どうすればプラス思考で子どもをみることができますか?【前編】[教えて!親野先生]

今週の相談

 

先生は、「プラス思考で……」とよくおっしゃいますが、どうしたらそのようになれるのですか? 中学2年生のうちの娘は、勉強もできないし、運動も苦手だし、だらしないし、私は、毎日怒ってばかりです。先生の回答を見ると「おっしゃるとおりだ!」といつも思います。怒っては良くないと思います。でも実際は、なかなかできません。子どもにも「なんでそんなに怒るんだ」と言われ、その言葉にまたきれてしまいます。性格だと思ってあきらめているこのごろです。(短気母 さん)

 

【親野先生のアドバイス】

短気母さん、拝読いたしました。

まったくおっしゃるとおりです。
私だけでなく、今このご相談を読んだ方々の多くが「まったくそうだ」と感じていると思います。

わかっているけど怒ってしまう。
わかっているけどプラス思考になれない。
わかっているけど変われない。
そう思っている人は多いと思います。

実は私も同じです。
私も、わかっているけど変われない人間の一人です。
変われないことの中身は違いますが、本質的には同じです。

やるべきことを後回しにする。
尻に火が付くまでやらない。
計画性がない。
マイペースで何でも遅い。
のろのろしている。
片付けができない。
だらしがない。
早起きができない。

私はこういう人間なのです。
そして、いつも何とかしたいと思いつつ生きていますが、なかなか変わりません。
以前より少しは良くなったものもありますが、一進一退のものもあります。
まあ、人間なんてこんなもんです。

「わかっているけど変われない」というのが、人間だと思います。
これが人間の常なのです。
そして、短気母さんが変われないのと同じように、子どもも変われないのです。
短気母さんは、なかなかプラス思考になれなくて、怒ってばかりなのも直せないとのことです。
同じように、子どももだらしがないのをなかなか直せないのです。
勉強ができるようになることも運動が得意になることも、なかなかできないのです。

子どもだって怒られたいと思っているわけではありません。
勉強だってできるようになりたいし、運動だって得意になりたいのです。
そのほうが自分もうれしいに決まっているのです。
でも、できないのです。

人間は、誰も、わかっているけど変われないのです。
私は、このことをはっきり理解することが大事だと思います。
そうすれば許すことができるようになります。
というより、許すほかないのです。

変われない自分を許し、変われない子どもを許し、変われない人を許すほかないのです。

ですから、短気母さんも、変われない我が子を許してやってください。
自分だけ許すのではなく、ぜひ我が子も許してやってください。

もちろん、自分を許すことも大事です。
自分を許せないで苦しんでいる人も多いのですから。
でも、自分だけ許して我が子を許せないというのでは、困ります。

ところで、私の経験から言わせてもらうと、自分が本当に変われたのはそのことで大いに苦しんだ時でした。
これは拙著『「叱らない」しつけ』に書いたことですが、私は若いころのある年、自分のクラスの子どもたちを叱ってばかりいました。

その挙げ句の果てに、子どもたちとの心の絆(きずな)がまったくなくなってしまいました。
子どもたちと私の間には、深くて広い溝ができてしまいました。
子どもたちは私に話しかけてこなくなり、私の言うことを聞かなくなりました。
私は毎日学校に行くのがつらくてたまりませんでした。
本当につらく苦しい毎日が続きました。

その時、初めて、私は気が付きました。
自分には、子どもの気持ちを理解して受け入れようという気がまったくありませんでした。

子どものありのままの状態を受け入れ、その悩みや苦しみに共感するという気がまったくありませんでした。
変われない子どもを許すという気がまったくありませんでした。

自分のイメージばかりがあって「ああしなさい。こうしなさい」と言ってばかりでした。
思うようにいかなければ「できないじゃないか。なんでできないの? だめじゃないか」と言ってばかりでした。

子どもを叱ったり感情に任せて怒ったりすることが、どれだけ子どもを傷つけるか。
そして、それがどれだけ人間関係を傷つけるか。
そういうことに、まったく気が付いていませんでした。

子どもたちに総スカンを食った時、私は初めて気が付いたのです。
そして、叱ったり怒ったりする自分を変えようと本気で決意したのです。
本当に自分が変われたのは、このような苦しみの中でのことでした。

でも、それによっても、一度壊れた人間関係を取り戻すことはできませんでした。
その後、新しく出会った子どもたちとは良い関係を築けるようになりましたが、その時の子どもたちとの関係を取り戻すことはできませんでした。

これは、私の教師としての経験です。
教師と子どもだから、まだよかったのです。
でも、これが親と子どもだったらどうでしょう?
これは一生の人間関係です。
そして、一度壊れた人間関係を取り戻すのは非常に難しいことなのです。

短気母さんも、そして現在子育て中の多くの親たちも、みんな頭ではわかっているのです。
でも、本当にはわかっていないのだと思います。
こういう言い方は僭越(せんえつ)ではありますが、私はそう思います。

叱られたり怒られたりする度に、子どもがどんなにイヤな気持ちでいるか。
叱ったり怒ったりすることが、どれほど人間関係を傷つけるのか。
心の絆のない人間関係が、どんなにつらいものなのか。
一度壊れた人間関係を取り戻すのが、どんなに大変なことなのか。
そういうことが、本当にはわかっていないのです。

……この続きは次回で紹介します。



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プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

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