未来の義務教育に望むもの【前編】

今回は、2005年8月3日〜2005年8月10日にアンケートを実施し、778名の方からご回答いただきました。熱心で真摯なご回答を数多く寄せていただきました。ご協力ありがとうございました。さて、今回のテーマは前回の速報版に引き続き、「教育改革」について。保護者の方が日ごろ気になる学校教育の仕組みや、教育制度のこれからについて、中央教育審議会(中教審)の検討課題を中心にみなさんに伺っています。 速報版でお伝えしたとおり、これからの日本の教育はどこにいくのか、現在の学校教育に抱く不安感を感じさせる回答がやはり目立ちました。

義務教育の改革のゆくえ
教員の数を増やして欲しい〜複数担任制や少人数による指導を行ってほしい:92%
全国学力調査は必要


 
義務教育の改革のゆくえ

日本の学校教育はいままさに変革期にあります。
学校でおこる「いじめ」「学級崩壊」「学校嫌い・不登校」、さらには学力の国際間比較をしたOECD(経済協力開発機構)のPISA調査でも問題となった「学力低下問題」などは、解決していかねばならない課題です。
家庭で子どもの学習時間が低下してきた一方で、中高一貫教育校や有名高校、大学を目指す競争は激化する方向にあり、学習習慣や学力の二極化も徐々に問題視されてきています。

また物質的な豊かさを享受し、なに不自由なく育ってきた現代の子どもたちは、学校生活に限らず「けじめ」「協調性」「集団などのルールを守るという規範意識」なども未熟であることが多く、孤独でひとりよがりな態度を目にすることが増えてきました。

今回の教育発見隊でのアンケート調査に先がけ、2003年12月〜2004年1月にBenesse教育研究開発センターと朝日新聞の共同で、「保護者の意識調査」を実施しています。
そこでは、小、中学生の保護者の3分の2は学校同士が競争をすると教育は悪くなるととらえ、7割は地方ではなく国が教育内容を定めたほうがいいと考えている、こんな傾向が表れていました。

2005年度春から、義務教育の国庫負担のあり方が議論されています。いま、国の義務教育費の7割が教職員人件費ですが、この人件費は今まで国の予算で半分、地方で半分出していました。これを全て地方予算に委ねようという議論がありますが、今回どちらに賛成かを教育発見隊メンバーのみなさんに聞いています。

その結果、「義務教育は国が予算を確保し、全国どこでも同じ水準で教育が受けられるようにすべきだ」とする回答が81.5%と多数を占めました。逆に「各都道府県で、その地方にあった教育施策を行いやすくするために地方に財源を委譲すべきだ」との回答は10.5%でした。


 
教員の数を増やして欲しい。複数担任制や少人数による指導を行ってほしい。:92%

先の朝日新聞との2004年度の共同調査「保護者の意識調査」(PDF)によると、教育改革の具体策では、小学校での英語学習の導入や習熟度別授業の導入を8割以上が支持し、土曜日の補習や学校選択制も過半数が支持の意向を示し、子どもへのきめ細かな対応を求めている様子がうかがえました。

一方教育発見隊でも、今回授業や学習指導に関して「複数担任制や少人数による指導を行う」「習熟度別の授業を増やす」「年間の授業時間を増やす」などの項目について、賛成か反対かを聞いています。

その結果、複数担任制や少人数による指導を行うことに賛成の方は、「賛成」「まあ賛成」の合計では約92%、習熟度別の授業を増やすことに賛成の方は約80%、年間の授業時間を増やすことに賛成の方は約74%を占めるといった結果でした。【図1】

【図1:授業や学習指導に関してのご意見】


今の学校に対して、保護者の方々は2004年度の調査同様に、子どもたちの実態にあわせ、少人数教育などでしっかり見て欲しい、そして今よりも授業時間数を増やし、教育の質(学力)保障を求めている様子がうかがえます。
実際、朝日新聞との共同調査による2004年度のアンケートでは、文部科学省の「ゆとり教育」への支持率をみると、学校週5日制には、反対が根強かったのです。

実は、7月30日に 文部科学省は公立小中学校が自らの裁量で学級編成を行えるように制度を改正する方針を固めたとの報道がありました。

これは、個々の学校ごとに、学年ごとに学級の人数を変えたり、不登校対応に専念する教員を置いたりするなど、さまざまな問題を抱える実情に合わせて対応できるようになるシステムです。
今後は、「現場の主体性と創意工夫で教育の質を高める」と中央教育審議会でも提言しており、少人数教育をはじめ習熟度別授業さらには土曜日の扱いなど、ますます個々の学校が地域の教育委員会と連携しながら、責任を持って運営していくことになります。

 
全国学力調査は必要

今回、学力調査についても伺っています。現在の学力や到達度合いを計測する「学力テスト」は義務教育で必要だと思うかと聞いていますが【図2】、『必要+まあ必要』との考えを持つ方が、合計で約81%を占めるなど、肯定的な意見が多数を占めました。客観的な指標がないことへの不安を抱く保護者の方々もいますが、教育活動の成果をより客観的材料で測定し、教育改革の方向軸を定めていくことに、大きな反対はないようです。

【図2:義務教育に学力調査は必要か】
図2:義務教育に学力調査は必要か
一方、総合的な学習の時間では、意見が少し割れたように思います。【図3】
今回のアンケートでは、「総合的な学習の時間は増やすべき」と考えている保護者の方々はわずか8%、今のままでよいと答えた方を加えても、半数に満たない結果となり、「減らしたほうがよい」「やめたほうがよい」と否定的な考えを持つ方々は、24%を占めます。

ベネッセの教育研究開発本部が2005年に文部科学省から受けた委嘱調査では、学校の先生方に「総合的な学習の時間」をどう考え、捉えているかを聞いている項目があります。そこで見ると、『なくしたほうがよい』と答えた小学校担任は38.3%、中学校担任は57.2%の高い割合でした。 (「とても」「まあそう思う」の合計)

【図3:義務教育に総合的な学習の時間は必要か】
図3:義務教育に総合的な学習の時間は必要か
学校現場の担任のほうが、保護者の方々より高いスコアで、総合的な学習の時間の運営への否定度は高い結果が出ています。
これからの総合的な学習の時間のあり方に関しては、中教審特別部会でも審議中です。2005年秋に向けて具体的な方向性が盛り込まれる可能性があります。楽しみにしている子どもたちも多いだけに、その議論のゆくえが注目されます。

さて、今回「教育改革」へのお考え、ご意見をまとめてきました。
ご家庭でも、子どもや学校の様子などから保護者の方々は多くの問題意識をもち、その教育改革、学校教育に対する意見を持っておられます。そこで次回「詳報版【後編】」として、再びご回答いただいた方々のフリーアンサーを中心にレポートをご紹介します。お楽しみに。

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