中学校へ進学してから後悔しないために 書いて覚えることを教えよう!

前回は、中学生対象の漢字調査*1の平均点が27.8点だったこと、小学校の漢字にさかのぼって復習をさせている中学校の先生のお話などを紹介しました。記事へのコメント投稿には多くのご意見をお寄せいただき、ありがとうございました。すでに掲載させていただいた皆さまのご意見で、言い尽くされているところはありますが、今回の記事もまた参考にしていただければと思います。

*1「中学生の国語の学習に関する調査報告書」Benesse教育研究開発センター(2005)


子どもの漢字の力と家庭環境の関係

前回は、2005年にBenesse教育研究開発センターが実施した漢字調査で、平均点が27.8点であったこと、中学生の漢字を書く力が不足していることをお伝えしました。この調査では、漢字調査の得点分布をもとに、得点の低いグループを「下位層」、中ぐらいのグループを「中位層」、高いグループを「上位層」の3つに分け、どういう傾向があるのかを分析しています。そのなかの、子どもに関わる先生や保護者の行為「学校の先生や家の人がよくしていること」が影響しているかどうかを見たグラフをご紹介します。【図1】

【図1 学校の先生や家の人がよくしていること(漢字の力別)】


※「とてもそう」と「まあそう」の合計(%)

グラフを見ると、「上位層」と「下位層」で10%以上の開きがあるのは「小さいころ、親がよく本を読んでくれた」「親から本を読むようにすすめられる」の2つの項目で、いずれも漢字の力が高いグループほど、「とてもそう」と「まあそう」の合計の割合が高くなっています。
学校の先生がしている項目(「先生から本を読むようにすすめられる」など)でも差はでていますが、親がしていることのほうが差が大きくなっています。子どもの個人差は、集団全体を対象に指導している先生よりも保護者による差異のほうがでやすいわけです。

このデータのみで、中学生の漢字の力と保護者の行為に因果関係があると簡単に結論づけることはできません。しかし、「本を読んでくれる」「本を読むようにすすめられる」といった行為と、漢字の力に何らかの関係が見られたことは注目されます。特に「下位層」と「上位・中位層」との差が最も顕著だったのは「小さいころ、親がよく本を読んでくれた」で、そういう記憶が残っている子どものほうが漢字テストの成績が良かったわけです。中学生が「小さいころ」として、いつごろを思い浮かべて答えたかは推測せざるを得ませんが、常識的に言えば、小学校低学年か、それより前のことになるでしょう。おそらく「本を読んでくれる」などの項目は家庭環境を示す1つの指標なのだと思います。家庭のあり方が年月を積み重ねて、子どもの学力に影響していると考えられます。

「暗記」をばかにしてはいけません

上記のように家庭環境が大事だとしても、漢字の力という目の前の課題からすると、やや間接的で、対策をとるのが難しいものです。そこで、前回登場した中学校の先生の意見を紹介して、もう少し直接の原因について考えてみたいと思います。

「漢字の力が低下している原因はどこにあると思われますか?」という問いに対する先生の答えです。
「範囲を決めて漢字テストをしてもほとんどできない。最初は練習していないのだろうと思いました。でもノートを見せてもらうと何回も練習している。素直な子どもたちだから言えば練習はしてくる。それでも点数はとれない……。そういう子どもが書く練習をしている様子を観察していて気が付いたのですが、私たちだと書いて覚えるけれどそれができない。書くことと覚えることがつながっていない。だから、書いても頭に残らない。つまり、小さいころにそもそも書いて覚えることを経験していないのでは?」。

「そういう覚え方みたいなことは、小さいころにやっておくべき。小さいときは単純なことの繰り返しができるけど、中学生に『書きながら覚えるんだぞ』と教えてやらせるのはとても難しい。中学校に入ってくる子どもたちを見ていると、小学校の先生や保護者のかたに、『暗記』をばかにしないでほしいと伝えたい。『暗記』というと敬遠されがちだけど、『知識を覚えること』と考えれば大切なことがわかる。漢字練習はつらいから、子どもはやりたがらないけれど、小さいうちから我慢させてやらせるべきことはあると思います」。

この先生の意見に対して、皆さまはどのような感想や意見をもたれるでしょうか。
子どもの漢字の力が不足する原因を1つに絞るのは無理があります。それぞれの子どもによって、具体的な原因や対策も異なるでしょう。しかし、昔に比べて子どもの主体性や興味を尊重する傾向が強くなっているように思います。そのこと自体は否定するものではありませんが、この先生の指摘はそのマイナス面をよく言い当てていると思います。

特に、小学校段階での学習内容は基礎的な事柄が多く、思考力や創造力を発揮する課題もありますが、大部分は「知識を覚えること」が中心になります。もちろん、前回のコメント投稿で「みさぴょん」さんが紹介してくれたような工夫は可能です。しかし、覚えるための学習の主な部分は、単純な反復練習をすることで成立していて、あまり楽しいものではありません。それでも大事であることを子どもに伝え、ある程度までは我慢させてやらせることが大切ではないでしょうか。

中学校での学習は、小学校で学んできた知識を前提にしています。今回、紹介したような小学校の内容まで戻って面倒を見てくれる中学校の先生はそう多くはいません。それだけに、小学校卒業までにそれまでに学ぶべき知識をしっかり身に付けることが重要と言えます。

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