3人きょうだいの真ん中 甘えん坊の娘[教えて!親野先生]

 

9歳男子と7歳女子と1歳女子の3人きょうだいの真ん中の娘についてです。保育園のときからしっかりしていて、面倒見のいいやさしい性格です。外でがんばっているせいか、家ではパパにべったりでご飯も途中から「食べさせて」、寝るときも「添い寝して」と甘えます。妹が生まれてさらにひどくなり、妹が1歳になったら自分で食べて、兄と二段ベッドで寝ると約束していましたが、できません。1年生になり環境が変わったので、夏休みまで様子を見ていいですか。(ながちゃんさん)

 

【親野先生のアドバイス】

ながちゃんさん、拝読いたしました。

拝読しながら、私が初めて教師になったころに出会ったある女の子、Aさんを思い出しました。

Aさんは、学校で大変しっかりしていました。
当番や係の仕事をてきぱきやって、授業中も集中して取り組んで、リーダーシップもある子でした。

でも、家庭訪問で親の話を聞いて驚きました。
Aさんは、家だととても甘えん坊で、そればかりか、「何をやるにもぐずぐずしていてしょうがない」ということでした。
Aさんの学校での様子しか知らない私には、にわかに信じられない話でした。

でも、その後、こういう子はけっこうたくさんいることがわかってきました。
というより、多かれ少なかれみんなそうなのです。

教師になったばかりのころは、子どもの生態がよくわかっていませんでしたが、だんだんわかってきました。
つまり、子どもは学校で大いに緊張してがんばっているのです。
その分、家ではリラックスして素の自分でいたいのです。
のんびりくつろぎたいし、ぐずぐずだらだらしたいし、たっぷり甘えたいし、とにかく、休みたいのです。

どの子もみんなそうなのです。
そして、学校でとてもがんばっている子ほど、そのギャップが大きくなるということもあると思います。

大人も一日職場でがんばったら、家ではのんびりしたくなります。
家でのんびりできるから、また次の日に外でがんばれるのです。
誰も、四六時中がんばることなどできないのです。

でも、この頃、家でのんびりできない子が増えているようです。
親がしつけにうるさい、勉強のことでうるさく言われる、小さいことですぐ叱られる、ありのままの自分を受け入れてもらえない……。
こういう子は、家でとても緊張して過ごすことになります。
すると、学校でその反動が出ることになります。

ある子は、家でお手伝いをサボるとひどい目にあうので、きっちりやります。
でも、学校では係の仕事などやる気にならないのです。
ある子は、家で親に叱られてばかりで、ときにピシャリと叩かれます。
それで被害妄想的になっているので、学校で友達と肩がぶつかったりするだけで切れてしまいます。
今、こういう子が増えているようで、とても心配です。

ご相談の7歳の女の子も、外でがんばっている分、家ではたっぷり甘えたいのでしょう。

結論から言えば、大いに甘えさせてやればいいのです。

「妹が生まれてさらにひどくなり」とのことですが、これは当然だと思います。
というのも、親の意識や愛情が妹のほうにより多く向いているのを肌で感じているのですから。

もちろん、頭では、「自分はお姉ちゃんなんだから我慢しなくちゃ」という考えはあると思います。
でも、頭ではわかっていても、気持ちは理屈どおりにいかないものです。

ここで親がよくやる間違いがあります。
それは、「お姉ちゃんだからしっかりしてほしい」と考えることです。
「お姉ちゃんとしての自覚を育てなくては……」とか、「お姉ちゃんらしく自立させなければ……」などという考えです。

それで、今までより少し突き放すようにします。
でも、これが最大の間違いです。
これは、まったくの逆効果なのです。

これは、親の勝手な理屈以外の何ものでもありません。
ひとたび子どもの立場に立って、その心理状態を思いやってみれば、これがいかにまずいことかがわかります。

そもそも、上の子は、急に下の子ができて、親の愛情がそちらに行ってしまうのではないかという不安にさいなまれているのです。
これは大人が思う以上に圧倒的に大きな不安なのです。
これは理屈ではどうしようもない、自己存在の根幹に関わる不安なのです。

なぜなら、子どもはとても一人では生きていけないということを知っていて、親の愛情だけが頼りだと本能的に感じているからです。

子どもは自分の非力をよく知っています。
下の子ができたときに、親の意識や愛情が急に自分から離れていくのを感じると、とてつもない不安にさいなまれるのです。

ですから、このとき親が絶対にするべきことは、その不安を取り除いてやることです。

それ以外にはあり得ないのです。
今までと同じように、いえ、今まで以上に上の子に意識を向け愛情を注ぐことが大事なのです。

それなのに、たいていの親がやるのはその反対のことです。
あえて突き放すという親もいますが、まったくのナンセンスです。
これほど子どもの気持ちを無視した行いはありません。
ただでさえ不安なのに、ますます不安になってしまうのです。

たとえその子が「お姉ちゃんだから我慢しよう」「お姉ちゃんだから甘えるのはやめよう」と考えて、実際そのようにしたとしても、その反動は必ずどこかで出てきます。
陰で妹をいじめるとか、ペットを虐待するとか、友達の中の弱い子に冷たくするとか、学校でけんかやトラブルを引き起こすとか……。

あるいは、そのときの欲求不満が原因で、大人になってからもきょうだい仲がしっくりこないということになるかもしれません。
あるいは、成人してからも、どこかしら漠然とした不安や人間不信から抜け出せないとか……。

プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

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