幼児からできる! 授業を聴ける心と体づくり【前編】姿勢が悪くなっている原因とは?

子どもの姿勢の悪化が広がっていると言われています。体を支える筋力の低下が原因と考えるかたも多いようですが、原因はそれ以外にもあるようです。長年、子どもの<からだ>にこだわった研究を行ってきた日本体育大学の野井真吾先生に、子どもの姿勢の悪化の原因について詳しく教えていただきました。



姿勢の悪さは、背筋力低下だけが原因ではない!

最近、子どもの姿勢が悪いという報道をよく耳にするかたもいるかもしれませんが、姿勢の悪さを測定するものさしはないため、子どもの姿勢が悪くなっているという実証データは実はありません。しかし、子どもの姿勢の悪さを実感する教師や保育者は増えています。私が所属しているNGO「子どものからだと心・連絡会議」が5年ごとに行っている調査(「子どものからだ調査2010」)では、「座っている時、背もたれに寄りかかったり、ほおづえをついたりしてぐにゃぐにゃになる子」が「最近増えている」と感じる教師は、小学校で1978(昭和53)年に44%だったのに対し、2010(平成22)年は69%。保育所で1979(昭和54)年に11%だったのに対し、2010(平成22)年は60%にも及んでいます。
姿勢が悪くなっている原因として、我々がまず考えたのが背筋力の低下でした。重力に逆らって良い姿勢を保つには、体重と同じ位の背筋力が必要だからです。今の子どもたちは昔より体重は増えているのにもかかわらず、背筋力は年々下がり続けています。しかし、運動部の子どもたちを見ても姿勢が悪い子も多く、背筋力だけが原因ではありませんでした。



【原因1】前頭葉機能の発達が未熟な「そわそわ型」が増えている

次に注目したのは、学習するときに重要な働きをする大脳の前頭葉機能です。大脳活動の働きは基本的には「興奮」と「抑制」の過程から成り立っています。
前頭葉の活動のようすを調べる簡単な実験を行うと、大脳前頭葉の活動は、「そわそわ型」「興奮型」「抑制型」「おっとり型」「活発型」の5つの型に分類されます。このうち、最も幼稚な「そわそわ型」と判定される子どもが最近目立っているのです。このタイプの子どもは、物事に集中するのに必要な<興奮>も、気持ちを抑えるのに必要な<抑制>も十分に育っていません。そのため、授業でも集中を持続できず、いつもそわそわとしていて落ち着きがなくなってしまうのです。
人間は誰もが最初は「そわそわ型」の脳をしているのですが、従来は小学校入学を迎えるぐらいまでに徐々に別のタイプに移行していくのが一般的でした。しかし、近年、9歳を過ぎても「そわそわ型」を脱することができない子どもが増えているのです。特に、男の子の場合、小学1年生の7割が「そわそわ型」だという調査結果が出ています。授業に集中できないのはやる気がないからではなく、前頭葉の発達が未熟なためなのです。こうした「そわそわ型」の出現が、姿勢の悪化だけでなく、学級崩壊、小1プロブレムの背景にもあると考えられます。



【原因2】生活リズムが乱れ、セロトニン神経が弱化

もう一つ、授業に集中できない理由として注目しているのが、セロトニン神経の弱化です。セロトニン神経は、良い姿勢を保つために重要な役割を果たす背筋などの抗重力筋に緊張を与える役目を持っています。しかし、このセロトニン神経の活性が低下しているため、抗重力筋が十分な働きをしていないと考えられるからです。
では、どうしてセロトニン神経が弱化しているのでしょうか。それは、子どもたちの遊びが変わり、生活リズムが乱れているからです。セロトニンは、日中に太陽光を浴びることで増加します。昼間に体内で作られたセロトニンをもとに、夜にはメラトニンという体温を下げて眠りを誘うホルモンが生成されます。しかし、外遊びをしないなど子どもたちが太陽光を浴びる機会が減り、セロトニンが十分増えないのです。一方で、夜になってもコンビニや塾やテレビ、ゲームなどにより必要以上に明るい光刺激を受けることで、メラトニンの分泌が抑えられてしまい、体内リズムが狂い、よく眠れない、朝起きられないといった現象が起きているのです。外遊びを十分にしないことで、良い姿勢を保つために重要な神経が十分に機能せず、睡眠にも影響を及ぼしています。

子どもたちが授業に集中できないのは、脳や生活リズムが関係しているようです。では、どのように対策したらよいのでしょうか。

次回は、対処方法について伺います。


プロフィール

野井真吾

野井真吾

日本体育大学教授。学校保健・教育生理学・体育学・発育発達を専門領域として、子どものからだや心に関する研究を続けている。主な著書に「からだの<おかしさ>を科学する」(かもがわ出版)、「子どものケガをとことんからだで考える」(旬報社)など。

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