理科の「教科担任制」、小学校でも約3割に。小学校教員の6割以上が「理科が苦手」!?

小学校で音楽・体育・家庭科などを、学級担任以外の先生に教わったという経験のある人は多いでしょう。これまで小学校の「専科教員」は技能系教科が中心でしたが、最近になって理科の専科教員が増えていることが、文部科学省の調査でわかりました。背景には、子どもたちの「理科離れ」を防止するという狙いとともに、多くの小学校教員が理科に対する「苦手意識」を持っていることもあるようです。

昨年4月から全面実施された小学校の新しい学習指導要領では、理科の授業時間数が全体で55時間(15.7%)増の405時間となりました。時間数自体は算数や国語には及びませんが、これまでにない新しい内容が数多く追加されたのがポイントです。新しい小学校教科書の平均ページ数も、国語の25.2%増、算数の33.2%増に対して、理科は36.7%増となっています。実験や観察をこれまで以上に重視しているのも、大きな特徴です。
ところが小学校の現場では、実験や観察などを中心に置いた理科の授業に対して、不安の声があるようです。というのも、理科が苦手という小学校教員が少なくないからです。

科学技術振興機構の調査によると、経験10年未満の小学校教員の6割以上が「理科が苦手」と回答しています。これは、小学校教員の多くを占める教育学部出身者が基本的に文科系であること、小学校教員の62.8%が女性であることなどが原因と言われています。
いくら理科の授業時間数や教育内容を増やしても、それを教える教員が理科を苦手としていたのでは、効果も上がりません。このため、理科を教科担任制にして専科教員を配置する自治体が増えているのです。文科省の調査結果によると、2011(平成23)年度に理科を教科担任制にした公立小学校は、3年生が14.0%(09<同21>年度11.7%)、4年生が20.3%(同17.8%)、5年生が31.8%(同26.4%)、6年生が34.2%(同29.4%)で、小学校高学年では3割以上の学校が学級担任以外の教員を充てていました。理科教育の充実は大きな課題であり、小学校理科の専科教員は今後も増えることが予想されます。

ただし、問題もありそうです。実際の小学校の現場では「持ち授業時間数が少なくて済む」という理由で主任クラスの教員が理科の専科になるケースもあり、必ずしも理科が専門または得意という教員が任命されるとは限らないからです。
このような実態を改善するため、茨城県や静岡県など都道府県の一部では、中学校の理科の教員免許状を持つ者を小学校の理科専科教員として特別枠で採用するところも出始めています。今後、理科の教員免許状所有者を小学校の専科教員として採用する自治体は増えていくと思われます。
けれども、小学校教員の多くが理科を苦手とする状態のままでは、やはり困ります。理科教育についての教員研修の充実のほか、大学の小学校教員養成課程の見直しも求められるところでしょう。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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