子どもが乗り気でないことをやらせるには?[教えて!親野先生]

【質問】

 

市の主催で、陸上・水泳・器械体操・サッカー・卓球などのいろいろなスポーツに幅広く親しめるスポーツ教室があります。うちの子も行かせたいのですが、本人は電子工作と数独をたっぷりやりたいから行かないと言っています。子どものうちはスポーツで体を鍛えておくのも大事だと思うので、何とか行かせたいのですが、何か良い方法はないでしょうか? (マンガママ さん:小学6年生男子)


子どもが乗り気でないことをやらせるには?[教えて!親野先生]

親野先生からのアドバイス

マンガママさん、拝読いたしました。
親としては、本当にそういう気持ちになると思います。それが「親心」というものです(この「親心」というものがくせ者なのですが……)。


マンガママさんは、子どもに電子工作と数独をやめなさいと言っているわけではありません。つまり、好きなことを続けつつ新しいことにも挑戦させてあげたいという気持ちなのだと思います。
こういう気持ちはとてもよくわかります。でも、結論から言いますと、私は最終的には子どもの気持ちが大事だと思います。なぜなら、子どもの人生は子どものものだからです。

もちろん、親が子どもにやってほしいことややらせてあげたいことを紹介・推薦・説得するのは良いと思います。
子どもは、本当に人生経験も情報も少ないので知らないことが多いからです。本人が知らないものでも、その子に向いているものや役立つものがいっぱいあるはずです。それに触れる機会もなく、ただ食わず嫌いなだけで終わってしまうのはもったいないことです。試しにやってみたら見事にはまって、その子の成長に結びつくということもあるはずです。

では、紹介・推薦・説得のそれぞれの段階でどのようにすればよいのでしょうか?
紹介では、こういうものがあるということを教えてあげます。
推薦では、一歩進んで、「やるといいと思うよ」「向いていると思うよ」などと教えてあげます。
説得では、さらに一歩進んで、それをやることの良い点をアピールして子どもがやる気になるように働きかけます。やればどんな楽しさがあるか、やればどんな効果があるか、どんな点で本人に向いているか、などでアピールします。この場合、親が子どもにお願いするという形が意外と効果的なこともあります。

ところで、ここで気を付けてほしいことがあります。それは、説得と強制は紙一重だということです。
親は説得しているつもりでも、実際は強制になっていることも多いのです。親は、説得を装いつつ巧妙に強制していることも多いわけです。もともと親と子の間には力関係がありますので、そうなりがちです。

さて、このような紹介・推薦・説得(お願いも含む)をした結果子どもがその気になることはよくあることです。
でも、それでも子どもがその気にならないことも、またよくあるわけです。

このご相談の場合、親の紹介・推薦・説得にもかかわらず、子どもが「電子工作と数独をやりたいからスポーツ教室には行かない」と言う可能性もあるわけです。その場合、親はそれ以上のこと、たとえば、強要・強制・強迫などはするべきではありません。
その反対に、そういう子どもの態度を、つまり生き方をほめてあげてください。なぜなら、子どもは主体性を持って自己決定しているからです。

子どものころから主体性を持って自己決定していくことは、とても大切です。
そういう育ち方をした人は、大人になってからも主体性を持って生きていくことができます。
人が一生を生きていくうえで、主体性を持って生きていくことは本当に大切です。
そういう人は、自分がやりたいことを見つけて、自分で道を切り開いていくことができ、日々目的意識を持って生きられます。自分でつくった目的に向かって、いろいろな工夫や努力を惜しみません。一日一日がとても充実しています。
苦難があってもそれを乗り越えるために全力でがんばれます。うまくいかないときも他人のせいにすることはなく、自分で責任を引き受けます。それによってさらに人間が磨かれ、内面的に成長し、発言する言葉に真実が宿るようになります。
そして、自分が主体的に生きているので、他人の主体性も大切にします。

この反対の人生もあります。
主体的に自己決定することが許されず、常に、親のあからさまな強制、または巧妙な強制によって、やらされることばかりの生活を送っている子もいます。自分のやりたいことが、まったくできない子や、親によって「これがやりたいことだ」と思い込まされている子もいます。

そういう育ち方をした人は、大人になってからも主体性を持って生きていくことは難しくなります。自分がやりたいことを見つけて、自分で道を切り開いていくことができず、自分が何をやりたいのかわからないので、日々の生活に目的意識がありません。
常に他人の意見が必要になり、それがないと目的が作れません。でも、自分で作った目的ではないので、心から燃えることはありませんし、うまくいかないとき、自分で責任を引き受ける気にはなりません。それは他人のせいだと感じてしまいます。会社のせい、上司のせい、同僚のせい、部下のせい、社会のせい、親のせい、ということになり、恨みにつながります。
また、表面的にはうまくいっているときも、常に満たされない気持ちが残っています。

本当に、人間にとって主体的に生きることほど大切なことはありません。それは、生きる意欲の土台でありエネルギーの源なのです。そして、その主体的な生き方に向かって方向づけをするのが子ども時代なのです。
この方向づけは、スポーツができるようになる、勉強ができるようになる、○○ができるようになる、などという個々の事柄よりもはるかに大事なことなのです。それは、人生のメガトレンド(大きな流れ)をどちらの方向に向けるかということです。
主体的な人生か、それとも従属的な人生か?
あなた自身はどちらが良いですか?
もちろん主体的な人生ですよね。

そうであれば、子どもの人生もそうであってほしいと願うはずです。まさか、自分は主体的な人生を望み、子どもには従属的な人生を望むという親はいないはずです。
でも、実際は、日々それに向かって方向づけをしてしまっている親も多いのです。「親心」という美名の下にそうなっている人が多いのです。
これを機会に、みなさん、ぜひ自分を振り返ってみてください。

私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
皆さんに幸多かれとお祈り申し上げます。

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プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

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