だらしがないお兄ちゃんとしっかり者の妹を比べてしまいます[教えて!親野先生]

【質問】

 

下の妹はしっかりしているのに、上の男の子がだらしがないです。いつまでも宿題をやらないし、やったとしても目も当てられないほど雑です。お手伝いは続かない、忘れ物はする、ぼうっとしている……。挙げたらキリがないほどです。元気と愛敬だけはあるのですが。妹と比べて叱るのはやめようと思っているのですが、つい比べてしまいます。(ライフプラン さん:小学5年生男子)


だらしがないお兄ちゃんとしっかり者の妹を比べてしまいます[教えて!親野先生]

親野先生からのアドバイス

ライフプランさん、拝読いたしました。
だいたいにおいて、男の子はそんなものです。

一般的に男の子は、親の望むような能力、言い換えると親にとって都合のいい能力の目覚めは遅いようです。特に、自己管理に関する能力は遅いのです。
ですから、次のようなことになりがちです。

自分がやりたいことはやる、やりたくないことはやらない。
親がやらせたいことはやらない、やらなくてもいいことはやる。
嫌なことは後回し、好きななことはいつまでもやる。
親に言われたこと、やるべきこと、決められたことをきちんとやらない。
物の管理ができない、片付けができない、忘れ物をする。
ちょろちょろ動き回って落ち着かない。
人の話を聞かない、聞いているようでも理解していない。
ぼうっとしていて上の空。
何かに夢中になっていると、時間が来ても切り替えができない。
言葉が遅い。
いつまでも幼稚っぽい。
やたらに勝ち負けにこだわる。
人の気持ちを読めない。

いかがですか? 当てはまることが多いのではないでしょうか?
でも、ここで、ひとつ大事なことがあります。
それは、個人差も大きいので必ずしも一概には言えないということです。男の子でもこれらに当てはまらない子はもちろんいますし、女の子でばっちり当てはまる子もいます。それでも、一応の傾向性はあるということなのです。

さて、これらの傾向性について、男の子と女の子の違いについて、それぞれの脳の成長の仕方について、脳科学でもいろいろな専門家がいろいろなことを言っています。まだはっきりわからないことも多いようですが。
でも、諏訪東京理科大学教授の篠原菊紀先生が『男の子の脳を伸ばすのは、どんな親?』(宝島社)の中で書いていらっしゃる文章に、私はとても引かれました。子育て中のみなさんにとても参考になると思いますので、私なりに要約して紹介します。


  1. 男の子と女の子の脳の差について知っておくと、困りごとが起きたときに「脳の差」のせいにすることができる。
  2. 「ちょっとこの子とは、うまくいっていないな」「扱いづらいな」と感じたとき、その原因を「男の子の脳」のせいにするといい。
  3. そうすると、子どもとの関係を客観視しやすくなる。問題を「 」でくるんでおくと、冷静に見ることができ、次の工夫も生まれやすくなる。
  4. こういう操作をカウンセリング技法では外在化という。問題を外在化すると、人格と問題を切り離すことができ、展望が開けることが多々ある。
  5. 男の子でも「男の子脳度」が低い子がたくさんいる。女の子でも「男の子脳度」が高い子もたくさんいる。そもそも個人差があり、それでもざっくりまとめると男女差が見えてくる。男と女の差の話は、そういった話だ。

とても説得力のあるお話です。親であるみなさんがこれを頭に入れておけば、いちいちイライラしなくて済むはずです。

そして、「2.」について私は思うことがあります。
それは、男の子の傾向性や脳についてだけでなく、同様に「女の子の脳」のせいにすることもできるということです。そうすれば、女の子の困った傾向性も許せるようになります。
さらには、「その子の脳」のせいにすることもできるということです。そうすれば、外在化がしやすくなり、どんな子のどんな表れでも許せるようになります。
つまり、その子のせいではなく「その子の脳」の構造のせいなのです。
このように考えれば、「まあ、しょうがないか」という気持ちになれます。実際、それはしょうがないことなのです。

さて、男の子の傾向性の話に戻りますが、これらの親にとって望ましくない姿も成長過程での仮の姿に過ぎないのです。目覚めが遅い能力も、だんだん目覚めてきてついには追いつくのです。目覚めが遅い分エネルギーをため込んでいて、一度目覚めたら飛躍的に伸びるということもよくあることです。
その反対に、目覚めは早かったけれどあとでそれほど伸びなかったということもあります。
ですから、どちらが良いかわからないのです。

また、望ましくないと思えた傾向性が実は後伸びの要素だったということもあります。たとえば、「自分がやりたいことはやる、やりたくないことはやらない」という傾向性が幸いして自分の道を究めることにつながることもあるのです。「短所は長所の裏返し」と格言に言う通りです。

しょうもない男の子もだんだん女の子に追いつきます。ですから、長い目で見てあげてください。
みなさんの同級生でもそういう例はあるはずです。小さいころはしょうもなかったけど、あとですごく伸びたという人がいると思います。男でも女でもいるはずです。
親であるみなさんは、男の子と女の子を比べないことが大切です。男の子は、割り引いて見てあげてください。もちろん、女の子でも「男の子脳度」が高い子は同じです。

特に要注意なのが、「上が男で下が女」という組み合わせです。この場合、下の妹は女の子というだけで有利なうえに、お兄ちゃんが叱られるのを見ていて学ぶのでさらに有利になります。
ですから、この組み合わせの場合、お兄ちゃんは何かにつけて叱られ続け、妹はいつもほめられ続けるということになりがちです。私が教えた子どもたちの中にも、このような例がけっこうありました。
このように叱られ続けると、自分に自信が持てなくなったり親に対する愛情不足を感じてしまったりすることもあります。そうすると、本当は伸びるはずのときになっても伸びられなくなります。
また、きょうだい仲に影響することもあります。

というわけで、だらしがないお兄ちゃんも割り引いて見て、受け入れて許してあげてください。
女の子で「男の子脳度」が高い子も同じように割り引いて見て、受け入れて許してあげてください。

私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
みなさんに幸多かれとお祈り申し上げます。

「共感力」で決まる!(単行本)親野智可等(著) 講談社 ISBN-10: 4062152797【お知らせ】
こちらの親野先生のコーナーから単行本第三弾が誕生!

大人気のこちらのコーナー、[教えて! 親野先生]が、本になりました。『「共感力」で決まる!』です。子育てが激変する親子関係の新ルールが相談例をもとにわかりやすく提案されています。

プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

おすすめトピックス

子育て・教育Q&A