子どもと安全について【前編】お母さんの思い、まずはわが子へ防犯教育

今回から2回にわたって、「子どもと安全について」をテーマにお届けします。ご協力くださった912名の皆様、ありがとうございました。いただいた回答からは、とにかく子どもを守りたい! 守らなければいけない! という皆さまの願いと決意がひしひしと伝わってきました。今回は、教育発見隊の保護者の皆さまが、いま子どもを守るためにどのようなことが心配で、どのように気を配っているのか、などについて見ていきたいと思います。

子どもの安全、97%が「心配」

  • 犯罪がこれほど多発している世の中で、何をすべきで、それがどんな効果をもたらすのかわからない。難しいです。(小5)
  • 残念ながら、他人は信用できない時代になってしまったのは事実。見知らぬ人から声をかけられたらまず疑うくらい注意することからきちんと教えなくては、と思っています。(小5)
  • 学校が終わったら寄り道をせずまっすぐに家に帰らせている。存分に外遊びさせてあげたいが、安全には替えられない。(小1)
  • どうしてこんな危険な世の中になったのか、誰に守ってもらえるかというよりも、まず子ども自身が1日も早く自己防衛できるように学んでほしい。(高校生)
  • 我が子もよそのお子さんも、子ども自身の防犯意識が自分たちの子ども時代と比べて不足している気がします。(小6)
   ※ カッコ内は子どもの学年です(以降も同様)。

これらは今回のアンケートでいただいたフリーアンサーのごく一部です。
いま、子どもの安全がおびやかされています。しかもそれは、ごく限られた地域や条件のもとではありません。かつて自分が子どもだった頃の社会と比べながら、とにかく子どもを守るために見えない相手と戦わなければならない、そんな皆さまの強い思いが伝わってくるようです。

子どもの安全について心配することが「ある」(「よくある」と「ときどきある」の合計)と答えた人は、全体の97%にのぼりました【図1】。もっとも心配の度合いが高かったのが小学校入学前の女の子を持つ保護者で、実に83%の方が「(心配することが)よくある」と答えました。また、子どもを持たない方々も全員が「(心配することが)ある」と答えており、子どもの安全という問題がいかに深刻で多くの人の関心事となっているかがうかがえます。

【図1 あなたは子どもの安全について心配することがありますか?】


最大の心配事は「犯罪」と「事故」

では、具体的にどのようなことが心配なのでしょうか。11項目の選択肢からあてはまるものをすべて選んでもらったところ、全体の9割の方が選んだのが「事故(交通事故など)」でした【図2】。次に「犯罪に巻き込まれること」(74.3%)と「登下校や習い事の行き来」(71.8%)が続きます。平均すると、回答者は一人当たり4・5項目にチェックしたことになり、このことからも子どもの安全に関する思いは尽きず、かつ多岐にわたっているようです。

【図2 子どもの安全について、どのようなことが心配ですか?(複数回答)】

学年別に見ると、高校生以上の子どもを持つ保護者は「事故」を挙げる割合が高いようです。これは、通学距離が長くなり交通機関を使う機会が増えることや、オートバイに乗る機会が出てくること、アルバイトなどで行動範囲が広がる(しかもその状況を保護者が確認しにくくなる)ために事故への心配が高まる、といった背景がありそうです。また、「いじめ」についても全回答者の半数近くが心配していることや、入学前の子どもを持つ保護者は、他の学年と異なり病気やけがを心配する割合がとても高い、などの傾向が見られます。

  ※ なお、「『もっとも』心配なこと」を1つだけ選んでもらった場合は1位が「犯罪に巻き込まれること」で、
    2位との順位が逆転しています。グラフはこちらをご覧ください。

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登下校や習い事の行き来については7割以上の方が「心配」と答えていますが、関連して、集団登下校の実状についても訊いてみました。小学生の保護者のアンケート結果をみると、集団登校を行っているケースは約半分(50.3%)でした。集団下校の場合はさらに減って22.5%となり、「スクールバスがある」はまだ約2%にとどまっています。一方、保護者自身が送迎する割合は47.3%にのぼっています。また、子どもを一人にさせないための手段としては、学童保育よりも祖父母や知人に協力を得ている割合が高いようです【図3】。

【図3 子どもの安全を守るためにしていること(複数回答)】
  • 子どもが少ない地域では、集団登校できるほどの人数もいないため、子どもは一人で登校せざるを得ません。小学校の低学年までは、親の送迎、もしくは通学バス利用を考えたほうがよい。(小学校入学前)
  • 子どもが犠牲になった事件を受けて、親同士で子どもの登下校を見守りましょうという話が出たが、実際の会合に出席したのは10人以下でした。(小2)
  • 集団登下校はなく、学校やPTAが見回りや注意を促している。また、塾の帰りが遅くなるので心配。(小6)

文部科学省では、放課後に学校の校庭や教室を使って、安心して活動できる子どもの居場所(活動拠点)を設ける「地域子ども教室推進事業」を拡充したり、厚生労働省では学童保育施設の増加や、送迎・放課後の預かり等の相互援助活動を行う「ファミリー・サポート・センター」の設置促進を行ったりしていますが、まだまだニーズに追いついていないのが現状のようです。また、地域に開かれた学校と安全確保の問題も悩ましい課題です。いずれにせよ、当事者だけでは人数が限られるなかでこうした活動を根付かせるには、地域の協力も欠かせません。学校も、行政も、そして保護者も、改善できる点はまだまだありそうです。

  ※ 「地域子ども教室推進事業」「学童保育」「ファミリー・サポート・センター」については、
    「高まる学童保育への期待」をご参照ください。


安全の対価は月2,200円??

ところで皆さまは、子どもの安全を守るために、毎月どれくらいの金額ならば支出してよいと思いますか? ごちそう1回分くらい? 携帯の通話料くらい? それともプライスレス??
今回のアンケート結果では、「1・2,000円」が55%と過半数を占めました。「0円」は全体の約4%にすぎず、逆に「5,000円以上」は約6%でした【図4】。

【図4 子どもの安全を守るために支出してよいと思う金額は、毎月どのくらいですか?】

なお、回答を平均すると、ひと月あたり2,203円となりました。ただし、
  • 必要ならいくらでもいいと思います。子どもは何にも換えられません。(小3)
  • 安全のためにお金を出すということを考えたことがないのでよくわからない。(小2)
  • まず金額でなく内容がメインなので、内容により金額には幅があるのでは?(小5)

といった意見にもあるとおり、払ってもいいと思う(または実際に払うことができる)金額と、子どもへの愛情の深さや実際に手に入る安全の度合いが単純に比例するわけではありません。

では、子どもの安全を守るためにまず何をすればよいのでしょうか。いただいたフリーアンサーには、「防犯教育」や「子どもを一人にしない」などの大人から子どもへの働きかけを重視する意見と、「地域の連携」「学校や警察との協力」など大人同士のつながりが大切、とする意見が目立ちました。

  • 子どもへの教育。たとえば近所の人とかかわり挨拶をすることなど、当たり前なのにやっていないことがたくさんあるのでは。(小4)
  • 学校と地域と保護者が子どもたちを守ろうという考えで連携をとり、交流を深めることが大事だと思います。私自身PTAの役員をしていますが、地域と連携し、登下校の防犯のパトロールとして、保護者と地域の自治会の方々と取り組んでいます。地域の方は防犯ボランティアに登録していただき、防犯用ジャンパーを着用し、登下校の際、子どもたちの通学路の各所に立ち、防犯と交通安全を兼ねて、協力いただいています。保護者の方々も同様に、登下校時や学校の行事の際に、防犯パトロール用の腕章を着用してもらっています。(小4)
  • 親自身が情報を得る努力をすること。私の住んでいる地域では、警察によるメールサービスが始まったので、そういうものを最大限に生かす。(小6)
  • 警察や行政などは、どうしても大人の視点になりがちです。子どものことが一番理解できるのは保護者のはず。まずは保護者が子どもの視点に立って安全を確かめ、危険があればなくすよう働きかけることが大事だと思います。(小4)
さらに、
  • いまは「守られる立場の子ども」でもいずれ「加害者」となる可能性を秘めている。「加害者」に成長しないために、小さい頃から、「地域(皆)に守られている」ことを意識させることが必要だと思う。「守られて」育った子どもは、「加害者」になりにくいのではないか。(中学生)
  • 罪を犯したときに、犯人の家族はどのような心境で、その後どのようになったとか、犯人は犯行後どのような一生を送ったなど、そういうことをメディアで伝えて、犯罪の抑止力としてほしい。(小3)
  • 家庭で、子どもの気持ちや動向に注意を向けることではないかと思います。そして、(子ども自身が)家族の大切な一員であることを感じられるように成人させることが、子どもの安全を守るために大切なことだと思います。(中学生)

など、被害者にならないための努力だけではなく加害者を作らないための努力も大切である、という意見もありました。確かに、さまざまな要因があるとはいえ、いじめの問題や犯罪の低年齢化などを考えると、「うちの子が周囲に危害を及ぼすはずはない」と断言することが難しくなっているように思えます。そうならないためにも、愛情をもって子どもを見守ることや、子どもが「自分は愛されている」と感じられるきっかけをたくさん作ってあげる--これが保護者をはじめ周囲の大人がすべきことの一つではないでしょうか。
                                       (次回に続く

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