マイナス思考なことばかり言う娘【前編】[教えて!親野先生]

今週の相談

 

保育園年長の娘は、典型的なマイナス思考な子なのか、とにかく後ろ向きなことを言います。たとえば「今日は楽しいことあった?」と聞いても「楽しいことなんかなんにもなかった」と答え、「友達と遊んで楽しかった?」と聞いても、「遊んでいたのに、別の子と遊びだして、少ししか遊べなかったから面白くなかった」と泣いたりします。とにかく、悪いことを先に見つけて、それに考えが集中してしまい、楽しいことには目を向けません。保育園での一日の話を聞いていると、あまりのマイナス思考につい「三人で一緒に遊ぼうって、誘えばよかったじゃない」などと具体的にアドバイスをするのですが、「でも、誘っても断られたらどうしよう」「断られたらいやだからできない」などと、否定してきます。なんとかプラス思考にしたいです。このような子どもに対してどう対応していったらよいでしょうか?(ヨコ さん)。

 

【親野先生のアドバイス】

ヨコさん、拝読いたしました。

確かに、こういう子はいます。
私の教えた子のなかにも、けっこういました。
親が特にマイナス思考というわけでなく、ほかの兄弟も特にそうだというわけでもないのに、なぜか一人だけすごくマイナス思考だという子もいました。
人には誰にも、もともと持って生まれた傾向というものがありますから、そういうことは大いにあるのです。

では、マイナス思考の子にはどのように接すればいいのでしょうか?
結論から言えば、一番大切なのは受容と共感です。
でも、ほとんどの場合、励ましやアドバイスが優先されてしまいます。

子どもが「楽しいことなんかなんにもなかった」などと言うと、親はすぐ「そんなことないでしょ。友達と遊んで楽しかったでしょ」などと言いたくなるものです。
また、たとえば「運動会でビリになったらどうしよう」などと言うと、親はすぐに「大丈夫だよ。がんばって最後まで走ればいいんだよ」などと言いたくなるものです。

親は、子どもにプラスの面を教えてやったり励ましてやったりすれば、子どももプラスに考えるようになると思うので、そうするのです。
でも、このような対応が多いと、子どもはだんだん「自分の気持ちがわかってもらえていない」と感じるようになります。

つまり「自分はこんなにさみしいのに、わかってもらえない」「自分はこんなに心配なのに、わかってもらえない」などと感じるようになるのです。
さらに進めば「言っても無駄なんだな」ということになっていきます。

ですから、まず最優先してほしいのは受容と共感です。
子どもの話を全面的に受け入れて、うなずきながら相づちを打ちながら共感的に聞いてやることが大切です。

子どもが「楽しいことなんかなんにもなかった」などと言い出したら、「うん、うん」と聞いてやってください。
そして、その遊びの様子や、つまらなかった理由、そのときや今の気持ちなどをたっぷり話させてやることです。
「遊んでいたのに、別の子と遊びだして、少ししか遊べなかったから面白くなかった」と言ったら、「そうなんだ。残念だったね」と共感してやってください。

また、子どもが「運動会でビリになったらどうしよう」などと言い出したら、「うん、うん」と聞いてやってください。
そして、その心配や不安をたっぷり話させてやることです。
「運動会のかけっこってイヤだよね」と共感してやってください。

このようにすると、「その子のマイナス思考を肯定して助長してしまうことになるのではないか?」と感じる人もいると思います。
でも、決してそうではなく、むしろその反対です。

このようにすることで、子どもは自分のなかの不満やストレスや心配を吐き出すことができます。
とにかく、こういうものは溜めないことが大事なのです。
溜めておくと、ろくなことはありません。

たっぷり吐き出させて、受容的共感的に聞いてやることで、子どもは心が軽くなります。

同時に、自分の不満や心配がわかってもらえたことで、安心します。
それによって、子どもは大いに癒されるのです。
わかってくれた親に対する信頼も育っていきます。

もし、励ましやアドバイスをしたくても、そのあとにしてください。
子どもの気持ちがすっきりした後でなら「つまらなかったようだけど、何かいいこともあった?」と聞かれて、「○○したのは楽しかった」などと話し始める可能性もあります。
そうしたら「○○で楽しめてよかったね」と価値付けてやったり、「楽しく遊べるようになったね」とほめてやったりしてください。

また、「三人で一緒に遊ぼうって、誘えばよかったじゃない」とアドバイスすれば、「今度言ってみる」と答える可能性もあります。
そうしたら、「大丈夫、今度は言えるよ」と安心させてやってください。

溜まっているものを吐き出さないうちに励ましやアドバイスをしても、それは子どもの心の中に入っていきません。
なぜなら、子どもの心の中にそれを受け入れるスペースがないからです。

……この続きは次回で紹介します。



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プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

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