自分でできないことをごまかしたりします[教えて!親野先生]

今週の相談

 

幼稚園年長の子どものことです。子どもが自分でできないことに対して笑ったり、小さな嘘をついてごまかしたりする傾向にあります。ひらがな、カタカナ、自転車の補助輪なしやなわとびなど、これまで大抵のことは時がくれば努力しなくてもそれなりにできてしまいました。しかし、ここにきて鉄棒の逆上がりや竹馬など、練習しなくてはできないことでも「たまたまできなかった」「本当はできる」という自己暗示をかけて自分をごまかし、一生懸命努力するということがありません。なんとか繰り返し練習する習慣をつけて達成感を味わわせてあげたいのですが、どのようにアドバイスをすれば事実を認めてやる気になってくれるのかがわからず困っています。(いっしょにやろうよさん)

 

【親野先生のアドバイス】

いっしょにやろうよさん、拝読いたしました。

「ひらがな、カタカナ、自転車の補助輪なしやなわとびなど、これまで大抵のことは時がくれば努力しなくてもそれなりにできてしまいました」

これらのことがそれほど努力しなくてもできるようになったということは、かなり潜在能力が高いのだと思います。そして、いろいろとうまくできてきた自分に自信ももっていたはずです。

それで、できないことに対して素直に認めたくないという気持ちになっているのでしょう。小さな嘘をついたり、「たまたまできなかった」「本当はできる」と言っているのは、その表れです。できなかったことを一生懸命努力しないというのも、またやってみてできないと嫌だし、プライドが傷つくのが怖いのでしょう。

まだ生まれて6年しか人生経験がないので、こういうときにどうしていいのか分からないのです。それで、とりあえず安全策を取っているのです。

私はこういうとき、親があまり神経質になり過ぎないほうがいいと思います。

親としては、我が子のこういう姿を見ると、なかなか平静でいられないものです。というのも、それがその子の性質そのものに思えてしまうからです。それがその子のもって生まれた性質で、一生そのような性質で生きるのではないかと思ってしまうのです。それで、親としてはとても焦るのです。

でも、決してそんなことはないのです。ご相談のお子さまの場合も、今どうしていいかわからず、とりあえず安全な道を選んでいるだけです。ですから、もう少し様子を見てやってほしいと思います。

そして、決して親としてやってはいけないことはやらないようにしてください。一番いけないのは「情けない子だね」「根性がないね」「弱虫」「意気地なし」「ずるい」などの、人格を傷つける言葉をぶつけてしまうことです。

親の焦りとイライラがそういう言葉を言わせてしまうことがあるので、気をつけてください。

もう一つ、いけないのは、次のようなマイナス思考の言い方です。「練習しないとできないよ」「やらなきゃ、いつまでもできるはずないよ」「なんでがんばれないの?」「悔しくないの?」「そんなやり方じゃだめだよ」「下手だね」。

これらは、すべて逆効果です。

あまり焦らずに親としてやるべきことをやりながら待っていればいいのです。

では、親としてやるべきこととは何でしょう?

それは、我が子が親に愛されていると実感できるようにしてやることです。つまり、親の愛情をたっぷり注いでやることです。そして、我が子のいいところを見つけてほめてやることです。

これらは逆上がりや竹馬とは関係がないように見えますが、実はそうではありません。こういうことで、子どもは気持ちが満たされ、自分に自信をもつことができるのです。

そして、またいろいろなことに挑戦しようという意欲もでてくるのです。

それに、逆上がりや竹馬ができないからといって、必ずしも今すぐそれをできるようにしなければいけないわけではないのです。とりあえず、それはそのままにしておいて、ほかのことで自信をつけさせて、機が熟したら再挑戦させるというのもいい方法だと思います。

壁に行き当たったとき、今すぐがんばってその壁を正面突破するのも一つの方法です。

でも、正面突破だけが人生ではありません。私たち、大人も結構そうやって生きているのではないでしょうか?

ですから、あまり、その子が自分をごまかしているとか逃げているとか思わないほうがいいと思います。ましてや子どもにそういう言葉をぶつけるのは、絶対にやめるべきです。

最後に、逆上がりの練習方法について触れておきます。逆上がりをできるようにしたいときは、逆上がりの練習だけをやっていてもなかなかできるようになりません。地面を蹴っても蹴っても上がれないので、むなしい感じがするだけです。

私が進める逆上がりの練習は、次のようなものです。

まず、すでにできる鉄棒の技をもっとうまくできるように練習するのです。もっと確実に、もっとなめらかに、もっときれいに、もっと素早くできるようにするのです。

すると、体中の筋肉が鍛えられます。当然、逆上がりに必要な筋肉も鍛えられます。

つまり、すでにできる技を楽しみながら練習しているうちに、いつの間にか逆上がりに必要な筋肉も鍛えられるのです。

もう一つ、竹馬の練習方法について触れておきます。竹馬の練習では、足を載せるところをできるだけ低くして練習することです。でも、それでもかかとのところは地面から浮き上がります。そこで、浮き上がった部分に何かを取り付けて、地面から浮かないようにします。つまり、女性の履くハイヒールのヒールの部分をイメージしてください。

できあがった竹馬は、ハイヒールに竹の棒が付いたような状態になるわけです。つまり、ハイヒール竹馬です。そのハイヒール竹馬で少し歩けるようになったら、ヒールの部分を少し短くしてやれれば最高です。

そうすると、地面との間が少し空きます。それでまた練習するのです。こうやってスモールステップで進めれば一番いいのです。そこまでは無理だとしても、このハイヒール竹馬は効果があります。

なお、練習に付き合うときの声かけは、ぜひ、プラス思考の言い方で言うようにしてほしいと思います。マイナス思考の言い方をされると、やる気は出ません。

次の二つを比べてみてください。

「竹を前に傾けなきゃダメだよ」
「竹を前に傾けるとうまくいくよ」

「なにやってるの?」
「そうそう、今のいいね」

「まだまだだな〜」
「だんだんうまくなってきたよ」

「だめだめ、それじゃだめだよ」
「そうそう、今のいいね」

「なかなかできないな」
「もうすぐできるよ」

私ができる範囲で、せいいっぱい提案させていただきました。少しでもご参考になれば幸いです。いっしょにやろうよさん親子に幸多かれとお祈り申し上げます。

プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

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