あなたは子どもをほめていますか【後編】
あなたは昨日子どもをほめてあげましたか。「子どもをしかるのは毎日だけど、ほめるとなると難しい」と感じている方は多いようです。何をどうほめていいかよくわからないという声も聞きます。今回は、前編に続き「あなたは子どもをほめていますか【後編】」をお届けします。「ほめる・しかる」際に親として気をつけるべき観点を、学齢差を踏まえながら、寄せられたご意見を交えて考えてみたいと思います。
子どもをほめても変わらない?
子どもは、無限の可能性を秘めています。大人の人間関係でも同様であるように、ほめられると、エネルギー(前向きな態度)がわいてきます。その可能性をたくさん引きだすためには、まずほめることを家庭で意識することが大切ではないでしょうか。子どものプラスの面に目を向け、肯定的にとらえ、ほめて伸ばすためには、いくつかのポイントがあるようです。
「相手をほめるとは、心から感動することです」
つまり、子どもの日ごろの活動に価値を見いだすということではないでしょうか。大人から、親から見れば「なんだ、そんなもの」「なんだ、そんなこと」ということに、ほめる価値を見いだすのです……。つまり、お母さん、お父さん、保護者としての柔らかい感性がポイントになるようです。ところが、実際はなかなかうまくほめられません。
「小学校高学年や中学生になってからというもの、憎まれ口ばかりたたいて、いったい何をほめるべきか……」
「こっちの言うことを聞きはしないし、ほめるところなんて日常生活ではなかなか見つからない。まして、ほめたところで、効果なし……」
まさに、高い壁が立ちはだかっているようです。
今回、教育発見隊のメンバーの皆さまに、「お子さまを『ほめた』あと、お子さまの様子は変わりますか?」とお聞きしました。【図1参照】

「またほめられようと、次もがんばっている」が40%と高い割合を示しました。しかし「うれしそうだが、すぐに次につながることはない」(46%)といった、少し冷ややかな回答がそれを上回りました。
この2つの回答だけで、全体の86%を占めていますが、それぞれの2つの回答を学齢別にみるとどうなるでしょう?



【図2】のデータで、「またほめられようと、次もがんばっている」「うれしそうだが、すぐに次につながることはない」割合を、入学前、小学4年生、中学生の3つの学年別に比べてみます。
小学校入学前の子どもは「またほめられようと、次もがんばっている」の割合が多く(59%)、「うれしそうだが、すぐに次につながることはない」割合は32%程度です。しかし、小学校中学年あたりから、「うれしそうだが、すぐに次につながることはない」と感じるケースが徐々に増え、4年生ではその割合は46%にまで増えてきます。中学生ともなると「うれしそうだが、すぐに次につながることはない」の割合は49%、「またほめられようと、次もがんばっている」の割合は25%(小学4年:42%)にまで減少していきます。
子どもの成長過程ごとに、「ほめる・しかる」段階での保護者の言葉のかけ方、その事後フォローのあり方も子どもをしっかり見つめながら、変えていく必要があるのだろうと思います。
ほめるための技術
子どもをしかるときにマイナス思考に陥っていることはありませんか? いわゆる「減点法」です。
「宿題はしたの?」「どうして帰ってからすぐにしないの?」「またTVのスイッチつけっ放し!」「何度言わせるの……」などとこのような考え方では、いいところは見つかりません。なぜなら、こういう場合は、悪いことをさがそうとする気持ちが先立っていることが少なくないからです。そうではなく、子どものいい点を見つけ、ほめる努力が必要です。
子どもをほめる大前提は、自分をほめること、保護者として自信をもつことかもしれません。もちろん、人間誰しも欠点はあるでしょうし、足りない点も多いでしょう。
しかし、自分をほめられない人は、なかなか子どもをほめられません。実は周囲の友達や知人にも知らず知らずのうちに厳しい態度で接していることはないでしょうか? 大切なのは、わずかな微細なことのなかに、子どもの価値を見いだす姿勢が大切です。やはり、気持ちに余裕がないとダメですね……。
そして、作為的なほめ言葉は、すぐに見抜かれます。子どもは大人の演技、作為的なほめ言葉を直感で見抜くことは、保護者の皆さまが子どもの頃を振り返っても、思い当たる点は少なからずあるのではないでしょうか?
逆に、本心からほめたとき、子どもの心に「すーっ」と入る。見ていて思わずほめてしまう……これが本心と言われるものではないでしょうか?
ほめるとは、感動を表に出すことです。それには、うわべだけの言葉でほめるのではなく、目でほめ、顔(表情)でほめ、手でほめ、からだ全体でほめてあげることが重要でしょう。
教育発見隊メンバーの皆さまに、「ほめる」とき、「しかる」とき、どのようなことに気をつけているのかを聞いています。
- ほめるときは自分も子どもと同じ気持ちになってほめるようにしている。言葉だけじゃなく態度でも表現している。しかるときはなぜしかっているのか理由をきちんと伝えるようにしている。しかったあとはしかりっぱなしにしないようにしている。(小学校入学前)
- ほめるときは、子どもが喜ぶ言葉をたくさんかけてあげるようにして、しかるときは子どもに理解しやすいように、自分の感情をぶつけるのではなく諭すように心がけています。(小学校入学前)
- しかるとき:人格を傷つけず、その行為自体をしかるようにしている。感情的にならず、声のトーンを抑えて静かに冷静にしかるようにする。くどくならないよう簡潔に。厳しくしかったあとは、必ずフォローを入れる。
ほめるとき:大げさすぎず冷静すぎないように。そのこと自体をほめる。抱きしめる。スキンシップを必ずしながらほめる。(小1) - 必ず目を見てほめてあげる。しかるときは前のことを持ち出してはいけないが、兄弟一人をほめるときは、もう一人も前のことを持ちだしてもちょっとほめてあげる。逆にしかるときは、本当に後から後悔することが多いので、感情に流されないようにということだけ気をつけています……気をつけたいですね。(小1)
- ほめるとき、抱きしめしかるときは、子供の目線よりも下から話をする。(小2)
- 当たり前のことかもしれませんが、目を見て話すようにしています。ほめるときはがんばったことに対して、うれしい気持ちを素直に伝えて、しかるときは何でしかっているのか自分の気持ちを伝え、子どもの気持ちも必ず聞くようにしています。(小4)
- さりげなく大げさでなく心の底からほめる。しかるときは決して他人や兄弟と比較しない。(小5)
- ほめるときは思いきり大げさに、また親戚が集まるときにも「こんなことがあった」とほめてもらいます。しかるときは、隣にすわらせて話を聞き、自分で気がつき、解決できるように話を進めます。時間がかかりますが……。(小6)
どうしてほめるのか。それは、子どもを伸ばすためであるはずです。幼少期から小中学生、さらには高校生の時期にいたるまで、自分を認められてうれしくない子どもはいないはずです。
わずかなことでも、人はほめられるとうれしいものです。ほめられると、子どもの目が輝くはずです。
今回も教育発見隊アンケートの回答のなかに、多くのヒントがありました。皆さまの回答をまとめると、おおよそ3点に絞られてくるようです。
1番目は、「子どもにわかるようにほめたりしかったりすること」。
子どもの理解できる言葉ではっきりと、そしてしっかりと目を見て、論理的に言うことが必要です。
2番目は、子ども自身をほめたりしかったりするのではなく、「子どもの行動をほめる・しかる」こと。「○○ちゃんはいい子ね」と言うのでなく、「約束どおりきれいに後片付けができていて、お母さんの出番がないわ」「最近、自分から進んで決めた時間に勉強をスタートさせているわね」などというように、行動に対して具体的にほめることです。
3番目は、「ほめる・しかるは終始一貫していること」。いいことをしたときは必ずほめ、いけないことをしたときはいつでもしかることです。お寄せいただいた回答からは、ほめるときもしかるときも、感情的にならない、誰かと比較しないことに気をつけている様子が多く見受けられました。
「きょうだい」や「クラスメート」「親戚の子ども」などと比較するのは、ときに親の都合や見栄といった気持ちが見え隠れしていませんか。相対的にほめるのと、絶対的にほめるのは、同じように見えても天と地ほど違います。まず、自分の基準でほめていないか。保護者として、自分に都合のいいことのみほめていないか……自分の「ほめる」基準、尺度を見直すことが重要ではないでしょうか。
ほめることは、親としての自分をさらけだすこと
ある静岡県の高校の先生を「保護者を巻き込んだ大学進学指導のありかた」というテーマで取材したときのことです。
その先生は、子どもと保護者の関係性に関して、こう発言されています。
「私が高校の保護者の方々に非常に大切だと伝えることがあります。それは、「ご家庭で毎日お父さんをほめていますか。お父さんの毎日に気配りできていますか」という投げかけです。裏を返せば、夫婦仲や家族の仲が配慮のないものであったり、家族間の目配せができていない環境で、子どもへのほめる・はげます・しかる……は成立しません。目標の大学を目指し日々勉強する子どもにとって、まさに内助の功、家族との関係性、家族同士でほめたり、はげましたりといった本音のコミュニケーションが成立していることが重要なのです」
いわば、見せかけの言葉ではなく、また子どもに傾倒するだけのコミュニケーションでは、本物の「ほめる・しかる」が成立しにくいのかもしれません。
ほめることは、保護者としての自分をさらけだすことです。自分の見方、考え方が露骨に出ます。皆さま自身が、なにかに目を輝かせて感動しながら話をすることや、 実際にほめられてうれしかったりしたことなどをどんどん子どもに話してみてはいかがですか?
これらは、自分がほめられた体験を思い出すと、子どもの気持ちがわかるはずです。たとえば、たった1つほめられたことが今でも心に深く残っている出来事はありませんか?
さらに感情だけでしかっては、子どもは傷つきます。まちがえたこと、しかられた理由を理解させ解決するにはどうすればよいのか……。それには、考える余裕を子どもに与え、最終的に一緒に考えようとすることが重要なはずです。
また、発見隊のアンケートでは、「ほめる、しかるにはタイミングが問題で、タイミングを逃さないように気をつけている」などの回答も多く見受けられました。「ほめる・しかる」とは、子どもに生きた言葉で、「生きる力」を与えることに尽きます。そのタイミングの取り方次第で、子どもがどんどん変化していく可能性があるのだと思います。
そして、ほめることで実は一番変わるのは、実は保護者である皆さま自身かもしれません。
最後に教育発見隊メンバーの皆さまの回答のなかから、お伝えします。
- 親として日々凛とした態度で生きているか、どう生きているか、これしか子どもに伝えることはありません。親がいい人生をしっかりと歩むことで、ほめること、しかることがもっと意味を持ってくるはず。そして、常に相手の目を見て、言葉にエネルギーをのせることが大切だと思っています。(中学生)
ほめることの難しさと、その大切さを今回、教育発見隊の皆さまにも多く教えていただきました。ありがとうございました。
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