ひと味違う! 動物園の楽しみ方【後編】実践編

多くの動物園では、お子さまが動物の生態や生活環境を理解するためのさまざまな工夫が凝らされています。ただ、親子だけでは、そうした学習にまでつなげるのは難しいですよね。前回はひと味違う見学の仕方を取り上げたのに続き、今回は上野動物園の動物解説員の小泉祐里さんに、ガイドツアーなどを利用してより深く動物園を楽しむコツを紹介してもらいました。



ガイドツアーに参加し、動物をよく観察しよう!

動物園に来たお子さまから「動物が寝ていてつまらない」「ちっとも動かないのでおもしろくない」という声を聞くことがあります。確かに生き生き活動している場面のほうが、お子さまが動物の魅力を感じやすいと思います。ただ、寝ていたり、動かなかったりする時間も動物にとっては大事な時間。そんな自然の姿を観察して、その理由を考えてみるのも、実はとっても面白いんですよ。そんな動物の観察方法を教えてくれるのが、動物園の「ガイドツアー」です。ガイドツアーでは、動物の生態や暮らしについて詳しい動物解説員と一緒に動物園を見学するため、いままで気付かなかった発見があったり、不思議が見えてきたりするはずです。

上野動物園のガイドツアーでは、動物の食べものに注目したり、動物の暮らす場所を考えてみたり、ユニークな体の動きを追いかけたりと、いろいろな角度から動物たちを見て回ります。テーマが違えば、同じ動物でも違う発見があるはずです。その一つを少しご紹介しましょう。


~上野動物園のガイドツアー『水辺の動物』~

長いヒゲを持つアシカ。泳ぎ方にも注目しよう!

『水辺の動物』ツアーでは、アジアゾウ・バク・カピバラ・アシカ・アザラシ・ホッキョクグマなど水辺に暮らす動物を見学します(観察する動物は日によって変わります)。これらの動物が、水辺に住む理由はさまざまです。たとえば、ゾウが水浴びするのは、暑い国で暮らしているので体温を下げたり、虫をはらったりするためですが、バクは敵から身を守るために水に入ります。

また、水辺に住む動物たちは、水の中で生き抜くうえで便利な体のつくりをしています。たとえば、アシカの長いヒゲは、何のためにあると思いますか? これは、魚を食べるために大切な役割を持っています。ヒゲの根元にはたくさん神経が集中しており、水中で魚が出す波を感じることができます。そのため見通しのきかない水の中でも狩りができるのです。

動物解説員がこうした説明をするだけでなく、実際に参加者のかたがどのように動物を観察したら、いつもと違う観察ができるかを考えながら企画しています。一度、ツアーに参加していただければ、いつもとは違う動物園の楽しみ方に気付いてもらえるはずです。


子どもの気付きや発見を促す見学を!

ガイドツアーでは動物をさまざまな視点から紹介

ガイドツアーに参加すると、「ゾウの体に毛が少ない理由」「ニホンザルの出産は5月が多い」など、大人でも「へえー」と思うことがたくさんあると思います。
動物に興味のあるお子さまであれば、こうした知識を得ることを喜ぶかもしれませんが、小さなお子さまにとっては説明を聞くだけでは、面白くないかもしれません。それよりもお子さまが喜ぶのは、自分で何かを発見したり、気付いたりすることです。ガイドツアーでも動物解説員は知識を語るよりも、「動物の足の指を見てごらん、何本ある?」と、お子さまの気付きを促すように心がけています。自分の目で見て感じたことが一番心に残るし、帰ったあとも動物や環境について考えるきっかけになるはずです。

ですから、保護者のかたも「この動物は○○でねー」とガイドのように語らなくては、と思う必要はありません。まず、子どもの気付きや発見をきちんと受け止めて共感してほしいですね。それから「どうしてゾウさんの耳は大きいの」「どうしてパンダは寝てばかりいるの」など、お子さまが疑問に思ったことを一緒に考え、解決の方法としてじっくり動物を観察したりほかの動物と比べてみたりし、さらに家に帰ってから一緒に調べて、それをまとめれば良い自由研究にもなるはずです。

夏休み時期になると、自由研究のために動物園のガイドツアーに参加して動物解説員の解説を一言一句メモしている親子がいるのですが、ぜひ自分の気づきを大切にしてほしいですね。そのほうがずっと楽しい自由研究になると思うし、興味も広がっていくと思います。わからないことは動物解説員に聞いてください。上野動物園には、動物のことを何でも聞くことができる「動物相談室」や「資料室」(※)があるので、活用してほしいですね。


「上野動物園見どころ新聞 ZOO TODAY」は園内入り口に置いてあります

また、上野動物園ではガイドツアーに参加する以外にも、毎月動物解説員が見どころをまとめた「上野動物園見どころ新聞 ZOO TODAY」というものを発行しています。新しく動物園にやってきた動物の紹介や動物たちの出産・子育て情報もお知らせしています。その月にぜひ注目してほしいポイントをまとめたものなので、ぜひチェックしてほしいと思います。

※動物相談室は総合案内所の2階にあります。また、上野動物園の西園・動物園ホール2階には動物に関する図書を集めた資料室もあり、図鑑や専門的な本で調べることもできます(ただし、事前に電話予約が必要)。



小中学生の保護者必見!自由研究/工作・読書感想文で苦労しないコツ!



プロフィール


小泉祐里さん

恩賜上野動物園・動物解説員。九州大学大学院で動物生態学を学び、ノネズミの行動を研究。卒業後、動物解説員として多摩動物公園に勤務し、1997(平成9)年から同園。ガイドツアーその他の催し物の企画・運営や、学校を対象とした教育プログラムの開発・実施に携わっている。

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