忘れ物の多い子は、自分が困れば直るから放っておけばいい?[教えて!親野先生]

【質問】

 

子どもの忘れ物が多くて困っています。教科書・ノート・筆箱などはしょっちゅうです。習字道具を持って行っても墨だけ忘れたりということもよくあります。でも、主人は「忘れ物をして自分が困ればしっかりするから放っておけ。お前は手を出しすぎだ」と言います。どちらの方針で行くべきか決めかねています。(和風ハイキング さん:小学2年生男子)


忘れ物の多い子は、自分が困れば直るから放っておけばいい?[教えて!親野先生]

親野先生からのアドバイス

和風ハイキングさん、拝読いたしました。

忘れ物が多い子について、「放っておけば自分で困って直すだろう」という考えの親はけっこういます。その反対に、先回りして何でもかんでもやってしまう親もいます。
結論から言いますと、これらの両極端はいずれも子どものためになりません。正解はその真ん中にあるのです。

前者のように放っておくと、子どもはますます忘れ物が増えることが多いのです。なぜかというと、子どもは「忘れ物をすると困る。忘れ物を減らしたい」という気持ちはあっても、実際にはできないことが多いからです。
「気持ちはあってもできない」ということは大人でもよくあることですが、子どもにおいてはそういうことが実に多いのです。子どもは、性格的・能力的・環境的な理由からできない場合が多いのですが、これらはいずれも先天的な資質と後天的な環境によるものです。先天的な資質と後天的な環境に起因するものを、子どもがやすやすと変えられるはずがありません。それに、「忘れ物をすると困る。忘れ物を減らしたい」と思っただけで直せるなら、もうとっくに直っているはずです。

このようなわけで、親が前者のような考えで放っておいて子どもの忘れ物が減ることはありません。

忘れ物が多いと、授業に差し支えるだけでなく先生に叱られたり友達に嫌なことを言われたりします。

それで子どもは自信をなくしますし、手助けしてくれない親に対する愛情不足を感じるようになります。
子どもが親に対する愛情不足を感じていても、それはすぐ表に出ないので親にわからないことが多いのです。それで親は高をくくっているのですが、思春期以降に問題行動として出ることが多いのです。実際、私が受け持った子の中にもこのような例がいくつかありました。

さて、これとは反対に、先回りして何でもかんでもやってしまう親もいます。子どもは自分でできるのに、親が過保護で口と手を出しすぎるという例もけっこうあるのです。
これでは、子どもの自立の妨げになるのは明らかです。自分でできることもやらない、自分で決めるべきことも決められない、ということになるのです。

このように、放任も過保護もよくありません。
大切なのは、その子にちょうどいい手助けをすることなのです。

でも、親というものは、どうも、万事どちらかに偏りがちです。
その理由は、我が子の実態と必要性に合わせて判断するという発想がないからです。つまり、親は、自分の性格・価値観・主義に基づいて判断してしまうのです。放任の親も過保護の親も、自分の性格・価値観・主義に基づいてそうなっているのです。「自分がこうだからこうする」ということであり「この子はこうだからこうする」ということではないのです。
こういう姿勢が、勉強にしろしつけにしろ、子育てのあらゆる場面で実にいろいろな問題を引き起こしています。何事もうまくいかないときは、背景にこれがあるのです。

繰り返しますが、「我が子の実態と必要性に合わせたちょうどいい手助け」を工夫することが大切です。
たとえば、次のようなことです。
・自分で支度がまったくできないなら、一緒に支度をするところから始める。
(しかも、ほめながら)
・やり始めればできるのになかなかやろうとしないなら、親が声かけをする。または、決まった時刻に開始合図の音楽が鳴るようにする。
(小言は言わないで声をかけて、そして、ほめる)
・支度はある程度できるけど完璧でないなら、親が確認する。または、チェックリストを作るなどの工夫をする。
(忘れている物があれば用意させ、そして、できた部分をほめる)
・毎回決まったものを忘れるなら、それを防ぐ合理的な方法を工夫する。付箋(ふせん)紙の活用、置き場所を決めるなど。
(親が工夫してあげる、または、親子で工夫する)
・支度は自分でできるけど時間がかかりすぎるなら、親が環境整備を手伝う。要らない物の処分、ラベリング、持ち物コーナーの設置など。
(支度がしやすくなるように手助けしてあげて、そして、ほめる)

とにかく、「できるようにしてあげて、ほめる」ことが大切です。
そして、少しずつ手を離すのです。

ところで、「ちょうどいい手助けに」ついて考えるとき、自転車の練習をイメージするといいと思います。
子どもが自転車の練習をするとき、親が自転車を支えたり補助輪をつけたりします。これによって、子どもはだんだん乗れるようになります。でも、いつまでも親の支えや補助輪に頼っていては自力で乗れるようになりません。
親の支えを少なくしたり補助輪を外したりするタイミングを、よく見極めることが大事です。それは、1週間経ったとか1か月経ったとか、あるいは何歳だからという理由で決めるわけにはいきません。ただ子どもの実態に応じて決めるのです。
そして、ここでも「できるようにしてあげて、ほめる」ことが大切です。そして、少しずつ手を離すのです。何事もこれと同じです。

ところで、子どものことで悩みがあるとき子育て掲示板などを参考にする人も多いと思います。子育て掲示板は、リアルな本音や具体的な方法が満載でとても参考になる部分があると思います。
でも、読むときに気を付けてほしいことがあります。それは、我が家の我が子に当てはまるとは限らないので鵜呑(うの)みにしないということです。

たとえば、この問題についても、いろいろな掲示板にいろいろな意見が出ています。ある人は「放っておいたら直った」と書き、ある人は「手助けしたらできるようになった」と書いています。でも、それらはすべて「その家の、その親の、その子においてはそうなった」「特定の状況下でそうなった」という話なのです。一応の状況説明は書いてあっても、見えない部分がとても多いのです。
つまり、どんな子でどんな親かがわからないのです。その子の性格、能力、環境、生活スタイル、親の性格や言葉遣い(これは実に大切です)、親子間の信頼度(これまた実に大切です)、忘れ物の程度、などなど、ちょっとした条件の違いが大きいのです。
ですから、鵜呑みにして同じようにやっても、自分の家の子がそうなるとは限らないわけです。

もちろん、この問題は掲示板だけのことではありません。本、雑誌、ネットの情報、専門家の話、私が書いているものもそうです。すべてにおいて言えることです。
ですから、我が子をよく見て、「我が子の実態と必要性に合わせたちょうどいい手助け」を工夫することが大切なのです。

私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
みなさんに幸多かれとお祈り申し上げます。

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プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

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