「インクルーシブ教育」で特別支援はどう変わるの?

特別支援教育の在り方について、中央教育審議会で検討してきた報告書がまとまりました。障害者も積極的に参加できる「共生社会」の実現を目指して「インクルーシブ教育システム(包容する教育制度)」を構築するといいます。しかも、これは障害や困難を抱えるお子さんだけの話ではありません。

「インクルーシブ教育」で特別支援はどう変わるの?


インクルーシブ教育は、障害のある者とない者が共に学ぶことを通して、共生社会の実現に貢献しようという考え方です。2006(平成18)年12月の国連総会で採択された「障害者の権利に関する条約」(08<同20>)年5月発効)で示されました。日本も同条約の批准に向けて2011(平成23)年8月に障害者基本法が改正され、「可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮」(16条)するとされました。
もちろん、単に一緒の場で同じ教育を行えばよいというものではなく、特別支援学校や特別支援学級をなくすものでもありません。何より障害などの特性に応じたきめ細かな教育により、障害児の能力を可能な限り伸ばすことが求められます。報告書では、一人ひとりを丁寧に教育するための「基礎的環境整備」を充実させながら、具体的な障害などの教育的ニーズに対応した「合理的配慮」を、財源も確保して順次実施していくとしています。

一番大きく変わるのは、通う学校の指定(就学先決定)の仕組みです。現在は市町村教育委員会の「就学指導委員会」で、専門的な見地から基準に該当する場合には特別支援学校を指定する、というのが基本です。しかし決定をめぐっては、ともすれば学校側の都合が優先され、障害児本人や保護者の意向が十分反映されていないのではないか、という不満も少なくありません。そこで報告書は、最終的に市町村教委が就学先を決定する仕組みは変えないものの、同委員会を「教育支援委員会」(仮称)に改編して、本人・保護者の意見を最大限尊重しつつ関係者の合意を図ることを原則にするよう提言しています。しかも就学先決定の時だけでなく、事前や事後も同委が一貫して支援に当たるとしています。
さらに報告書では、特別支援学校と幼・小・中・高校、あるいは特別支援学級と通常の学級間での「交流及び共同学習」を、いっそう進めるよう求めています。障害のない子も小さいうちから障害を理解したり多様性を尊重したりする教育を通して、将来の共生社会をつくるための基礎を培おうというわけです。

もともと以前の「特殊教育」が2007(平成19)年度から「特別支援教育」に替わったのも、通常の学級に在籍する学習障害(LD)など発達障害の児童・生徒も含め、一人ひとりの教育的ニーズに対応した丁寧な教育を行おうとしたものでした。報告書は、インクルーシブ教育を進めることで「障害のある子どもにも、障害があることが周囲から認識されていないものの学習上又は生活上の困難のある子どもにも、更にはすべての子どもにとっても、良い効果をもたらすことができる」と強調しています。


プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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