「e-ポートフォリオ」と多面的評価、高校入試にどう関連する?【高校受験】

大学入試改革では、高校時代に取り組んだ総合学習、部活動や生徒会活動、学外での活動も多面的に評価しようという動きが進んでいます。「多面的評価」への動きは、高校入試とも無縁ではありません。
今回は、多面的評価と「e-ポートフォリオ」の考え方と高校入試との関係についてお話しします。

e-ポートフォリオは、自分で書き込む「高校生活全般の記録」

現在進められている大学入試改革では、学力の3要素「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力」、「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」を総合的・多面的に評価しようとしています。この3要素のうち、「主体性」を評価するためのツールとして、文部科学省は委託事業で高大接続ポータルサイト「JAPAN e-portfolio(ジャパン e-ポートフォリオ)」を構築しました。これは、「探究」など校内での研究活動やフィールドワークへの取り組み、部活動やボランティア活動、取得した資格や検定、生徒会活動や行事などについて、高校生自身が1年次からウェブ上に書き込んでいくシステムです。レポートや論文、写真なども添付できます。蓄積された高校時代の活動や学びの記録は、大学入試の出願時に利用することができます。
「JAPAN e-portfolio」は、関西学院大学が代表校となり、国立・私立計8大学(大阪、大阪教育、神戸、早稲田、同志社、立命館、関西、関西学院)が文科省の委託を受けて構築・運営に当たっています。また、全国でかなり多くの国公立・私立大学が、平成31年度入学試験において「JAPAN e-Portfolio」を活用すると表明しています。ただし、活用のしかたや、データを出願時に求めるかどうかは大学・学部によってさまざまです。

なぜe-ポートフォリオへの記録が「主体性」につながるのか?

「主体性」というと漠然としていますが、自ら学びたいテーマを見つけ、それをどのように深め、発展させていくのか、自ら探究していく力が求められているといえます。大学側としては、単に「学校の成績のよい」学生だけでなく、学びたいテーマを持ち、意欲や志がしっかりしている学生が欲しいわけです。では、e-ポートフォリオは主体性の評価にどう役立つのでしょうか。

「評価」というと、e-ポートフォリオに「何をどう書けば有利なのか」と考えたくなると思いますが、実は評価以前の問題として、「記録していくこと」そのものが主体的な学びにつながると考えられています。

たとえばサッカー部に入っている子が、日々の練習でうまくできたことやできなかったこと、上手な先輩やプロ選手のプレーを見て気づいたこと、試合の振り返りやその前後の思いなどを記録しながら、もっとうまくなるにはどうしたらいいか常に考えていたとしたら、おそらくその子は、漠然と練習している子より上達するに違いありません。また、実践と記録を通して気づいたことや発見したことは、たとえ「地区大会で優勝する」といった結果につながらなくても、その子の思考力や判断力の源泉となります。たとえば、ケガの経験を通じて医療の道に進んだ子の話を聞いたことがあります。チーム運営の経験から社会学や経営学に興味がわいたり、挫折をきっかけに心理学や哲学を志したりするケースもあるかもしれません。「考える力」は机上での勉強だけでなく、さまざまな原体験をベースに育ちます。体験を記録し、振り返ることで、学びの成果や課題、興味の方向性を自覚することができるのです。

e-ポートフォリオのよさは、成果だけでなくプロセスを見ることができる点です。成果のみであれば、試合の優勝者やコンクール入賞者など一握りの生徒しか評価されないことになります。大学側はポートフォリオを通じて、生徒の日常的な取り組みを知り、各学部・学科のアドミッションポリシーに合った生徒の選抜に役立てることができるわけです。

今後の高校入試との関連は?

高校入試も、前述の「学力の3要素」を重視する流れにあります。生徒の主体的に学ぶ力を評価するため、各都道府県、各高校で、作文・小論文や面接、グループ討論、プレゼンテーションなど、さまざまな選抜方法が工夫されています。ただし、受験校に提出が求められる調査書は従来通り中学校の先生が記入するもので、学力に関する記述が中心です。
とはいえ、自らの学びを振り返り、考えを深め、自ら見通しを立てて学んでいく力は、今後ますます必要とされていくでしょう。たとえば高校入試で作文や小論文を求められた場合、ふだんから日々の生活や体験を基盤に考える習慣がついていないと、よいものを書くことはできません。

保護者のかたは、部活や行事、家庭生活など、中学時代の日々のすべてが学びにつながることを、ぜひ意識していただきたいと思います。また、考えたことや感じたこと、小さな気づきや発見も、忙しい生活の中でどんどん忘れていってしまうものですから、メモでも写真でもイラストでもかまわないので、お子さまに記録を残しておくことをすすめてはどうでしょうか。今はSNSなどに慣れていて、大人より「記録」が得意な子も多いかもしれません。

プロフィール

安田理

安田理

大手出版社で雑誌の編集長を務めた後、受験情報誌・教育書籍の企画・編集にあたる。教育情報プロジェクトを主宰、幅広く教育に関する調査・分析を行う。2002年、安田教育研究所を設立。講演・執筆・情報発信、セミナーの開催、コンサルティングなど幅広く活躍中。
安田教育研究所(http://www.yasudaken.com/)

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