような事業を行う大学に補助金を増額するほか、地場ブランドや独自産業の開発など大学と地元企業の共同研究を推進することにしています。また、地方大学に進学して地元企業に就職した学生、都市部の大学に進学したのちに地方の企業に就職した学生に対して、奨学金を出したり、借りた奨学金の返済を援助したりする「人口減少対策・就職支援基金」を各道府県と地元産業界が連携して創設します。
一方、東京や大阪など大都市部の大学に学生が集中することに歯止めをかけるため、収容定員以上に学生を集めている都市部の大学に対して、私学補助金などのカット率を現行よりも引き上げることも検討するとしています。ただし、これは進学志望者の人気の高い大学の入学者数を削減することを意味するため、今後、批判が出ることも予想されそうです。
このほか「グローカル」への対応として、地域のグローバルリーダーとなる人材を育成するため、文科省の「トビタテ!留学JAPAN」プログラムの中に、地方企業に就職希望の大学生などを対象にした新しいコースを今春から設けることにしています。

人口減少社会を背景に、地方大学、特に地方の公立大学や私立大学などには今後、「雇用創出・若者定着」という役割が強く求められていると言えるでしょう。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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