むにゃむにゃ英語 第11回 [Oh,my Gooodness!]

親子で英語圏に住み、現地の学校に行きながら英語を学ぶ……。3歳の娘と母親である筆者は、夫のアメリカ転勤のために、そんな理想的な環境に飛び込むことになりました。果たして本当に「子どもは英語にすぐ慣れるから大丈夫」? アメリカに住みながら英語を学ぶメリットとデメリットとは? 筆者のアメリカ生活をとおして、日本に住むご家庭では、どんな取り組みができるのか考えていきます。
※「Oh,my Gooodness!」とは、「あらまあ!」という驚きを表すことば。

保育園に行き始めて半年ほどの間、娘はクラスでほとんど話さず黙っていたらしい。「ハーイ」とか「サンキュー」なども言わなかった。ヒアリングは少しずつできるようになっていて、保育園では先生の指示を理解していたらしいが、それと「話せる」こととは別問題なのだろう。

その反動なのか、日本人のお友達の家に遊びに行くと、娘は「いらっしゃいませ! これはうどんで、これがおはしですよ。はい、どうぞ」「お母さん、聞いて。○○ちゃんがね」などと、ものすごいハイテンションで日本語をまくしたてていた。私も含め、日本からアメリカに来たばかりの幼児を抱えた母親たちは「やっぱり日本語で遊ぶほうが楽しいわよねー。アメリカ人のお友達と一緒にいるときとは別人のようにいきいきしているわ」と、ため息をついたものだった。

そんなふうに英語に関して沈黙を続けていた娘だが、渡米して半年ほどたったころ変化が表れた。ひとりでおもちゃや絵本などを広げて遊んでいるときに、英語っぽいイントネーションの言葉を、意味不明にブツブツ言っているのだ。日本にいたとき、タレントのタモリさんがフランス語風のイントネーションで意味不明にしゃべっているパフォーマンスをテレビで見たことがあるが、あれによく似ている。娘は「英語をペラペラしゃべっている」つもりらしく、得意満面だ。「んーふん、うにゃにゃらにゃ」「ひーほー、ひほ?」などなど、聞いていると面白いのだが、ずっとこのままだったらどうしようと、だんだん心配になってきた。

しかし、こちらで友達になったある日本人ママさんが、「うちの子も、日本からこっちに来て幼稚園に行き始めてしばらくは英語を話さなかったんだけれど、半年ぐらいでむにゃむにゃ言い始めたのよね。そのあとだんだん英語を話し始めたわよ」と教えてくれた。1歳ぐらいの赤ちゃんが「アー」とか「ウー」とか、「マンマ」とか、日本語以前に片言を話すのと同じなのかもしれない。娘は1カ月ほどの「むにゃむにゃ」期間を経て、あるときから「Mammy(お母さん)」とか「Yeah」(なぜか「Yes」ではない)、「No」、「OK」、「Thank you」など、ちゃんとした片言の英語を話し始めた。

娘が「むにゃむにゃ」から「片言」へと進化していく様子は、我が子ながら興味深いものだった。実はそのころ、私自身が「きちんとした英語を話そう」と思うあまり、まったくしゃべれない状態にあったが、「まず最初に、間違えたとか間違えない以前の混沌とした段階をきっちり経験すべきなんだ。私だって、むにゃむにゃでいいんだ」と気が付いて、少し気軽にアメリカ人に話しかけられるようになっていった。恐らく「むにゃむにゃ」は誰にとっても大事なプロセスなのだろう。

プロフィール

山本美芽

音楽・ノンフィクションライター。中学校教諭、養護学校教諭からライターに転身。現在は音楽と教育をテーマに執筆活動を行う。著書に「りんごは赤じゃない 正しいプライドの育て方」「子どものセンスは夕焼けが作る」など。2006年3月より米カリフォルニア州在住。1児の母。

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