学習ソフトで勉強する効果は?[教えて!親野先生]

【質問】

 

漢字が苦手な長男にDSで勉強させていたら、夫に「ちゃんと書き取りノートに書いて勉強しなきゃ効果はない」と言われました。「こういうものは、そのときは覚えたつもりになってもすぐ忘れてしまうから学力はつかない」とも言われました。やはり効果はないんでしょうか? あっても限定的なのでしょうか? (ぱむぱむ さん:小学5年生男子)


学習ソフトで勉強する効果は?[教えて!親野先生]

親野先生からのアドバイス

ぱむぱむさん、拝読いたしました。

たしかに、旦那さんのように「効果はない。学力はつかない」と言う人はけっこういます。でも、私は電子機器の学習ソフトには効果があると思いますし学力もつくと思います。
もちろん万能ではありませんので特定の学力に対しての効果ということになります。でも、そもそも万能な学習方法などというものはありませんし、どの学習方法も効果は限定的です。
音読・書き取り・計算プリント・ドリル学習・問題集・読解ワーク・単元学習・討論・自由研究など、学習方法は何百もありますが万能なものなどひとつもありません。
どの学習方法も特定の学力を伸ばすものですし、それによって伸ばすことのできない学力もあるわけです。ですから、どの学習方法もその効果と限界を知ったうえで、最大限有効に活用することが必要なのです。学習ソフトによる学習も同じです。

昨今では、パソコンやDS以外にも、Wii、iPad、スマートフォン、電子辞書などいろいろな電子機器が普及し、それに対応した学習ソフトもたくさんあります。私はこれらによって新しい学習方法が確立されつつあると積極的に評価しています。
はっきり言えば、人類史上かつてないほどの学習方法の大革命が静かに進行しているとすら思います。
それは、ITによって私たちの生活の仕方も社会の在り方も革命的に変わりつつあるのと同時進行なのです。

ひと言で学習ソフトと言っても、機器やソフトの種類によって学習方法もいろいろです。でも、共通しているのは紙と鉛筆だけの学習では不可能な多種多様な工夫がなされているということです。
ドリルを楽しく繰り返す工夫があったり、クイズやパズルで考えさせたり、ストーリー展開で興味を持たせたりなど、いろいろな工夫がされています。
親子や友達で競争したり、昨日の自分と競争して新記録を目ざしたりすることもできます。ポータブル機器なら、いつでもどこでも5分の隙間時間に学習することもできます。
文字情報だけでなく、効果音や人間の声、写真やイラストの画像、実写やアニメの動画などを駆使して目と耳に働きかけてきます。手やタッチペンで書き込んだり、声に出して回答したり、全身を動かして反応したりするものもあります。これらによって楽しさも増しますし、忘れにくくなるということが言えます。紙と鉛筆だけの学習ではあり得ないことです。

問題に解答したとき正解不正解の結果がすぐにわかります。それで即時確認の原理が働き、正解のときは喜びが増し、不正解のときは強く印象に残って記憶の定着につながります。
自分の学習進度や到達度がモニターできるようになっているソフトもあります。つまり、今何級とか、何ステージとか、何年生レベルなどのように自分の現在位置がわかるのです。それが「3級をクリアしたから2級を目ざすぞ!」「もっとレベルを上げたい」というモチベーションにつながります。これは目標の「見える化」であり、学習を継続していくうえでとても大切なことです。
それまでの過程や努力の足跡を「見える化」して達成感を持たせる工夫もあります。時間制限を設けて集中度合いを上げさせるものもあります。
レーダーチャート(五角形などのくもの巣状のグラフ)によって、自分の得意不得意がわかるものもあります。これによって、計算は得意だけど文章題が苦手などとわかります。
学習者のデータを蓄積しているので、苦手な部分を繰り返し出題するなどもお手の物です。メモ機能を利用して、必要なものを自分で選ぶこともできます。これによって無駄がなくなり学習効率が上がります。

私たちが中学校や高校生のときは、カードに四字熟語・キーワード・英単語などを書き込んで自ら学習ツールをつくったものでした。つくるのに膨大な時間をかけたり、つくっただけで満足してしまったりなどもよくあることでした。それに比べるとはるかに学習効率は上がっています。

教育関係者の中でも学習ソフトについては賛否両論があります。でも、これは新しいものが出てきたときにはいつでも起こることです。
私は、学習ソフトが子どもを引きつける圧倒的な魅力を無視するべきではないと思います。同じ学習内容であっても、紙と鉛筆ではやる気にならない子どもが学習ソフトならやる気になるという事実があります。こういう事実は大切にすべきです。
学校の授業で活用した実践例でも、普通なら5分くらいで勉強に飽きてしまう子が45分近く集中して取り組んだという報告があります。赤堀侃司教授(東京工業大学)の小学校における活用の研究でも、大いに学力向上が見られたという結果が出ています。特に、成績中位と下位の子どもたちの伸びが大きかったということは注目に値します。
また、子どもの中には、手と指の巧緻(こうち)性がなくて鉛筆をうまく扱えない子がけっこうたくさんいます。彼らはとにかく鉛筆で紙に書くこと自体が苦手で、それによって勉強も苦手と思い込んでいます。彼らは、本来勉強とは関係ないことで足を引っ張られているのです。でも、これからは学習ソフトが救世主になると思います。紙と鉛筆による勉強だけにこだわっていると、こういう子は救えません。「これはうちの子だ!」と思う人は、ぜひ試してみてください。

子どもが学習ソフトで勉強していたら、ぜひほめてあげてください。「勉強が好きだね」「漢字が好きなんだね」「集中力があるね」と言ってあげてください。それによって、子どもは「自分は勉強が好きだ。勉強って楽しい」「ぼくは漢字が好きだもんね」「私には集中力がある」と思えるようになります。
つまり、勉強や集中力という点で良い自己イメージができるのです。すると、紙と鉛筆の勉強でもがんばれるようになります。ですから、学習ソフトをほめるきっかけにする、という発想も持ってください。

さて、もちろん学習ソフトには気をつけるべき問題点もあります。最大のものは、ついゲームで遊びたくなってしまうことでしょう。勉強していると思ったらゲームだったということが起こり得ます。
起こり得る問題点については、あらかじめきちんと親子で話し合ってルールを決めることが大切です。そして、ホワイトボードなどに明文化して「見える化」しておきましょう。たとえば、機器とソフトは親が管理する、時間はどれだけ、やって良い場所はどこ、絶対歩きながらやらない、などなどです。
また、冒頭で書いたように学習ソフトの効果も限定的です。これで身につけられないものはほかの学習方法で身につけるようにしましょう。

私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
皆さんに幸多かれとお祈り申し上げます。

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プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

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