子どもを犯罪者にしないために親ができることはあるの?【後編】

先回にひきつづき、児童精神科専門病院・都立梅ヶ丘病院の市川宏伸院長にお話を伺った。

ところで梅ヶ丘病院に訪れる主な理由はこういうものが上位にランクされる。「落ち着きがない」「興奮・衝動的」「ことばの遅れ」「不登校」「強迫症状」「発達遅滞」「対人交流障害」「攻撃・他傷」「気分変動」……。

 こういう症状は親にはとても不安を与える材料でつい叱責し体罰さえ与えてしつけようと思いがちだが、それが事態を悪くしてしまうのだ。「叱り続けるのは最悪の接し方」なのである。「ルールを教えることは必要ですが、受け入れがたいことは認めない。感情的に叱ってしまったときは謝る。でも内容については譲らないことが大切です」

 そのうえで大事なのはここだ。「よいところを注目してほめながら伸ばす。憎らしいから叱るわけではないと、日頃から愛情をもっていることを伝える。そうすれば問題行動はだんだん減っていきます」

 感情的に叱りつけ、ふるまいかたひとつひとつに干渉すると、子どもは親から見捨てられる不安に駆られ、いっそう攻撃的になり、反社会的行動をとるかもしれない。

 いいところなんてひとつもないと思う気持ちをグッとこらえ、「いいところ」を見つけて認めてあげよう。そして「愛している」ことを伝えてあげたい。

 ところで市川先生に子どもを健全に育てるために必要なことは? と伺ったら、意外な言葉が返ってきた。「お母さんをバックアップしてあげることが必要です」

 梅ヶ丘病院を訪れるお母さんたちはよく勉強していて知識も情報も豊富だ。ときに市川先生も知らないような治療法をインターネットで探し出してくることさえある。「でも、そういうお母さんは孤立して追い詰められていることが多いんです。夫や義母などまわりから、お前の育て方が悪いと責められている。友人や知り合いにも、相談することができなくてひとりで抱え込んでいるんです」

 市川先生にはそういうお母さんのつらさがよくわかる。じつは問題行動の本人よりお母さんから相談され、お母さんと相談しながら治療することが多いのだ。「お母さんをサポートしてあげるシステムや社会的制度作りが急務ですが、不十分な今はなるべく孤立しないようにすることが、追い詰められないために大切だと思います。孤立しないで、まわりの友人や子育て仲間に悩みを相談したり口にしてるひとは、わが子に問題があっても、そのうち成長してなんとかなるわよという気持ちのゆとりがあります」

 人間は孤立に弱い。どんどん悪い方悪い方に考えがいってしまう。だからこそまわりの人の言葉や相談できる人の存在が支えになるのだ。

 でも現代はそういう「まわり」がいないことが本当の問題なのかもしれない。

 つけ加えるとインターネットのサイトでの情報交換はとても貴重だが、やはり人間、わずらわしいけれどじっさい会って話す相手こそ、孤立から救ってくれるのだと市川先生は言う。

 お母さんのバックアップが必要というお話と、孤立してはいけないというアドバイスが心にしみた。子どもの問題行動にナーバスになりすぎてしまうのは、私たちが孤立無援で子育てしていることの裏返しなのかもしれないなと思ったのだった。

プロフィール

杉山由美子

NPO法人 孫育て・ニッポン理事長、NPO法人ファザーリング・ジャパン理事。「母親が一人で子育てを担うのではなく、家族、地域、社会で子どもを育てよう」をミッションに、全国にて講演、プロジェクトを行う。東京都北区多世代コミュニティー「いろむすびカフェ」アドバイザー。産後のママをみんなでサポートする「3・3産後サポートプロジェクト」発起人。著書、共著に「ママとパパも喜ぶ いまどきの幸せ孫育て」(家の光出版)。

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